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なんだか人間味のない人だな、と思った。
シャーロック・ホームズが、物を食べたり、風呂に入ったり、セックスをしたり、眠ったりしているところが、私には想像がつかないのだ。
けれど、唯一、彼に人間味を感じる瞬間がある。それは、ジョン・ワトソンといる時の彼だ。
私は、彼らがたまに来るカフェで働いているので、彼らとは顔馴染みである。別に、友達という訳ではないが。
友達というのは、シャーロックとジョンのような関係を指すのだろう。
ジョンのブログは大変興味深いし、シャーロックはとにかく変人なので、面白い。
私は、そんなお客様ふたりが好きだった。
しかし、ある時、私は恋をしているのだと気付いてしまったのである。よりによって、シャーロックの方に。あんな変人に。
私は、彼と初めてあった時に、住所やら出身地やらミドルネームまで当てられてしまい、狼狽したことをよく覚えている。最初は、「うるさい」とだけ思っていたはずなのに、今では、彼を愛しく想っている。私は、自分の恋に、気持ちに、心底驚いた。あの、有名なコンサルタント探偵に、まさか私が惚れるだなんて!
動物園の檻の中を見るような感覚で彼を見ていたはずなのに。いつの間にか、彼は檻の中ではなく、私の目の前に、背を向けて存在している。しかし、その背中を走って追いかけたとしても、私は彼には追い付けないのだろうことが悲しい。
シャーロックとジョンの間には、特別で強固な絆があるように思う。私は、それが羨ましい。それが、欲しい。神様がいるのなら、私はあなたにそれを願う。
コーヒーとサンドイッチを、ふたりのテーブルに運んで、少しばかり話をする程度の関係の私。
私は平凡な、面白みのない人間だ。周りで何か事件が起こったこともない。だから、彼に興味を持ってもらえないだろう。
今日も、ごく普通に出勤し、給仕の仕事をこなす。
すると、しばらくして、あのふたりがやって来た。
「注文は?」
私が尋ねると、いつものようにジョンだけが注文をする。
「オーケー。それじゃ」
「待て。いつもより君の挙動が不自然だ。僕の方を見ようとしない。何かあったのか?」
ふたりのテーブルから離れようとしたその時、シャーロックが私を呼び止めた。
「……何もないよ」
「君がそんな風に動揺するなんて、余程のことがあったんだろう? 事件か?」
「そんな大袈裟なものじゃない」
「……そうか。ならいい」
「うん」
私は、注文を告げに歩みを進める。本当は、飛び跳ねたいくらいに嬉しかった。
シャーロックが私を心配してくれたのだ。
今日はハッピーな一日になりそうだと、私は微笑む。
彼は、私が思っている以上に、私を気にしてくれているのかもしれない。
シャーロック・ホームズが、物を食べたり、風呂に入ったり、セックスをしたり、眠ったりしているところが、私には想像がつかないのだ。
けれど、唯一、彼に人間味を感じる瞬間がある。それは、ジョン・ワトソンといる時の彼だ。
私は、彼らがたまに来るカフェで働いているので、彼らとは顔馴染みである。別に、友達という訳ではないが。
友達というのは、シャーロックとジョンのような関係を指すのだろう。
ジョンのブログは大変興味深いし、シャーロックはとにかく変人なので、面白い。
私は、そんなお客様ふたりが好きだった。
しかし、ある時、私は恋をしているのだと気付いてしまったのである。よりによって、シャーロックの方に。あんな変人に。
私は、彼と初めてあった時に、住所やら出身地やらミドルネームまで当てられてしまい、狼狽したことをよく覚えている。最初は、「うるさい」とだけ思っていたはずなのに、今では、彼を愛しく想っている。私は、自分の恋に、気持ちに、心底驚いた。あの、有名なコンサルタント探偵に、まさか私が惚れるだなんて!
動物園の檻の中を見るような感覚で彼を見ていたはずなのに。いつの間にか、彼は檻の中ではなく、私の目の前に、背を向けて存在している。しかし、その背中を走って追いかけたとしても、私は彼には追い付けないのだろうことが悲しい。
シャーロックとジョンの間には、特別で強固な絆があるように思う。私は、それが羨ましい。それが、欲しい。神様がいるのなら、私はあなたにそれを願う。
コーヒーとサンドイッチを、ふたりのテーブルに運んで、少しばかり話をする程度の関係の私。
私は平凡な、面白みのない人間だ。周りで何か事件が起こったこともない。だから、彼に興味を持ってもらえないだろう。
今日も、ごく普通に出勤し、給仕の仕事をこなす。
すると、しばらくして、あのふたりがやって来た。
「注文は?」
私が尋ねると、いつものようにジョンだけが注文をする。
「オーケー。それじゃ」
「待て。いつもより君の挙動が不自然だ。僕の方を見ようとしない。何かあったのか?」
ふたりのテーブルから離れようとしたその時、シャーロックが私を呼び止めた。
「……何もないよ」
「君がそんな風に動揺するなんて、余程のことがあったんだろう? 事件か?」
「そんな大袈裟なものじゃない」
「……そうか。ならいい」
「うん」
私は、注文を告げに歩みを進める。本当は、飛び跳ねたいくらいに嬉しかった。
シャーロックが私を心配してくれたのだ。
今日はハッピーな一日になりそうだと、私は微笑む。
彼は、私が思っている以上に、私を気にしてくれているのかもしれない。