秋も深まってきた、今日この頃。ひとりの塾帰りの子供は、川で水切りをしていた。
　何度も平たい石を手に取り、石を水面で跳ねさせる。
　帰りたくない。家族はまだ、誰もいないのだから。
　寂しい気持ちで、水切りを続ける。

「えいっ」

　思い切り投げた石は何度か跳ねて、頭を出した野生のポケモン、ウパーの頭にぶつかった。

「あっ！？」

ウパーは、怒った様子で、こちらに向かって来る。
　ポケモンバトルの開始だ。
　モンスターボールを投げて、相棒のスピアーを繰り出す。

「行け！　スピアー！　みねうち！」
「っぶーぅん！」

　そして、みねうちを食らったウパーに、モンスターボールを投げた。

「えーいっ！」

　ウパーの入ったモンスターボールが地面に落ち、点滅する。
　緊張の一瞬。
　少しして、ボールの明滅が止まった。
　見事、野生のウパーをゲットしたのである。

「やった！」

　少し、憂鬱な気分が軽減され、得意気に笑う。
　ウパーは、地上に出た際には、毒の粘膜で体を覆っているので、スピアーのケアを欠かさず行う。

「よし」
「ぶぅーん」

　毒を拭い、スピアーを撫でると、嬉しそうな様子を見せた。
　スピアーをモンスターボールへと戻し、捕まえたばかりのウパーをボールから出す。

「これから、よろしく」
「ぴぁっ」

　ウパーは冷たい川に入り、楽しそうに泳いでいる。
　その可愛らしい様子を見ると、心が和んだ。

「帰ろうかな」

　ウパーをボールへと戻し、鞄に入れて、帰路を行く。
　その足取りは、軽い。ポケモンについて学んだことが活かされたことと、新しい仲間が出来たことへの喜びが、そうさせる。
　両親が帰って来たら、報告しよう。きっと、褒めてくれるはずだ。
　そろそろ、旅立つことも許してくれるかもしれない。
　心が、ウキウキした。旅立ったら、どこへ行こう。一人前のポケモントレーナーになれたら、何をしよう？
　夢は、大きく、ジムリーダーだろうか？　それとも、ポケモンレンジャーだろうか？
　夢見る子供は、スキップした。