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6話後妄想

 約束の時間から随分と経ったから、もう流石に居ないと思っていた。しかし彼女は、待ち合わせに指定したベンチにしっかりと座っていた。
「エランさん!」
 僕に気付いて名前を呼んだかと思うと、僕の顔を見て不思議な顔になった。
「遅れてごめんね」
 謝罪に対する批難のかわりに僕が何者なのかを問われた。
 そうか、僕はもう、エラン・ケレスじゃないんだった。

 エラン・ケレス、かつての僕が憎い。彼女の言う"エランさん"は確かに僕なのに……もう僕ではない。でも、生きてるだけ……ましなのかもしれない。また、君に会えたから。
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