一度、死んだことがある。知らない爺さんに、銃で体を蜂の巣にされて。
　俺は、カモッラであるマルティージョ・ファミリーの構成員である。
　同じく、マルティージョ・ファミリーのマイザー・アヴァーロによると、俺は、いや、俺たちは不老不死になったらしい。
　本当かよ。
　だが、それを信じるしかない。俺の一張羅には無数の穴が空いている。
　あーあー。賠償してくれよ。
　あの見知らぬ爺さんは、フィーロがやったらしいから、どうしようもない。
　マイザーは、何やら落ち込んでいるが、不老不死になったのに、そう悲観的になることもないんじゃないかと思う。
　仲間たちは、笑い合い、マイザーを励ます。

「俺ァ、長生きすんのも悪くねぇと思うぜ」

　俺は、マイザーの肩に手を置き、そう告げた。
　マイザーは、少し困ったように笑う。

「お前も俺も不老不死なんだろ？　長い付き合いになりそうだな！」

　わざと、明るく振る舞う俺。
　マイザー、俺はアンタに笑っていてほしいんだ。
　俺は、マイザー・アヴァーロを愛している。
　ファミリーとして、良き友人として、ではない。
　恋愛対象として、彼が好きだ。
　一度死んだからだろうか？　俺はなんだか、素直に生きようという気持ちになっている。

「…………愛してるぜ、マイザー」

　俺は、彼の耳元で囁いた。

「…………ッ！？」

　マイザーは一瞬驚いた表情をしたが、すぐにいつもの柔和な笑みに戻る。

「…………ありがとうございます」

　小さくお礼を言われた。
　俺の愛の言葉を、彼がどう受け取ったのかは分からないが、悪感情は抱いていないのだろうと思う。だといいな。
　そうして、しばらくの時が流れて。
　マイザーは、世界各地に散らばった他の不死者たちを探す旅に出るという。
　出納係は、フィーロに任せるらしい。
　俺は、出来ることなら、その旅に同行したい。だが、それを言っても断られる気がした。
　しかし、遠く離れた地でもファミリーとしての絆を感じてくれると信じている。