うちよそ
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この子が、素直に、真っ直ぐに生きられますように。
そう願って、両親に付けられた名前が、「直」である。
しかし、そう名付けられた息子は、全く素直じゃなく、捻曲がった人生を歩んでいる。
本当は単純な癖に、何もかもを煙に巻こうとするせいで、複雑怪奇な精神性になってしまった貝瀬直。
そんな彼が、近頃気になることがある。
太刀川に会いに隊室に行くと、たまに彼女とも顔を合わせることになった。
小林莉子。貝瀬は、彼女の名前から、「利己」を連想するが、端から見ている限りでは、「利他的」である。博愛主義の化物。
利己的なオレとは、全然違う化物。
君の人生の行く先には、どんな景色が待ってるんだろうね?
オレの行く先は、決まってる。地獄だ。
ひとりの人間に執着し、祟り殺そうとした罰。その祟りに、恋と名付けた罪。
オレは、ゆるされないことをしている。
「莉子さん」
太刀川が出て言ったタイミングで、話しかけた。
「なんですか?」
純粋無垢そうな瞳が、貝瀬を見つめる。
「オレって、ろくでなしだからさ、眩しい人は消したくなるんだ」
「眩しい人? 諏訪さんのこと?」
「そうそう」
月を消したい。月明かりのように優しいおまえを、消し去りたい。
「なんでこうなったかなぁ?」
「貝瀬さんは、自分で思ってるほど酷い人じゃないですよ」
そんなワケないじゃん。
言葉を呑み込み、煙を吐く。
「いーや、オレが一番、オレのこと分かってんだから」
「……貝瀬さんは、結局は、諏訪さんを消せないと思います」
「…………」
「だって、あなたは、人を傷付けたくないから」
「……分かってるようなこと言うね」
段々、いつもの軽薄な雰囲気が失せていく。
人を傷付けたくないのは、まあ、そうだろう。加害性を押さえ付けられなくて、何が人間だ?
「でも、オレの本質は、“犯人”だから」
「あはは」
「なに笑ってんの?」
「すいません。諏訪さんのこと、大好きなんだなぁって。推理小説になぞらえてるんでしょ?」
「うん」
「やっぱり、貝瀬さんは、人を傷付けられないですよ。傷付けられるとしたら、自分自身だけじゃないですか?」
そうなのだろうか? 貝瀬には、分からない。
この世界で、上手に生きられない男。自罰的で、愛を持てないでいる男。
好きな奴を祟ってるオレが、いつか本物の化物になる日が来るんじゃないか?
どうか、最期は、愛しいその手で。
身勝手な望み。やはり、自分は、ろくでもない。
「莉子さん」
「はい」
「君の名前は、どういう意味なの?」
オレは、両親の願いに背いてしまったけど。
「よかったら、聞かせてくれよ」
教えてほしい。君に与えられた祝福のことを。
そう願って、両親に付けられた名前が、「直」である。
しかし、そう名付けられた息子は、全く素直じゃなく、捻曲がった人生を歩んでいる。
本当は単純な癖に、何もかもを煙に巻こうとするせいで、複雑怪奇な精神性になってしまった貝瀬直。
そんな彼が、近頃気になることがある。
太刀川に会いに隊室に行くと、たまに彼女とも顔を合わせることになった。
小林莉子。貝瀬は、彼女の名前から、「利己」を連想するが、端から見ている限りでは、「利他的」である。博愛主義の化物。
利己的なオレとは、全然違う化物。
君の人生の行く先には、どんな景色が待ってるんだろうね?
オレの行く先は、決まってる。地獄だ。
ひとりの人間に執着し、祟り殺そうとした罰。その祟りに、恋と名付けた罪。
オレは、ゆるされないことをしている。
「莉子さん」
太刀川が出て言ったタイミングで、話しかけた。
「なんですか?」
純粋無垢そうな瞳が、貝瀬を見つめる。
「オレって、ろくでなしだからさ、眩しい人は消したくなるんだ」
「眩しい人? 諏訪さんのこと?」
「そうそう」
月を消したい。月明かりのように優しいおまえを、消し去りたい。
「なんでこうなったかなぁ?」
「貝瀬さんは、自分で思ってるほど酷い人じゃないですよ」
そんなワケないじゃん。
言葉を呑み込み、煙を吐く。
「いーや、オレが一番、オレのこと分かってんだから」
「……貝瀬さんは、結局は、諏訪さんを消せないと思います」
「…………」
「だって、あなたは、人を傷付けたくないから」
「……分かってるようなこと言うね」
段々、いつもの軽薄な雰囲気が失せていく。
人を傷付けたくないのは、まあ、そうだろう。加害性を押さえ付けられなくて、何が人間だ?
「でも、オレの本質は、“犯人”だから」
「あはは」
「なに笑ってんの?」
「すいません。諏訪さんのこと、大好きなんだなぁって。推理小説になぞらえてるんでしょ?」
「うん」
「やっぱり、貝瀬さんは、人を傷付けられないですよ。傷付けられるとしたら、自分自身だけじゃないですか?」
そうなのだろうか? 貝瀬には、分からない。
この世界で、上手に生きられない男。自罰的で、愛を持てないでいる男。
好きな奴を祟ってるオレが、いつか本物の化物になる日が来るんじゃないか?
どうか、最期は、愛しいその手で。
身勝手な望み。やはり、自分は、ろくでもない。
「莉子さん」
「はい」
「君の名前は、どういう意味なの?」
オレは、両親の願いに背いてしまったけど。
「よかったら、聞かせてくれよ」
教えてほしい。君に与えられた祝福のことを。