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何を尋ねても、迷子の少年は泣くばかりで、男は困っていた。
仕方なく、「おいで」と手を引く。
そこには、グランドピアノがあった。
「どんな曲が好きかな?」
少年は、椅子に座った男を不思議そうな顔で見ている。
「楽しい曲にしよう」
男は、明るい曲調の弾むような旋律を奏で始めた。実は、男は本職のピアニストである。いつもは、ストリートピアノなどはしないが、今日は特別だ。
ここには、ピアノがあり、自分がいる。だから、不安そうな君のために、ピアノを弾こう。
そうしていると、男の友人がやって来た。
「やあ、露伴くん」
ピアニストは、曲を止めずに挨拶をする。
「やあ。珍しいじゃあないか。こんなところでピアノを弾くなんて」
「その子、たぶん迷子なんだけど、何も答えてくれないから。とりあえず、落ち着かせたくてね」
「ふぅん。君、漫画は好きか?」
「…………」
いつの間にか泣き止んだ少年は、黙って岸辺露伴を見上げている。
「まあいい。未来の読者かもしれないからな」
そう言うと、露伴は、取り出したメモ帳にボールペンでイラストを描いていった。
イラストは、あっという間に描き上がり、最後にサインを入れて完成する。
「君にあげよう」
「わ…………」
少年が、少し笑った。
露伴は、役目は終わったとばかりに、友人の演奏に聴き入る。
楽しげな曲は、ずっと続いていた。
プロのピアニストは持久力もあるんだな、と感心する。
数分後。少年の母親がピアノの側にいる彼を見付けた。
「まーくん!」
「ママ!」
「ありがとうございます。保護していただいて」
「ぼくじゃなくて、彼に礼をするといい。その子のために、ずっとピアノを弾いていたからな」
ピアノを弾き終えて、一礼する男を指差す。
母と子は、ピアニストにもお礼を言った。
それから、手を振って、去って行く。
「全く、君は人が好いね」
「私が? それは露伴くんの方じゃあないかな?」
ふたりは、お互いを見て笑い出した。
ピアニストと漫画家が、己の技術を惜し気もなく使った一幕である。
仕方なく、「おいで」と手を引く。
そこには、グランドピアノがあった。
「どんな曲が好きかな?」
少年は、椅子に座った男を不思議そうな顔で見ている。
「楽しい曲にしよう」
男は、明るい曲調の弾むような旋律を奏で始めた。実は、男は本職のピアニストである。いつもは、ストリートピアノなどはしないが、今日は特別だ。
ここには、ピアノがあり、自分がいる。だから、不安そうな君のために、ピアノを弾こう。
そうしていると、男の友人がやって来た。
「やあ、露伴くん」
ピアニストは、曲を止めずに挨拶をする。
「やあ。珍しいじゃあないか。こんなところでピアノを弾くなんて」
「その子、たぶん迷子なんだけど、何も答えてくれないから。とりあえず、落ち着かせたくてね」
「ふぅん。君、漫画は好きか?」
「…………」
いつの間にか泣き止んだ少年は、黙って岸辺露伴を見上げている。
「まあいい。未来の読者かもしれないからな」
そう言うと、露伴は、取り出したメモ帳にボールペンでイラストを描いていった。
イラストは、あっという間に描き上がり、最後にサインを入れて完成する。
「君にあげよう」
「わ…………」
少年が、少し笑った。
露伴は、役目は終わったとばかりに、友人の演奏に聴き入る。
楽しげな曲は、ずっと続いていた。
プロのピアニストは持久力もあるんだな、と感心する。
数分後。少年の母親がピアノの側にいる彼を見付けた。
「まーくん!」
「ママ!」
「ありがとうございます。保護していただいて」
「ぼくじゃなくて、彼に礼をするといい。その子のために、ずっとピアノを弾いていたからな」
ピアノを弾き終えて、一礼する男を指差す。
母と子は、ピアニストにもお礼を言った。
それから、手を振って、去って行く。
「全く、君は人が好いね」
「私が? それは露伴くんの方じゃあないかな?」
ふたりは、お互いを見て笑い出した。
ピアニストと漫画家が、己の技術を惜し気もなく使った一幕である。