本物になってやろうと思った。
　誰もが恐ろしいと思う存在になろうと思った。
　そして私は、己の中に呪いを生む。
　それから、何百年かの時が流れた。
　私は、私であるために、人を殺し続けている。
　私を祓おうとした人間たちは、ひとり残らず返り討ちにした。
　ある日、白髪の男がやって来て。そいつは、私を見るなり言い放った。

「なぁんだ、弱そうだ」

　無礼な。
　私は、呪詛を唱え始める。

『蜻ｪ縺｣縺ｦ繧?ｋ谿ｺ縺励※繧?ｋ闍ｦ縺励ｓ縺ｧ豁ｻ縺ｭ蝨ｰ迯?↓關ｽ縺｡繧阪蜑阪ｒ謨代∴繧玖???縺?↑縺?峡繧翫〒蝨ｰ迯??蠎輔〒豕｣縺?※縺?ｍ』
「ふーん。君は、僕を地獄に落としたいんだ？」

　気に食わない。男は、全く恐怖していないように見える。
　それに、私の“禍”を正面から受けているはずなのに。全身から血を流して倒れるはずなのに。びくともしない。
　赦さない。赦さないぞ、貴様。
　呪術師風情が。人間ごときが。調子に乗るなよ。
　私は、呪詛を吐きながら、男の四肢をもぎ取ろうとした。しかし、男には届かない。
　何が起きている？　何故、触れられない？
　怒りは困惑に変わり、困惑は焦りに変わる。

「それじゃあ、まあ、さよなら」
『何故……何故、貴様は…………』
「僕、最強だから」

　焦りは、とうとう恐怖になった。

『消えたくない……！　まだ消えたくない！　私は、人を呪わなくてはならない！　私は、私は！　全てを呪い殺さなければならない！』
「命もないのに、命乞い？　どうでもいいね」
『私は————』

　嗚呼。消えていく。私がいなくなる。
　私は、どこへゆく？
　私の意識は。願いは。怨みは。
　私がこうなったのは、貴様たちが迫害したからだろう？　罪を償え。罰を受けろ。

『貴様は、無様に死ぬ』

　その一言だけを、かろうじて遺して、私は何も発せなくなった。
　もし、生まれ変われたら。私は、もう一度人間どもを呪おう。
　呪いあれ、と私は祈った。