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その洞穴から出たら、命はないよ。外には化物がうようよいるからね。
呆月さまは、私にそう言った。
だから私は、言い付けを守っている。
水は、奥にある泉で飲んだ。食べ物は、呆月さまが持って来てくれる。
私は、この洞穴から出たことがない。
「外は、人喰いの化物でいっぱいさ」と、呆月さまが言っていたから、そうなんだろう。
私は、今日も彼女を待つ。
やがて。暇潰しに積み上げていた石ころが倒れた頃。
「呆月さま!」
「おや、くたばってなかった」
「はい」
「ほら、お食べ」
「ありがとうございます」
彼女が持ってきたのは、茹でた栗と干し柿だった。
美味しい。私が食べているところを、呆月さまはじっと見ている。観察するように。
「アンタの着物、ボロだし寒そうだね。寒いのは良くないねえ」
呆月さまは、明日、羽織りを持って来てくれると言った。
「それじゃあ、アタシはもう行くよ」
「はい。さようなら」
洞穴の入り口まで見送る。
またひとりになった私は、木の枝で地面に絵を描いた。
呆月さまの絵。だけど、あの艶やかで長い髪も綺麗な目も到底描けていない。
その晩、いつものように干し草の寝床で眠りについた。
翌朝。思わぬ来客があった。
「きゃっ!?」
少女は、小さく悲鳴を上げる。
「あ、あなた、ここに住んでるの?」
「うん。君は?」
「わたしは、近くの村に住んでるの。名前は、シノ」
シノ曰く、外に人喰いの化物などいないらしい。
「あなた、その女に騙されてるのよ」
「そんなまさか……」
騙す理由が分からない。
「その女こそ、人喰いの化物なんだわ」
「でも、それじゃあ、どうして私を食べないんだ?」
「大人になるのを待ってるのかも。まるで家畜ね」
「いい加減にしてくれ。私は、呆月さまに救われているんだ」
シノは、これ以上ここにいたら自分まで危ないと言い、去って行った。
そして、いつも通りに呆月さまが来る。
「ほら、食べ物と羽織りだよ」
「ありがとうございます」
私を見つめる呆月さまの口元が、三日月みたいに弧を描いていた。
呆月さまは、私にそう言った。
だから私は、言い付けを守っている。
水は、奥にある泉で飲んだ。食べ物は、呆月さまが持って来てくれる。
私は、この洞穴から出たことがない。
「外は、人喰いの化物でいっぱいさ」と、呆月さまが言っていたから、そうなんだろう。
私は、今日も彼女を待つ。
やがて。暇潰しに積み上げていた石ころが倒れた頃。
「呆月さま!」
「おや、くたばってなかった」
「はい」
「ほら、お食べ」
「ありがとうございます」
彼女が持ってきたのは、茹でた栗と干し柿だった。
美味しい。私が食べているところを、呆月さまはじっと見ている。観察するように。
「アンタの着物、ボロだし寒そうだね。寒いのは良くないねえ」
呆月さまは、明日、羽織りを持って来てくれると言った。
「それじゃあ、アタシはもう行くよ」
「はい。さようなら」
洞穴の入り口まで見送る。
またひとりになった私は、木の枝で地面に絵を描いた。
呆月さまの絵。だけど、あの艶やかで長い髪も綺麗な目も到底描けていない。
その晩、いつものように干し草の寝床で眠りについた。
翌朝。思わぬ来客があった。
「きゃっ!?」
少女は、小さく悲鳴を上げる。
「あ、あなた、ここに住んでるの?」
「うん。君は?」
「わたしは、近くの村に住んでるの。名前は、シノ」
シノ曰く、外に人喰いの化物などいないらしい。
「あなた、その女に騙されてるのよ」
「そんなまさか……」
騙す理由が分からない。
「その女こそ、人喰いの化物なんだわ」
「でも、それじゃあ、どうして私を食べないんだ?」
「大人になるのを待ってるのかも。まるで家畜ね」
「いい加減にしてくれ。私は、呆月さまに救われているんだ」
シノは、これ以上ここにいたら自分まで危ないと言い、去って行った。
そして、いつも通りに呆月さまが来る。
「ほら、食べ物と羽織りだよ」
「ありがとうございます」
私を見つめる呆月さまの口元が、三日月みたいに弧を描いていた。
