side story
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※月の物ネタ注意
彼女の顔色は悪く、額からは脂汗が滲んでいる。
息も絶え絶えといった表現がしっくりくるほど、名前は消耗していた。
「なァ、大丈夫か?」
「あんまり……」
返事をするのも辛そうな名前の様子に、一方通行は唇を噛んだ。
大事な人が苦しんでいる。
どうにかしてやりたい一心で再び彼は口を開いた。
「病院行こォぜ。連れてくから」
「いい……」
「……それ、ただ事じゃないだろ。痩せ我慢するンじゃねェ」
「そのうち薬効くから……」
「本当に病気じゃねェンだな?」
「ん」
「俺、名前に何かあったら……」
一方通行は不安げに呟いた。
目を閉じていた名前はその様子を見てしまい罪悪感を覚えた。
彼は腹痛の理由を知らない。
あまり言いたくはないが、彼の心配を軽減させるために口を開いた。
「女性特有の……症状だから、あまり追求しないでくれると……」
「え?……あ、あ″ァー」
一方通行は察しがついたらしい。
ばつが悪くなった彼は頭をがしがしと掻いた。
確かに名前は女性である。そういったこともあるだろう。
しかし彼女と住んで大分経つが、全然気づかなかった。
「オマエ、そンな重い方だったか?」
「うー、今回は……薬飲む、タイミングがね……遅かった」
「俺にできることねェのか?」
「……寒い」
確かに夏だというのに名前は毛布にくるまっている。
汗を掻いているのに彼女の手は冷たい。
出血によるものだろうか。
確かこういうのは血行をよくした方が良かった筈だ。
「腹ァ温めてるか?」
「ううん、この時期カイロ売ってなくて」
「薬はまだあるな?」
「……あと2回でなくなる」
「わかった、買ってくる。メシは心配すンな。食いたいものあるか?」
「むり……痛くなるから」
「……わかった」
一方通行は台所から空いたペットボトルを探した。
お湯を沸かし、ボトルの中に注ぐ。
それをタオルに包み、名前に手渡す。
「とりあえずこれで温めとけ。なンか探してくる」
そう言って一方通行は部屋を出た。
鎮痛剤。あれば湯たんぽ、カイロ。
買うものを脳内で反芻しながら薬局への道を急ぐ。
重力ベクトルを操作し跳躍しながら、自分はすっかり変わってしまったと今更ながらに思う。
誰かのために、ここまで躍起になるなど。
カイロは見つからなかった。
一方通行は代わりの湯たんぽにお湯を注いだ。
腹に当てるのならば、とソフトタイプのものを購入した。
「ほら。大丈夫か?」
「ありがと……」
「買ったもンはココに置いとくからな」
薬が効いてきたのか名前は少しだけ楽そうだった。
といっても脂汗はかいているし、痛みに喘ぐ声がなくなっただけなのだが。
風邪をひいた時の方がまだ楽そうだった気がする、と一方通行は思う。
「他に何かできることあるか?」
「あなたの手、あったかい?」
「まァ……夏だから」
手を差し出すと名前はそれを握った。
彼女の手は冷たいままだった。
安心して息を吐くように彼女は呟く。
「あったかい……」
「こンなンでイイのか?」
「うん。それで、心配して、もらえて……私しあわせ……」
辛そうにしながらも名前は柔らかく笑った。
「オマエが構わねェならだが、俺の力で血行良くしてやることもできると思う」
「……すごい」
「直接患部に触れる必要はあるけどな。どォすンだ?」
「じゃあお願い……しようかな。ちょっと恥ずかしいけど」
名前は億劫そうに寝間着を捲り上げた。
当然、白くて薄い腹が露出する。
名前の見慣れない姿に一方通行は目を逸らした。
仮にも思春期真っただ中である彼には少しばかり目に毒だった。
遠慮がちに柔らかい腹に触れ、ベクトル操作によって血行を促す。
しばらく待ってから一方通行は声をかけた。
「……どォだ?」
「……軽くなったみたい、ありがとう」
「最初からこォしてればよかったなァ」
腹から手を離すと名前は捲り上げていた衣服を整えた。
片方の手は繋いだままだ。
「今日は寝とけ」
「うん、おやすみ」
「オヤスミ」
名前は昨晩から眠れなかったようで、痛みが取れるとすぐに眠った。
一方通行は名前の髪に指を通してみる。
それは引っかかることなく毛先まで到達した。
今まで名前は、薬によって痛みを押さえていたようだが、それで全く痛くないとは一方通行は思えなかった。
名前には強がる癖があるからだ。
「痛いなら痛いって言え。……言いにくいンだろォけどよ」
end
彼女の顔色は悪く、額からは脂汗が滲んでいる。
息も絶え絶えといった表現がしっくりくるほど、名前は消耗していた。
「なァ、大丈夫か?」
「あんまり……」
返事をするのも辛そうな名前の様子に、一方通行は唇を噛んだ。
大事な人が苦しんでいる。
どうにかしてやりたい一心で再び彼は口を開いた。
「病院行こォぜ。連れてくから」
「いい……」
「……それ、ただ事じゃないだろ。痩せ我慢するンじゃねェ」
「そのうち薬効くから……」
「本当に病気じゃねェンだな?」
「ん」
「俺、名前に何かあったら……」
一方通行は不安げに呟いた。
目を閉じていた名前はその様子を見てしまい罪悪感を覚えた。
彼は腹痛の理由を知らない。
あまり言いたくはないが、彼の心配を軽減させるために口を開いた。
「女性特有の……症状だから、あまり追求しないでくれると……」
「え?……あ、あ″ァー」
一方通行は察しがついたらしい。
ばつが悪くなった彼は頭をがしがしと掻いた。
確かに名前は女性である。そういったこともあるだろう。
しかし彼女と住んで大分経つが、全然気づかなかった。
「オマエ、そンな重い方だったか?」
「うー、今回は……薬飲む、タイミングがね……遅かった」
「俺にできることねェのか?」
「……寒い」
確かに夏だというのに名前は毛布にくるまっている。
汗を掻いているのに彼女の手は冷たい。
出血によるものだろうか。
確かこういうのは血行をよくした方が良かった筈だ。
「腹ァ温めてるか?」
「ううん、この時期カイロ売ってなくて」
「薬はまだあるな?」
「……あと2回でなくなる」
「わかった、買ってくる。メシは心配すンな。食いたいものあるか?」
「むり……痛くなるから」
「……わかった」
一方通行は台所から空いたペットボトルを探した。
お湯を沸かし、ボトルの中に注ぐ。
それをタオルに包み、名前に手渡す。
「とりあえずこれで温めとけ。なンか探してくる」
そう言って一方通行は部屋を出た。
鎮痛剤。あれば湯たんぽ、カイロ。
買うものを脳内で反芻しながら薬局への道を急ぐ。
重力ベクトルを操作し跳躍しながら、自分はすっかり変わってしまったと今更ながらに思う。
誰かのために、ここまで躍起になるなど。
カイロは見つからなかった。
一方通行は代わりの湯たんぽにお湯を注いだ。
腹に当てるのならば、とソフトタイプのものを購入した。
「ほら。大丈夫か?」
「ありがと……」
「買ったもンはココに置いとくからな」
薬が効いてきたのか名前は少しだけ楽そうだった。
といっても脂汗はかいているし、痛みに喘ぐ声がなくなっただけなのだが。
風邪をひいた時の方がまだ楽そうだった気がする、と一方通行は思う。
「他に何かできることあるか?」
「あなたの手、あったかい?」
「まァ……夏だから」
手を差し出すと名前はそれを握った。
彼女の手は冷たいままだった。
安心して息を吐くように彼女は呟く。
「あったかい……」
「こンなンでイイのか?」
「うん。それで、心配して、もらえて……私しあわせ……」
辛そうにしながらも名前は柔らかく笑った。
「オマエが構わねェならだが、俺の力で血行良くしてやることもできると思う」
「……すごい」
「直接患部に触れる必要はあるけどな。どォすンだ?」
「じゃあお願い……しようかな。ちょっと恥ずかしいけど」
名前は億劫そうに寝間着を捲り上げた。
当然、白くて薄い腹が露出する。
名前の見慣れない姿に一方通行は目を逸らした。
仮にも思春期真っただ中である彼には少しばかり目に毒だった。
遠慮がちに柔らかい腹に触れ、ベクトル操作によって血行を促す。
しばらく待ってから一方通行は声をかけた。
「……どォだ?」
「……軽くなったみたい、ありがとう」
「最初からこォしてればよかったなァ」
腹から手を離すと名前は捲り上げていた衣服を整えた。
片方の手は繋いだままだ。
「今日は寝とけ」
「うん、おやすみ」
「オヤスミ」
名前は昨晩から眠れなかったようで、痛みが取れるとすぐに眠った。
一方通行は名前の髪に指を通してみる。
それは引っかかることなく毛先まで到達した。
今まで名前は、薬によって痛みを押さえていたようだが、それで全く痛くないとは一方通行は思えなかった。
名前には強がる癖があるからだ。
「痛いなら痛いって言え。……言いにくいンだろォけどよ」
end