尊敬している年下の彼女は、美人でギャルで社長で、そしてさらにはアイドルにもなった。
　私は、そんな彼女、桐生つかさ社長の秘書である。
　朝、8時には出社し、まずは社長室を掃除する。30分後に社長が到着するので、それまでに色々と準備をしておく。
　時間ぴったりに、彼女は出社して来た。

「おつー」
「おはようございます。社長、本日のご予定ですが、9時から社長主催の会議。11時よりクライアントとの打ち合わせの後、会食が入っております。その後は、15時より社の秋服のモデル撮影。後、17時よりアイドルとしての、秋スイーツのCM撮影がございます。佐久間まゆ様もご一緒です。それが終わり次第、一度、事務所に寄るように、とプロデューサー様からのご連絡がありました。それと、異業種交流会へのお誘いのお手紙が届いております。机の上にある封筒をご覧になってください」

　私は、手元の端末で予定を確認しながら話す。

「OK。アタシのコーヒーは？」
「こちらにご用意しております」

　タンブラーに入れたコーヒーを差し出す。

「いつも、サンキュ」
「いえ。私の仕事ですから」
「プロフェッショナルじゃん。そういうとこカッコいいよな」

　ニッと笑う、桐生社長。美しく、勝ち気で、けれど根底には、私への労りがある笑顔だ。今日も仕事を頑張れそうである。

「打ち合わせの資料は？」
「第一会議室の机の上に、人数分用意してございます」
「じゃあ、そろそろ行くか。アタシのサポートよろしく」
「かしこまりました」

　私は会議中は議事録を取り、終われば後片付けをするのが仕事だ。
　その後、商談でクライアントが来社。私は名刺を頂戴して、社長に取り次ぐ。そして、応接室まで案内し、お茶の用意をする。
　商談を終えた後は、自社の撮影所へ移動。つつがなく撮影を終え、休憩を挟み、次はCM撮影の現場へ移動。
　アイドルとしての桐生つかさを存分に輝かせ、撮影は終了。彼女を事務所へと送る。
　私は、事務所へは行かない。そこは、プロデューサーの領分だからである。私たちは、互いの領分で彼女を支え、生きていくのだ。