prologue
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現在
彼は一方通行、と名乗った。
学園都市レベル5の第一位。
超能力者の頂点。
学園都市一の優等生。
一見羨ましい称号だが、そういった特殊な立場には大抵孤独やしがらみがつきまとう。
彼はレベル5であるがゆえに悩み苦しんで生きてきたのではないだろうか。
男の子が泣くのを見るのは久しぶりのことだった。
もう夜も遅い。
消灯して横になる。
一方通行はベッドのすぐ隣にある炬燵で寝かせることにした。
私は彼を信用しすぎたかもしれない。
親に知られたら説教ものだとぼんやり思っていた。
夢うつつになって来た頃、彼が身体を起こしたのに目を覚ました。
不安げにこちらを窺っているように見えた。
普段の彼は知らないが、今彼は弱っている。心細い場所にいるのだ。
「どうしたの」
「あいつを置いてきちまった」
あいつとは、一年前に会った方の私のことだろう。
「来ていいよ」
不思議と抵抗はなく、細い身体を寝床へと招き入れた。
しばらく毛布の中で俯いていた彼は私を見て言った。
「なァ……俺を一人にっ…しな、いで…くれ」
一方通行の赤い瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
「ァ………くゥ、ふ」
嗚咽し、涙を腕で拭う彼を制す。
そして背中に腕をまわしさすってやる。
「我慢しなくていいよ」
「だいじょうぶ。私はあなたを一人にしない」
本当は、私自身が欲した言葉だった。
「だいじょうぶだよ」
名前は優しく言い聞かせてやるが、一方通行は内心信じられずにいた。
――そう言って一人にしたじゃねェかよ!
この晩、鍵の開かぬ部屋に帰るまで一方通行は確かにひとりだった。
絶望と喪失感でいっぱいだった。
でも、ただ一つの幻想を壊せずにいる。
それを言ったら、今すぐにでも一人になってしまいそうで。
結局、今の彼には名前の胸で子どものように泣くことしかできなかった。
「オマエは一年後、また俺を置いていくのか」
翌朝。
目を伏せ、苦しげな表情で一方通行は呟いた。
「一方通行……気になってたことがあるの。この部屋、あなたが持ってた鍵じゃ開かなかったって言ってたよね」
「あァ」
「たぶんそれ、私が春に部屋の鍵落としちゃって…見つからなかったから鍵変えてもらったせいだと思う」
「それは、オマエが俺の知る名前よりそそっかしいっつゥことかァ?」
調子を取り戻そうとしているのか、一方通行はニヤリと笑ってみせる。
初めて見た彼の笑みに少し安心した。
「そうじゃなくて!一方通行がいた世界とはちょっとずつズレがあるんじゃないかな」
「……並行世界ってェやつか」
「そうそれ。原因はわからないけど、あなたは今までと少し違う過去にいる。私も違う運命を辿る」
一方通行の目を見る。
決意を帯びた光が入っていた。
「きっと私は、一年後もその先も此処にいるよ」
「……今度は、死なせねェかンな」
「うん……」
白く輝く髪を撫でる。
この子を一人にしたくないと思った。
――ひとりにしないで。
そう願い続けていたのは私の方だ。
恐らく、私たちの根底にあるものは似ている。
彼は一方通行、と名乗った。
学園都市レベル5の第一位。
超能力者の頂点。
学園都市一の優等生。
一見羨ましい称号だが、そういった特殊な立場には大抵孤独やしがらみがつきまとう。
彼はレベル5であるがゆえに悩み苦しんで生きてきたのではないだろうか。
男の子が泣くのを見るのは久しぶりのことだった。
もう夜も遅い。
消灯して横になる。
一方通行はベッドのすぐ隣にある炬燵で寝かせることにした。
私は彼を信用しすぎたかもしれない。
親に知られたら説教ものだとぼんやり思っていた。
夢うつつになって来た頃、彼が身体を起こしたのに目を覚ました。
不安げにこちらを窺っているように見えた。
普段の彼は知らないが、今彼は弱っている。心細い場所にいるのだ。
「どうしたの」
「あいつを置いてきちまった」
あいつとは、一年前に会った方の私のことだろう。
「来ていいよ」
不思議と抵抗はなく、細い身体を寝床へと招き入れた。
しばらく毛布の中で俯いていた彼は私を見て言った。
「なァ……俺を一人にっ…しな、いで…くれ」
一方通行の赤い瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
「ァ………くゥ、ふ」
嗚咽し、涙を腕で拭う彼を制す。
そして背中に腕をまわしさすってやる。
「我慢しなくていいよ」
「だいじょうぶ。私はあなたを一人にしない」
本当は、私自身が欲した言葉だった。
「だいじょうぶだよ」
名前は優しく言い聞かせてやるが、一方通行は内心信じられずにいた。
――そう言って一人にしたじゃねェかよ!
この晩、鍵の開かぬ部屋に帰るまで一方通行は確かにひとりだった。
絶望と喪失感でいっぱいだった。
でも、ただ一つの幻想を壊せずにいる。
それを言ったら、今すぐにでも一人になってしまいそうで。
結局、今の彼には名前の胸で子どものように泣くことしかできなかった。
「オマエは一年後、また俺を置いていくのか」
翌朝。
目を伏せ、苦しげな表情で一方通行は呟いた。
「一方通行……気になってたことがあるの。この部屋、あなたが持ってた鍵じゃ開かなかったって言ってたよね」
「あァ」
「たぶんそれ、私が春に部屋の鍵落としちゃって…見つからなかったから鍵変えてもらったせいだと思う」
「それは、オマエが俺の知る名前よりそそっかしいっつゥことかァ?」
調子を取り戻そうとしているのか、一方通行はニヤリと笑ってみせる。
初めて見た彼の笑みに少し安心した。
「そうじゃなくて!一方通行がいた世界とはちょっとずつズレがあるんじゃないかな」
「……並行世界ってェやつか」
「そうそれ。原因はわからないけど、あなたは今までと少し違う過去にいる。私も違う運命を辿る」
一方通行の目を見る。
決意を帯びた光が入っていた。
「きっと私は、一年後もその先も此処にいるよ」
「……今度は、死なせねェかンな」
「うん……」
白く輝く髪を撫でる。
この子を一人にしたくないと思った。
――ひとりにしないで。
そう願い続けていたのは私の方だ。
恐らく、私たちの根底にあるものは似ている。
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