北極圏の南に位置するデンマークに、短い夏がやって来た。

「お久し振りです、デンマークさん」
「よう！　久し振りだな！」

　金髪碧眼の青年、デンマークは、元気に夏に挨拶をする。
　デンマークの夏、6月～8月は、白夜こそないが日照時間が長くなり、過ごしやすい。
　ここ、首都のコペンハーゲンも徐々に夏めいてきている。

「風邪を引いたりしていませんか？」
「そんなにしんぺーしなくても、だいじだ！」

　そう言うデンマークは、本当に元気そうで、夏は胸を撫で下ろす。

「これ、お土産のひまわりです」
「大変だっけな～！」

　小さなひまわりの花束を受け取り、デンマークは笑顔を浮かべる。
　その、とても嬉しそうな表情を見た夏は、彼から元気をもらった気がした。
　そして、彼の家に招かれる夏。
　ダイニングへ通され、椅子に座らされる。
　上機嫌なデンマークは、ひまわりをお気に入りの花瓶に生けて、食卓の中央へと飾った。
　そして、国産のバイア（ビール）とスモーブロー（オープンサンド）を、夏に振る舞おうとする。

「いっぺえ作り過ぎちったから、食いぎんねんだ、おめぇ、食べでつけで」

　はにかむように笑い、トレーに、それらとナイフとフォークを乗せたものを夏の前へと置いた。

「いただきます」
「おあぎなんしょ！」

　夏が、舌鼓を打つのを、向かいに座ったデンマークは、ニコニコしながら見守っている。
　その様子がなんだか、とても可愛らしく見えて、夏は思わず口角を上げた。

「うめえが？」
「はい、とても」

　夏の笑顔の意味はそれだけではなかったが、実際にバイアも、薄切りのパンにたっぷりのバターを塗り、サーモンやアボカドや茹で卵を乗せたスモーブローも美味しかったので、そう答える。

「そーけ！」

　デンマークの満面の笑みが眩しい。
　夏は、食事と彼の笑顔を味わい尽くした。

「ごちそうさまでした」
「おう！」

　さて、これからは春と秋と冬にあったこと、積もる話でも聞いて過ごそうか。