うちよそ
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なんというか、魔が差したのだ。
弓場拓磨は、澪川四季に恋愛相談をしてしまったのである。
四季は、「弓場ちゃん、意外と重たくて粘着質だね~」と、けらけら笑った。
彼の小林莉子への想いは、とてつもない重量で、粘性があると思う。
「好きなら、抱き締めて、チューすりゃいいじゃん!」
「出来るかァ!」
「真っ直ぐ進むのが一番早いって、豊さんが言ってた」
「澪川ァ。そういうナンパな意味じゃねェだろうが」
四季は、きょとんとした。
「ナンパ? ただのコミュニケーションだろ?」
「澪川に相談した俺がバカだった……」
「でもさぁ、そんな風に陰から想ってたって、なんにもならないよ?」
「…………」
返す言葉がない。拳を強く握った。
「じゃ、俺が莉子ちゃんもらっちゃうかんね! 吠え面かけよ」
「あァ?」
「うっわ! 顔怖っ! でも、無駄でーす。自由恋愛だもん」
それは、その通り。彼女が誰を選ぼうが、口を挟む権利はない。
四季は、これ見よがしにスマートフォンを取り出し、莉子に連絡した。
「莉子ちゃーん! 俺とデートしよ! カラオケ? ふくろうカフェ? どこでもいいよ!」
『カラオケかなぁ』
スピーカーにしたスマホから、愛しい声がする。
断らないのか。と、身勝手なことを考える。
「オーケー、オーケー。じゃあ、四季くんの振り付け完璧アイドルソング披露してあげる~!」
『それは普通に見たい。四季くんって器用だよね』
「まーね! それじゃ、後で日程合わせよ!」
『うん。分かった』
「じゃ、またね、莉子ちゃん」
『またね』
通話を終えて、四季はニヤリと笑った。
「ほら、分かった? 塔を登らなきゃ、お姫様は何もくれないよ?」
腹が立つ。おまえは何も持ってないからだろうと、喉元に言葉がせり上がってくる。
そんな、あからさまに怒っている顔を見せても、四季はずっと軽薄な笑みのままだ。
「いくら想ってても、伝えなきゃゼロなんだからさ」
「澪川ァ、そんな単純な話じゃねェんだよ…………」
「複雑にしてんのは、弓場ちゃんじゃないの?」
いちいち癇に障る台詞を刺してくる四季。
「別に俺じゃなくても、誰でも、莉子ちゃんに“好き”って言えるんだぜ?」
「うるせェ」
「あは。弓場ちゃん、キレてやんの」
四季は、余裕のない様を見て笑っている。
「ま、拗らせんのも大概にしときなよ? 奪われても文句言えないんだから」
ひらひらと手を振り、四季は去って行く。
弓場拓磨は、“幼馴染み”という間柄の脆さを思い知らされた。薄氷の上に立っているのだと。
弓場拓磨は、澪川四季に恋愛相談をしてしまったのである。
四季は、「弓場ちゃん、意外と重たくて粘着質だね~」と、けらけら笑った。
彼の小林莉子への想いは、とてつもない重量で、粘性があると思う。
「好きなら、抱き締めて、チューすりゃいいじゃん!」
「出来るかァ!」
「真っ直ぐ進むのが一番早いって、豊さんが言ってた」
「澪川ァ。そういうナンパな意味じゃねェだろうが」
四季は、きょとんとした。
「ナンパ? ただのコミュニケーションだろ?」
「澪川に相談した俺がバカだった……」
「でもさぁ、そんな風に陰から想ってたって、なんにもならないよ?」
「…………」
返す言葉がない。拳を強く握った。
「じゃ、俺が莉子ちゃんもらっちゃうかんね! 吠え面かけよ」
「あァ?」
「うっわ! 顔怖っ! でも、無駄でーす。自由恋愛だもん」
それは、その通り。彼女が誰を選ぼうが、口を挟む権利はない。
四季は、これ見よがしにスマートフォンを取り出し、莉子に連絡した。
「莉子ちゃーん! 俺とデートしよ! カラオケ? ふくろうカフェ? どこでもいいよ!」
『カラオケかなぁ』
スピーカーにしたスマホから、愛しい声がする。
断らないのか。と、身勝手なことを考える。
「オーケー、オーケー。じゃあ、四季くんの振り付け完璧アイドルソング披露してあげる~!」
『それは普通に見たい。四季くんって器用だよね』
「まーね! それじゃ、後で日程合わせよ!」
『うん。分かった』
「じゃ、またね、莉子ちゃん」
『またね』
通話を終えて、四季はニヤリと笑った。
「ほら、分かった? 塔を登らなきゃ、お姫様は何もくれないよ?」
腹が立つ。おまえは何も持ってないからだろうと、喉元に言葉がせり上がってくる。
そんな、あからさまに怒っている顔を見せても、四季はずっと軽薄な笑みのままだ。
「いくら想ってても、伝えなきゃゼロなんだからさ」
「澪川ァ、そんな単純な話じゃねェんだよ…………」
「複雑にしてんのは、弓場ちゃんじゃないの?」
いちいち癇に障る台詞を刺してくる四季。
「別に俺じゃなくても、誰でも、莉子ちゃんに“好き”って言えるんだぜ?」
「うるせェ」
「あは。弓場ちゃん、キレてやんの」
四季は、余裕のない様を見て笑っている。
「ま、拗らせんのも大概にしときなよ? 奪われても文句言えないんだから」
ひらひらと手を振り、四季は去って行く。
弓場拓磨は、“幼馴染み”という間柄の脆さを思い知らされた。薄氷の上に立っているのだと。