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出来ることは、たかが知れていた。家事の手伝いとか、皐月ちゃんを独りにしないようにするとか、そのくらい。
ふたりが、このアパートを出て行くのは悲しかった。皐月ちゃんが夜中に叫ぶから隣人に怒られたらしい。
嗚呼。人の事情など知らずに、他人 は情などかけずに。
唯。君のために、いや誰でもない自分のために。
俺は、ふたりの引っ越しに、ひっそりついて行った。
星に誓った約束は、青い色して。
それからの俺は、温泉街に潜んで密やかに、ふたりを見守った。
ひそひそ陰口叩く奴ら、黙らせる。
俺の愛銃は、湯を放つ。
悲壮の芽を育ててる奴ら、追い払う。
俺の愛銃は、湯を放つ。
ついた渾名が、“手拭い天狗”って、なんだそりゃ!
手拭いで目元隠して、ぴょんと跳んで去るかららしい。
転んだ君の膝を湯で流し、キュートな絆創膏を差し出す。
働く君の疲れを流そう、きゅっと呑める水を差し入れ。
天狗は鞍馬にいない。浅間にいる。
天狗は暗がりにいる。朝までいない。
俺は、物を語らない。俺は、言葉を持たない。
しのぶれど、顔に出そうで。素顔隠した。
ひさかたの、天行く星に。素顔晒した。
儘、光陰は矢のように過ぎ去り。
唯、天狗は秋風のように飛び去る。
俺は、ふたりのため、ひっきりなしに、ひっそり働いた。
地獄には切りがないと知りながらも。それでもなお、悲しみを乗り越えられるように。
神無月の終わりに、祭りがある。
そこで俺は、天狗の面を被って行くことにした。
老いも若きも、生者も死者も入り交じるらしい。
お芋も柿も、南瓜も林檎も混ぜてもいいらしい。
星にも手が届く夢を見てもいいらしい。
そして俺は、すれ違い様、そっと囁いた。
「……ハッピーハロウィン」
「もしかして、君は————」
「内緒だよ、命ちゃん」
人差し指を、唇に。
小指には、約束を。
何者でもない俺にも、星は青く輝いて。
ふたりが、このアパートを出て行くのは悲しかった。皐月ちゃんが夜中に叫ぶから隣人に怒られたらしい。
嗚呼。人の事情など知らずに、
唯。君のために、いや誰でもない自分のために。
俺は、ふたりの引っ越しに、ひっそりついて行った。
星に誓った約束は、青い色して。
それからの俺は、温泉街に潜んで密やかに、ふたりを見守った。
ひそひそ陰口叩く奴ら、黙らせる。
俺の愛銃は、湯を放つ。
悲壮の芽を育ててる奴ら、追い払う。
俺の愛銃は、湯を放つ。
ついた渾名が、“手拭い天狗”って、なんだそりゃ!
手拭いで目元隠して、ぴょんと跳んで去るかららしい。
転んだ君の膝を湯で流し、キュートな絆創膏を差し出す。
働く君の疲れを流そう、きゅっと呑める水を差し入れ。
天狗は鞍馬にいない。浅間にいる。
天狗は暗がりにいる。朝までいない。
俺は、物を語らない。俺は、言葉を持たない。
しのぶれど、顔に出そうで。素顔隠した。
ひさかたの、天行く星に。素顔晒した。
儘、光陰は矢のように過ぎ去り。
唯、天狗は秋風のように飛び去る。
俺は、ふたりのため、ひっきりなしに、ひっそり働いた。
地獄には切りがないと知りながらも。それでもなお、悲しみを乗り越えられるように。
神無月の終わりに、祭りがある。
そこで俺は、天狗の面を被って行くことにした。
老いも若きも、生者も死者も入り交じるらしい。
お芋も柿も、南瓜も林檎も混ぜてもいいらしい。
星にも手が届く夢を見てもいいらしい。
そして俺は、すれ違い様、そっと囁いた。
「……ハッピーハロウィン」
「もしかして、君は————」
「内緒だよ、命ちゃん」
人差し指を、唇に。
小指には、約束を。
何者でもない俺にも、星は青く輝いて。