side story
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――あちィ。
反射を切った状態で寝ていたらしい。
起きた時彼は寝汗でびっしょりだった。
普通、そういった時は無意識に熱を反射しているのだが……。
一方通行は舌打ちをして起き上がった。
汗が寝間着に貼りつき気持ち悪い。
早くシャワーを浴びたい。
彼は台所で水を一杯飲み脱衣所のドアを開けた。
「……っ!」
「え……?」
そこにいたのはバスタオルで頭を拭いていた名前だった。
髪からこぼれ落ちる水滴が白い身体を伝っていく。
名前の上気した頬がみるみるうちに赤くなっていった。
「わ……悪ィ!」
一方通行は慌ててドアを閉め息を吸った。
そういえば今日は休日だったか。
名前の姿が見当たらないので学校へ行っていると思っていた。
一方通行は仏頂面を保ちながらも、内心混乱していた。
見た。
名前の裸を見た。
彼の心臓は忙しない音を立てていた。
思えば女性の裸を直接見たのは初めてだった。
きれい、だと思った。
顔が熱い。
名前のベッドに腰を下ろし、彼女の枕に顔を埋めた。
先ほどの名前の姿を思い出す。
意外と胸があった。
自分と違って柔らかいわけだ。
抱きしめたい。
柔らかくて自分よりも一回り小さい身体を。
脱衣所のドアの開く音がした。
名前が出てきたようだ。
どのような顔をしたら良いかわからず、一方通行は困惑しながら身を起こした。
名前は服を着て、濡れた雫を滴らせている。
その姿はどこかションボリしているようだ。
「ごめ……鍵閉め忘れてちゃってて、見苦しいものを……!」
名前は小さくして謝っている。
なンで謝ってるンだコイツ?
一方通行は訝しげに思いつつも返事を返した。
「忘れるから気にすンじゃねェよ」
嘘をついた。
忘れたことにするだけだ。
「さっさと髪乾かしちまえ。俺はシャワー浴びてくる」
風呂から上がり、名前はドライヤーで髪を乾かしていた。
髪が伸び、乾かすのにも時間がかかるようになってきた。
そろそろ美容院へ行った方が良いかもしれない。
あらかた乾かし終えたところで、洗面所にヘアオイルを忘れていたことに気付く。
「……」
洗面所。そこはさきほど一方通行と出くわした場所。
ああ、何故今日に限って鍵を閉め忘れてしまったのだろう。
今更悔やんでも仕方ない、だが諦めがつかないほどに名前は後悔していた。
恥ずかしいし見られたくもなかった。
名前はチラリと脱衣所を見やる。
一方通行はまだ風呂場にいるだろう。
洗面台の棚からオイルをパッと取って出るだけだ。
名前は立ち上がり脱衣所へ向かった。
幸い、まだシャワーの水音はしている。
ドアを開け、目的のものを手に取る。
そこでガラッと、浴室のドアの開く音がした。
驚いて振り返ると一方通行がバスタオルを手に取ったところだった。
「……ッ!?」
「あ?……なンで固まってんだ?」
髪からは雫が滴り落ち、血色の良くなった顔が首を傾げた。
「なんで開けるの……?ここに私がきたの、お風呂場から見えたよね!?」
「別に俺は気にしねェし」
「私は気にするよ!」
浴室のドアはすりガラスになっている。
脱衣所に立てば当然人影として誰かがいるのがわかるだろう。
名前が言いたいのは自分が脱衣所にいる間は風呂から上がらずに待ってて欲しいということだ。
「……?顔赤ェけど大丈夫か?」
心配したのだろう。
目を丸くした一方通行は名前の額に触れた。
湯あがりの、物凄く意識してしまう状態の一方通行に近付かれたのだ。
驚いた名前は肩を震わせる。
そして――
「ひぇ、」
――平気、と慌てて後ずさろうとした名前は足をもつらせたのかバランスを崩した。
「あぶね――」
「……!!」
一方通行が手を伸ばし、名前を抱きとめた。
名前は目を見開いていると、耳元で低い声がした。
「大丈夫か」
名前の心臓が跳ねた。
落ちつけようと手を心臓のところにやる。
それに気付いた一方通行は口を開いた。
「……動悸?やっぱ具合悪ィンだろォが」
「ちがっ……!あなた自分の格好思い出してよ!」
「……あァ」
一方通行が視線を下ろす。
わかってはいたが、風呂上がりである自分は腰にタオルを巻いただけの格好だ。
つまり、半裸。
おそらく名前は異性の裸に照れているのだろう。
まさか貧相な自分の身体で照れられると思っていなかった。
密着していた名前を解放してやる。
「なるほどな、悪ィ」
「いや、謝らなくていいけど……助けてくれたのはありがと」
目のやり場に困るようにそういうと名前は脱衣所を出て行った。
さっきは裸を見られるし、まだ朝だというのに今日は散々だ。
「もう。今日はなんなの……」
一方、身体を拭き終わった一方通行は部屋に戻りづらい、と溜息を吐いた。
意識されるのは嬉しい。初心な反応も可愛い。
――だが、ちィと気まずいな……。
朝だというのに、今日一日彼女への接し方には苦労しそうだ。
その日だけ、一方通行と名前の間に距離が生まれた。
end
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