ワートリ
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家には、広い庭がある。そこには、色とりどりの花が綺麗に並んでいて、美しい。太陽の日を受けて、花たちは、生き生きと咲き誇る。
そんな庭を作ったのは、ガーデニングが趣味の母と兄だ。ふたりは、休日になると、一緒に花たちの世話をする。
庭には、花以外にもいる。飼い犬である柴犬のポチ太郎だ。犬好きの父が仔犬の頃に引き取ってきた。ポチ太郎は、庭を掘り返すことはあるが、花壇を荒らしたりはしない、賢い犬である。
私の、なんてことのない日常は、誰かの手によって守られているのだろう。例えばそれは、私の友達の仁礼光だったりするのだ。
家の庭の椅子に座り、ふたりで漫画を読んだり、お喋りしたりしながら、私は頭の片隅で考える。
「光ちゃん」
「ん~? どうした、ナマエ~?」
光ちゃんは、のんびりした口調で返事をした。
「ボーダーって大変そうだよね。疲れてない?」
「疲れる! あいつら、アタシがいなきゃなんにも出来ねーからな!」
あいつら、とは隊のメンバーのことだろう。詳しくは知らないが、いつも光ちゃんが面倒を見ているらしい。
「そうだよね。学校もあるのに、ボーダーの任務とかもあるんだもの、疲れちゃうよね」
「だから、ナマエは、ヒカリさんの勉強を助けてくれな!」
「うん、もちろん」
彼女の助けになれるのは、嬉しい。ほんの些細なことだけれど。
「ナマエ、次の巻取ってくれ~」
「はーい」
私は、サイドテーブルから単行本を取り、渡す。
「さんきゅー」
「これ面白いよねぇ」
「そうだな。毎話、引きがしっかりしてて好きだな、アタシ」
「私も」
「お? ポチ太郎が昼寝から起きたみたいだぞ」
「あ、ほんとだ。ポチ太郎、おいでおいでー」
「わん! わふっ」
ポチ太郎は、尻尾を振りながら、私たちの足元へとやって来た。
「相変わらず、可愛いもふもふだなー!」
「もふもふしてもいいよー」
「やった! おーい、ヒカリさんが撫でてやるぞ、ポチ太郎」
光ちゃんは、漫画を椅子に置き、ポチ太郎を撫で回す。
「よしよし」
「わんっ!」
「ふふ」
こういう時間が、ずっと続けばいいのになぁ。
◆◆◆
光ちゃん。私、実は秘密があるの。それはね、あなたのことが好きだってこと。
ミョウジナマエは、仁礼光に恋をしている。
この想いを伝えたら、どうなるのだろう? 良くも悪くも、関係性は変わってしまう?
私は、変わることが恐ろしいの。
あなたは、優しくて強いから、きっと私を拒絶しないでしょう。ずっと友達でいてくれるのでしょう。
でも、告白する前と後では、決定的に何かが変わってしまうと思うの。私は、それに耐えられない。
「ナマエ! おはよう!」
「おはよう、光ちゃん」
今日も、嘘をつくの。私は、あなたに対して友情しか抱いてませんって。
教室でお喋りしたり、昼休みを一緒に過ごしたりして、私は、いつも通りにする。
そして、放課後。光ちゃんは、当然のように私と並んで下校した。
「ナマエって、好きな奴とかいるのか?」
「うーん。どうかな。恋愛って少し怖いかも」
私は、煮え切らない返事をする。
「ナマエは、美人だからなー。寄って来た虫は、ナマエが怖くならないように、ヒカリさんが追い払ってやるよ!」
「……うん。ありがとう」
そういうあなたは、凄く頼もしくて、可愛くて、最強の存在に見える。眩しくて、眩しくて、目を逸らしてしまいそう。
「光ちゃんは、好きな人いるの?」
恐る恐る訊いてみる。
「いないな。ナマエと遊んでるのが一番楽しい!」
「そっか。私も、光ちゃんと遊ぶのが好きだよ」
「両想いだな!」
「うん……」
違う。全然違う。私は、あくまで友達で、きっと恋愛対象に入っていない。
でも、「一番」だって言ってくれた。その言葉を、大切に抱き締める。これがあれば、私は大丈夫。
「ナマエ、どうかしたのか?」
「ううん。なんでもない。あ、そうだ。昨日、ポチ太郎が面白い寝相をしてて。写真見る?」
「見る見る!」
スマートフォンを取り出し、画像フォルダを開く。
「ほら」
「わははっ! まん丸だな!」
あなたの笑顔が、私は大好きよ。
ずっと、凪の中にいたかった。ざわざわする風も、激しい雨もいらない。
ただ静かに、日の光の下に佇んでいたかった。晴れ空へと伸びる、青葉をつけた枝のように。
それ以上は望んでいないから。どうか、このままでいられますように。
ささやかなようで、慎ましいつもりで、その実、とても欲深い願いなのかもしれない。日常が壊されたことのある、この都市で願うには。
隣にいる彼女を、横目で見る。
私、死ぬまで、あなたの友達でいいの。
そんな庭を作ったのは、ガーデニングが趣味の母と兄だ。ふたりは、休日になると、一緒に花たちの世話をする。
庭には、花以外にもいる。飼い犬である柴犬のポチ太郎だ。犬好きの父が仔犬の頃に引き取ってきた。ポチ太郎は、庭を掘り返すことはあるが、花壇を荒らしたりはしない、賢い犬である。
私の、なんてことのない日常は、誰かの手によって守られているのだろう。例えばそれは、私の友達の仁礼光だったりするのだ。
家の庭の椅子に座り、ふたりで漫画を読んだり、お喋りしたりしながら、私は頭の片隅で考える。
「光ちゃん」
「ん~? どうした、ナマエ~?」
光ちゃんは、のんびりした口調で返事をした。
「ボーダーって大変そうだよね。疲れてない?」
「疲れる! あいつら、アタシがいなきゃなんにも出来ねーからな!」
あいつら、とは隊のメンバーのことだろう。詳しくは知らないが、いつも光ちゃんが面倒を見ているらしい。
「そうだよね。学校もあるのに、ボーダーの任務とかもあるんだもの、疲れちゃうよね」
「だから、ナマエは、ヒカリさんの勉強を助けてくれな!」
「うん、もちろん」
彼女の助けになれるのは、嬉しい。ほんの些細なことだけれど。
「ナマエ、次の巻取ってくれ~」
「はーい」
私は、サイドテーブルから単行本を取り、渡す。
「さんきゅー」
「これ面白いよねぇ」
「そうだな。毎話、引きがしっかりしてて好きだな、アタシ」
「私も」
「お? ポチ太郎が昼寝から起きたみたいだぞ」
「あ、ほんとだ。ポチ太郎、おいでおいでー」
「わん! わふっ」
ポチ太郎は、尻尾を振りながら、私たちの足元へとやって来た。
「相変わらず、可愛いもふもふだなー!」
「もふもふしてもいいよー」
「やった! おーい、ヒカリさんが撫でてやるぞ、ポチ太郎」
光ちゃんは、漫画を椅子に置き、ポチ太郎を撫で回す。
「よしよし」
「わんっ!」
「ふふ」
こういう時間が、ずっと続けばいいのになぁ。
◆◆◆
光ちゃん。私、実は秘密があるの。それはね、あなたのことが好きだってこと。
ミョウジナマエは、仁礼光に恋をしている。
この想いを伝えたら、どうなるのだろう? 良くも悪くも、関係性は変わってしまう?
私は、変わることが恐ろしいの。
あなたは、優しくて強いから、きっと私を拒絶しないでしょう。ずっと友達でいてくれるのでしょう。
でも、告白する前と後では、決定的に何かが変わってしまうと思うの。私は、それに耐えられない。
「ナマエ! おはよう!」
「おはよう、光ちゃん」
今日も、嘘をつくの。私は、あなたに対して友情しか抱いてませんって。
教室でお喋りしたり、昼休みを一緒に過ごしたりして、私は、いつも通りにする。
そして、放課後。光ちゃんは、当然のように私と並んで下校した。
「ナマエって、好きな奴とかいるのか?」
「うーん。どうかな。恋愛って少し怖いかも」
私は、煮え切らない返事をする。
「ナマエは、美人だからなー。寄って来た虫は、ナマエが怖くならないように、ヒカリさんが追い払ってやるよ!」
「……うん。ありがとう」
そういうあなたは、凄く頼もしくて、可愛くて、最強の存在に見える。眩しくて、眩しくて、目を逸らしてしまいそう。
「光ちゃんは、好きな人いるの?」
恐る恐る訊いてみる。
「いないな。ナマエと遊んでるのが一番楽しい!」
「そっか。私も、光ちゃんと遊ぶのが好きだよ」
「両想いだな!」
「うん……」
違う。全然違う。私は、あくまで友達で、きっと恋愛対象に入っていない。
でも、「一番」だって言ってくれた。その言葉を、大切に抱き締める。これがあれば、私は大丈夫。
「ナマエ、どうかしたのか?」
「ううん。なんでもない。あ、そうだ。昨日、ポチ太郎が面白い寝相をしてて。写真見る?」
「見る見る!」
スマートフォンを取り出し、画像フォルダを開く。
「ほら」
「わははっ! まん丸だな!」
あなたの笑顔が、私は大好きよ。
ずっと、凪の中にいたかった。ざわざわする風も、激しい雨もいらない。
ただ静かに、日の光の下に佇んでいたかった。晴れ空へと伸びる、青葉をつけた枝のように。
それ以上は望んでいないから。どうか、このままでいられますように。
ささやかなようで、慎ましいつもりで、その実、とても欲深い願いなのかもしれない。日常が壊されたことのある、この都市で願うには。
隣にいる彼女を、横目で見る。
私、死ぬまで、あなたの友達でいいの。