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始めに言っておくと、これは距離感の話である。
僕と彼との距離。ふたりの間にあるもの。境界。そういった話。
単なるクラスメイトであった彼。
僕と彼の話をしよう。
✕✕✕✕✕センチピード
◆◆◆
「あはははははっ!」
夜空の下、月明かりに照らされて、彼は笑っていた。
「こんばんは、阿良々木くん」
「…………」
「ひとりくらい観客がほしいと思ってたんだぁ」
彼の姿は、異様で、異形で、威容を誇っている。下半身が、ムカデになっていた。
境百足 。大ムカデの怪異。
「この世界をぶっ壊してやるんだ」
彼は、事も無げに言った。それが、自分の役目みたいに。
「そんなことはさせない」
「へぇ。それじゃあ、戦おうか?」
「ああ」
彼は、ムカデは、物凄いスピードで僕の元へ来て、獲物にするように体を巻き付けてきた。
それを、力いっぱい引きちぎる。
「無駄だよ、そんなの」
吸血鬼並みの再生力だった。
「阿良々木くんってさ、前から悪目立ちしてたよねぇ。最近は、ハーレム作ってるんだっけ?」
「根も葉もない噂だ!」
そんな噂が広まっているから、同性の友達がいないのだろうか?
「なぁ、俺の名前、知ってる?」
「それは…………」
「知らないよなぁ。たかがクラスメイトだもんな」
「そうじゃなくて……!」
境百足は、取り憑いた者の名前を奪うのだ。だから、僕は彼の名前を思い出せない。おそらく、彼の両親でさえ、もう思い出せないのだ。記憶も、記録も改竄される。
「ま、どうでもいいや。死んでねぇ」
「くっ……!」
ムカデの体が巻き付き、動きをわずかに封じられたその時、彼が僕の腕に噛み付いた。
ムカデには、毒がある。体内に侵入し、徐々に赤みを増して激しく痛む腕。
「ぎっ……!?」
「あははっ! 楽しいねぇ、阿良々木くん」
僕は、毒に蝕まれた腕をもいだ。
「ふぅん。思い切ったことするね」
「どうして世界を壊すんだ?」
「つまらないから。みんなが何かしらの怪異に出会えば、物語になれるだろ?」
つまり彼は、こちらとあちらの境界をなくすつもりらしい。そんなことは、看過出来なかった。
三度目。彼に巻き付かれた僕は、抵抗をやめた。
「どうしたの? 阿良々木くん」
「お前の願いは叶った。もう、ここは物語の中だ」
「ここが?」
「本当は、境目なんてなかったんだよ。お前と僕の物語は、前から繋がっていたんだから」
「…………」
彼は、ぽかんとして、脱力している。
「ああ、そうか……俺は、君と関わりたかったのかぁ…………」
そう漏らすと、彼は意識を失った。境百足は抜けて、異形でもなくなる。
僕は、倒れる彼を受け止めた。
◆◆◆
後日談、というか、今回のオチ。
「阿良々木くんは、女しか助けないのかと思ってた。男は見捨てるのかと」
「そんなワケないだろ!」
距離感は縮まったのだけれど、認識の差が、そこにはあった。
僕と彼との距離。ふたりの間にあるもの。境界。そういった話。
単なるクラスメイトであった彼。
僕と彼の話をしよう。
✕✕✕✕✕センチピード
◆◆◆
「あはははははっ!」
夜空の下、月明かりに照らされて、彼は笑っていた。
「こんばんは、阿良々木くん」
「…………」
「ひとりくらい観客がほしいと思ってたんだぁ」
彼の姿は、異様で、異形で、威容を誇っている。下半身が、ムカデになっていた。
「この世界をぶっ壊してやるんだ」
彼は、事も無げに言った。それが、自分の役目みたいに。
「そんなことはさせない」
「へぇ。それじゃあ、戦おうか?」
「ああ」
彼は、ムカデは、物凄いスピードで僕の元へ来て、獲物にするように体を巻き付けてきた。
それを、力いっぱい引きちぎる。
「無駄だよ、そんなの」
吸血鬼並みの再生力だった。
「阿良々木くんってさ、前から悪目立ちしてたよねぇ。最近は、ハーレム作ってるんだっけ?」
「根も葉もない噂だ!」
そんな噂が広まっているから、同性の友達がいないのだろうか?
「なぁ、俺の名前、知ってる?」
「それは…………」
「知らないよなぁ。たかがクラスメイトだもんな」
「そうじゃなくて……!」
境百足は、取り憑いた者の名前を奪うのだ。だから、僕は彼の名前を思い出せない。おそらく、彼の両親でさえ、もう思い出せないのだ。記憶も、記録も改竄される。
「ま、どうでもいいや。死んでねぇ」
「くっ……!」
ムカデの体が巻き付き、動きをわずかに封じられたその時、彼が僕の腕に噛み付いた。
ムカデには、毒がある。体内に侵入し、徐々に赤みを増して激しく痛む腕。
「ぎっ……!?」
「あははっ! 楽しいねぇ、阿良々木くん」
僕は、毒に蝕まれた腕をもいだ。
「ふぅん。思い切ったことするね」
「どうして世界を壊すんだ?」
「つまらないから。みんなが何かしらの怪異に出会えば、物語になれるだろ?」
つまり彼は、こちらとあちらの境界をなくすつもりらしい。そんなことは、看過出来なかった。
三度目。彼に巻き付かれた僕は、抵抗をやめた。
「どうしたの? 阿良々木くん」
「お前の願いは叶った。もう、ここは物語の中だ」
「ここが?」
「本当は、境目なんてなかったんだよ。お前と僕の物語は、前から繋がっていたんだから」
「…………」
彼は、ぽかんとして、脱力している。
「ああ、そうか……俺は、君と関わりたかったのかぁ…………」
そう漏らすと、彼は意識を失った。境百足は抜けて、異形でもなくなる。
僕は、倒れる彼を受け止めた。
◆◆◆
後日談、というか、今回のオチ。
「阿良々木くんは、女しか助けないのかと思ってた。男は見捨てるのかと」
「そんなワケないだろ!」
距離感は縮まったのだけれど、認識の差が、そこにはあった。