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詰め合わせ

「ただいま」

玄関は明るく、ここから見える奥の部屋も明かりは点いているようだ。それなのに、家の中はしんと静まり返って、返ってくるはずの声が聞こえない。

ここ最近、苦手なはずの日中の仕事が増えた上に纏まった休みを碌に取れず、無理をしているのは明らかだった。まあ、彼もアイドルであるから、仕事中に倒れることがないようにある程度の休息は取っていたようだけれども。

人気故の忙しさの中、漸く今日の午後からは休みが取れたらしかった。だから、きっと彼のことだから帰ったら出迎えてくれるだろうと思っていたのだが。

「零?」

控え目に音量を抑えた声で呼びながら、リビングのドアを開けてみる。

やっぱり。

ソファーに収まりきっていないその長身を投げ出し、電気を点けたまま寝入ってしまっていた。眠たかったのなら先に寝ていてよかったのに、と思いながら彼の顔を見詰める。男性に対する感想としては如何なものかとは思うが、やはり無防備なその寝顔はやや幼げで可愛く思えた。

こんなところで寝て風邪を引かれては困るから起こそうと思ったが、あまりに心地良さそうな寝顔を見ていると、自分が寝る前くらいに起こせばいいか、という気持ちになり、それまでは寝かせておくことにした。

ソファーには冷房の風が当たっている。あまり放っておくと本当に風邪を引きかねない。とりあえず部屋からブランケットを持ってきてかけておく。

「……お疲れ様」
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