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2話 −12
一年前
――……熱ィ……頭、痛ェ。
苦しさで微睡みから目を覚ました。
気分が悪いのは投薬実験の後遺症だろうか。
確か体内のベクトルが把握し辛くなってた筈だ。
その間に菌かウイルスでも入ったのだろう。
もうあの研究所には手を貸さないことにする。
まずは病院に行くかと重い身体を起こす。
能力も所詮は頭脳労働だ。
演算も思うようにいかず、反射を保つのがやっとだった。
――とりあえず道出たらタクシー捕まえるか。
道に出たのはいいものの、寮の前は車通りの少ない場所だった。
そもそもこの学園都市、住人の8割が学生である。
需要のないタクシーの数は元から少ない。
大通りまで歩けるか思案しているうち、向かいのアパートから住人が出てきた。
こちらに気づいた様子で近づいてくる。
「だ、大丈夫ですか?」
おずおず、といった感じで話しかけてくる女。
歳は自分とあまり変わらないようだ。
「大丈夫に見えっかよ……」
「ちょっと失礼」
彼女は手のひらを額に当てようとした。
「あ……?」
しかし反射は効いているためその手は簡単に弾かれてしまう。
「え?触れない……?」
「俺の能力だ。ナニしようとしてるンですかァ?」
「熱を測ろうかと」
「……チッ」
――そォいや一般家庭ではそれが定番なンだったか。
「能力解いてもらえないですか?」
じっと目を見つめられる。
熱で熱くなった息を吐いた。
「いいけどよォ」
いつ以来かもわからない、反射を解いた。
彼女の手が額に当たる。
冷たい体温が気持ちいい。
「熱はあるけど……特に高くはないかな」
「わかンのかよ」
「だいたいなら。向かいが家なんで、よかったら来ませんか?」
一方通行が正気であったなら断っていた申し出だろう。
しかし彼は慣れない熱に弱っていた。
更にいえば、タクシーを探すのが面倒臭かったのだ。
「体温計あンならもォそれでいい……」
「食欲はあります?」
「……ねェ」
「ゼリー、プリン、りんごの中では……」
「ゼリー」
「フルーツですよね?コーヒーもありますが」
「コーヒー」
「了解です」
女の肩を借りるようにして向かいのアパート――203号室に辿りついた一方通行は、ベッドに寝かされていた。
この女は世話焼きなのだろうか。
――初対面の野郎なんて家に上げちまっていいのかねェ。
ピピピ……
1DKに電子音が鳴り響く。
脇に挟んでいた体温計を取り出した。
「何度でした?」
部屋の住人が聞いてくる。コーヒーゼリーとスポーツドリンク、風邪薬を持ってきたようだ。
「7度8分」
「薬飲んで寝れば大丈夫ですかね」
「……その手はなンだ」
彼女はこちらにスプーンを差し出していた。
「あーんってしようかなと……なんだ、自分で食べられますか」
「ンな甘ったるいことできるかよ。ガラじゃねェ」
「そうですか……」
女は少しだけ残念そうな顔をしてゼリーのカップを手渡した。
スプーンでコーヒーゼリーを掬って食べる。
3個パックの安物だが悪くない。
「名乗り損ねちゃったんですが私、名前といいます。あなたもお聞きしても?」
「……一方通行だ。」
「アクセ……?」
「一方通行。レベル5の第一位だ。もォ遅いケドよォ、俺と関わるとロクなことねェよ」
「……でも、関わって欲しくないわけじゃないでしょう?」
「ハァ?ナニ言ってやがる」
「寂しいんじゃないですか?」
「……」
「私はあなたと仲良くしたいです。自分と関わるとろくなことないなんて、私を気遣ってくれるあなたと」
名前は肩をすくめ、床を見ていた。
「……治るまで、ここにいる」
「……え?」
一方通行は飲み終わった薬の瓶をテーブルに置いた。
「もォ寝る」
To be continued...
一年前
――……熱ィ……頭、痛ェ。
苦しさで微睡みから目を覚ました。
気分が悪いのは投薬実験の後遺症だろうか。
確か体内のベクトルが把握し辛くなってた筈だ。
その間に菌かウイルスでも入ったのだろう。
もうあの研究所には手を貸さないことにする。
まずは病院に行くかと重い身体を起こす。
能力も所詮は頭脳労働だ。
演算も思うようにいかず、反射を保つのがやっとだった。
――とりあえず道出たらタクシー捕まえるか。
道に出たのはいいものの、寮の前は車通りの少ない場所だった。
そもそもこの学園都市、住人の8割が学生である。
需要のないタクシーの数は元から少ない。
大通りまで歩けるか思案しているうち、向かいのアパートから住人が出てきた。
こちらに気づいた様子で近づいてくる。
「だ、大丈夫ですか?」
おずおず、といった感じで話しかけてくる女。
歳は自分とあまり変わらないようだ。
「大丈夫に見えっかよ……」
「ちょっと失礼」
彼女は手のひらを額に当てようとした。
「あ……?」
しかし反射は効いているためその手は簡単に弾かれてしまう。
「え?触れない……?」
「俺の能力だ。ナニしようとしてるンですかァ?」
「熱を測ろうかと」
「……チッ」
――そォいや一般家庭ではそれが定番なンだったか。
「能力解いてもらえないですか?」
じっと目を見つめられる。
熱で熱くなった息を吐いた。
「いいけどよォ」
いつ以来かもわからない、反射を解いた。
彼女の手が額に当たる。
冷たい体温が気持ちいい。
「熱はあるけど……特に高くはないかな」
「わかンのかよ」
「だいたいなら。向かいが家なんで、よかったら来ませんか?」
一方通行が正気であったなら断っていた申し出だろう。
しかし彼は慣れない熱に弱っていた。
更にいえば、タクシーを探すのが面倒臭かったのだ。
「体温計あンならもォそれでいい……」
「食欲はあります?」
「……ねェ」
「ゼリー、プリン、りんごの中では……」
「ゼリー」
「フルーツですよね?コーヒーもありますが」
「コーヒー」
「了解です」
女の肩を借りるようにして向かいのアパート――203号室に辿りついた一方通行は、ベッドに寝かされていた。
この女は世話焼きなのだろうか。
――初対面の野郎なんて家に上げちまっていいのかねェ。
ピピピ……
1DKに電子音が鳴り響く。
脇に挟んでいた体温計を取り出した。
「何度でした?」
部屋の住人が聞いてくる。コーヒーゼリーとスポーツドリンク、風邪薬を持ってきたようだ。
「7度8分」
「薬飲んで寝れば大丈夫ですかね」
「……その手はなンだ」
彼女はこちらにスプーンを差し出していた。
「あーんってしようかなと……なんだ、自分で食べられますか」
「ンな甘ったるいことできるかよ。ガラじゃねェ」
「そうですか……」
女は少しだけ残念そうな顔をしてゼリーのカップを手渡した。
スプーンでコーヒーゼリーを掬って食べる。
3個パックの安物だが悪くない。
「名乗り損ねちゃったんですが私、名前といいます。あなたもお聞きしても?」
「……一方通行だ。」
「アクセ……?」
「一方通行。レベル5の第一位だ。もォ遅いケドよォ、俺と関わるとロクなことねェよ」
「……でも、関わって欲しくないわけじゃないでしょう?」
「ハァ?ナニ言ってやがる」
「寂しいんじゃないですか?」
「……」
「私はあなたと仲良くしたいです。自分と関わるとろくなことないなんて、私を気遣ってくれるあなたと」
名前は肩をすくめ、床を見ていた。
「……治るまで、ここにいる」
「……え?」
一方通行は飲み終わった薬の瓶をテーブルに置いた。
「もォ寝る」
To be continued...