ポケモンは可愛い。可愛くて食べちゃいたい、と思ったことはないだろうか？　私はある。
　しかし、考えなしにそこらにいるヤドンのしっぽやタルップルの背中の皮をムシャムシャと食べる訳にはいかない。
　そこで私は、ポケモンたちと共に、洋菓子店を営むことにした。現在、ガラル地方のキルクスタウンに店を構えている。
　古い建物が立ち並び、銀雪が降る温泉町。私はこの町が好きだ。
　子供の頃に家族旅行で初めてこの町に来た際は、帰りたくないと駄々をこねたものである。懐かしい記憶だ。
　私の出身地は、多くの人が集まる港のあるバウタウンであり、もちろん故郷として愛している。海で釣りをしたり、シーフードレストランでバイトをしたりした思い出がある。
　私の洋菓子店は、相棒ポケモンであるミルキィバニラのフレーバーのマホイップを含む、多くのポケモンたちの協力の上に成り立っている。
　各種フレーバーのマホイップたちが生成したクリーム。アマカジの汗を薄めた甘いシロップ。タルップルの出す蜜と、ミツハニーの集めた蜜。ミルタンクのモーモーミルク。
　現在、ありがたいことに、店は繁盛している。
　ここまで来るのには、長い道のりがあった。製菓学校に通ったり、方々を旅して研鑽を積んだり。
　旅の途中、製菓学校で習ったアメ細工（ちなみに苺アメ細工）をマホミルに渡した。マホミルは喜び、その場でくるくると回る。すると、マホイップに進化した。
　それから、開店してしばらくは、客足もまばらだったのだが。
　ある日、野生のマホミルが店にやって来た。マホミルが姿を見せた洋菓子店は、大繁盛が約束されるというジンクスがある。
　なんと、その日から私の店にはたくさんの客が来るようになったのだ。
　私とマホイップの努力と、野生のマホミルとの嬉しい邂逅。そのふたつのおかげで、今日の私の店があると思っている。

「いらっしゃいませ」

　本日、最初のお客様が来店した。
　店内には甘い香りが充満している。
　お客様は笑顔で、私たちの作ったケーキを買っていった。その笑顔を見て、私とマホイップも微笑んだ。
　今日も、一日がんばろう。