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それはそれは、美しい人魚だった。
緑がかった青色のヒレやウロコは、宝石みたいに輝いていて。頬は珊瑚色に染められていて。瞳は、深い海の色。髪は、黄金色。
幼いフロイドは、彼に恋をした。
彼は好奇心旺盛で、よく浅瀬まで行っているのだと言う。
一度だけ、そんな彼について行ったことがある。人間たちに興味があったのではなく、陽光の下でキラキラ輝く宝石を見たかったからだ。
フロイドの目論見通り、綺麗な彼の輝く姿を見ることが出来た。その美しい光景を、自分は一生忘れることはないだろう。
そして、彼と、ずっと一緒にいたいと願った。
しかし、彼はどこか遠くの海へ行ってしまったのである。理由は分からない。大人たちは、「浅瀬に行かないように」と口々に言うだけだった。
初恋の幕切れは、呆気なく、寂しい。
けれど、フロイドは恋心を捨て切れず、美しい思い出とともに宝箱に大切にしまったのである。
◆◆◆
その再会は、奇跡のように。
フロイドは、ナイトレイブンカレッジに入学して、初恋の彼と再会したのだ。
人間体をとっていたが、ひと目で彼だと分かった。
オクタヴィネル寮の同級生としての彼に、すぐに話しかける。
「ねぇ、オレのこと覚えてる?」
「はぁ?」
そう質問した時の彼の顔ときたら、この世を呪っているかのようだった。
「珊瑚の海で一緒に浅瀬に冒険に行った、フロイド・リーチ」
「覚えてねぇな、そんな昔のことは」
彼の吐き出す言葉は、呪詛のようだった。覚えているが、その上で、触れたくない。そんな態度。
しかし、初恋の人魚と再会して、そう易々と諦める訳にはいかない。フロイドは、毎日しつこく彼に話しかけた。
「本当は覚えてるんでしょ?」
「うるせぇ」
「一緒に、日の光の下で、人間の船とか港とか見たじゃん」
「知るかよ……」
ずっと、そんな調子だったのだが、ある日、根負けしたのか、彼の態度が変わる。
「俺にとって、浅瀬への冒険は、嫌な思い出になってしまっているんだよ」
聞けば、人間に捕まりウロコを無理矢理に剥がされ、命からがら逃げた過去があるのだと言う。
「人間なんて、陸なんて、大嫌いだよ」
陸を、瞳を輝かせて眺めていた過去を呪っているのだと理解した。フロイド・リーチは、彼にとっては嫌な記憶の一欠片なのだ。
「その記憶、オレと一緒に塗り替えようよ」
フロイドは、意を決して口を開いた。そして、彼の手を握る。
「足を使うのって楽しいじゃん?」
「そうか?」
「踊ろう!」
「えっ!?」
一方は躊躇いがちに、もう一方はとても楽しそうに、手を繋いで踊る。
いつしか、彼の表情も柔らかくなり、笑みを浮かべていた。
彼が、陸でもずっと笑顔でいられるためなら、なんでもしたいと、フロイドは思った。
初恋の人魚とフロイド(ツイステ)/ヤエ様
リクエストありがとうございました!
2020/08/01
緑がかった青色のヒレやウロコは、宝石みたいに輝いていて。頬は珊瑚色に染められていて。瞳は、深い海の色。髪は、黄金色。
幼いフロイドは、彼に恋をした。
彼は好奇心旺盛で、よく浅瀬まで行っているのだと言う。
一度だけ、そんな彼について行ったことがある。人間たちに興味があったのではなく、陽光の下でキラキラ輝く宝石を見たかったからだ。
フロイドの目論見通り、綺麗な彼の輝く姿を見ることが出来た。その美しい光景を、自分は一生忘れることはないだろう。
そして、彼と、ずっと一緒にいたいと願った。
しかし、彼はどこか遠くの海へ行ってしまったのである。理由は分からない。大人たちは、「浅瀬に行かないように」と口々に言うだけだった。
初恋の幕切れは、呆気なく、寂しい。
けれど、フロイドは恋心を捨て切れず、美しい思い出とともに宝箱に大切にしまったのである。
◆◆◆
その再会は、奇跡のように。
フロイドは、ナイトレイブンカレッジに入学して、初恋の彼と再会したのだ。
人間体をとっていたが、ひと目で彼だと分かった。
オクタヴィネル寮の同級生としての彼に、すぐに話しかける。
「ねぇ、オレのこと覚えてる?」
「はぁ?」
そう質問した時の彼の顔ときたら、この世を呪っているかのようだった。
「珊瑚の海で一緒に浅瀬に冒険に行った、フロイド・リーチ」
「覚えてねぇな、そんな昔のことは」
彼の吐き出す言葉は、呪詛のようだった。覚えているが、その上で、触れたくない。そんな態度。
しかし、初恋の人魚と再会して、そう易々と諦める訳にはいかない。フロイドは、毎日しつこく彼に話しかけた。
「本当は覚えてるんでしょ?」
「うるせぇ」
「一緒に、日の光の下で、人間の船とか港とか見たじゃん」
「知るかよ……」
ずっと、そんな調子だったのだが、ある日、根負けしたのか、彼の態度が変わる。
「俺にとって、浅瀬への冒険は、嫌な思い出になってしまっているんだよ」
聞けば、人間に捕まりウロコを無理矢理に剥がされ、命からがら逃げた過去があるのだと言う。
「人間なんて、陸なんて、大嫌いだよ」
陸を、瞳を輝かせて眺めていた過去を呪っているのだと理解した。フロイド・リーチは、彼にとっては嫌な記憶の一欠片なのだ。
「その記憶、オレと一緒に塗り替えようよ」
フロイドは、意を決して口を開いた。そして、彼の手を握る。
「足を使うのって楽しいじゃん?」
「そうか?」
「踊ろう!」
「えっ!?」
一方は躊躇いがちに、もう一方はとても楽しそうに、手を繋いで踊る。
いつしか、彼の表情も柔らかくなり、笑みを浮かべていた。
彼が、陸でもずっと笑顔でいられるためなら、なんでもしたいと、フロイドは思った。
初恋の人魚とフロイド(ツイステ)/ヤエ様
リクエストありがとうございました!
2020/08/01