novelmber
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は、生活保護特区送りになった時に、名前を捨てた。忌まわしい血縁者たちとの縁切りのつもりで。
「ナナシ」
いつからか、私は、そう呼ばれるようになった。
マントラアーヤの住人たちは、私の過去を知らない。だから、居心地がよかった。
「ナナシさん」
「なんだい?」
フーカに呼ばれ、返事をする。
「今日、時間あります?」
「あるよ」
「朗読の練習に付き合ってもらえませんか?」
「ああ、分かった」
「ありがとうございます!」
私は時々、彼女の本読みの練習に付き合っていた。大抵は、トウタが聞いているが、都合がつかない時に私に声がかかる。
フーカは、たったひとりの観客を前にして、物語を読み上げ始めた。
私は、目を閉じて、それを聞く。
フーカは、たまにつっかえながらも懸命に読み続けた。
この時間が、私は嫌いではない。私の頭の中では、暗闇の中で、フーカにだけスポットライトが当たっている。
だってそれはあんまり無理じゃありませんか。そんなことをする位なら、私はもう死んだ方がましです。今すぐ殺して下さい。
フーカの声。私は、とぷんと物語に潜った。
もの悲しい話だと思う。嫌われ者の、よだかの話。私みたいだ。
そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。
今でもまだ燃えています。
「おしまい」と、フーカ。私は、ゆっくりと目を開く。
「どうでした?」
「よかったよ。フーカは、自分の役割を見付けて偉いね」
「いや、そんな大層なことでは」
「凄いことだよ」
みんな、何かになりたいんだ。でも、何にもなれない。そして、そのまま死んでいくんだよ。
「ナナシさんは、見付けられましたか? 役割……」
「見付からないな。新しい名前さえ、自分では見付けられなかった」
「ナナシって、やっぱり嫌ですか?」
「そんなことはないけれどね。私にはお似合いだよ」
「あの、よかったら、名前を考えませんか?」
「……ふむ。そうだな。君が決めてくれ」
「あなたの名前は————」
「ナナシ」
いつからか、私は、そう呼ばれるようになった。
マントラアーヤの住人たちは、私の過去を知らない。だから、居心地がよかった。
「ナナシさん」
「なんだい?」
フーカに呼ばれ、返事をする。
「今日、時間あります?」
「あるよ」
「朗読の練習に付き合ってもらえませんか?」
「ああ、分かった」
「ありがとうございます!」
私は時々、彼女の本読みの練習に付き合っていた。大抵は、トウタが聞いているが、都合がつかない時に私に声がかかる。
フーカは、たったひとりの観客を前にして、物語を読み上げ始めた。
私は、目を閉じて、それを聞く。
フーカは、たまにつっかえながらも懸命に読み続けた。
この時間が、私は嫌いではない。私の頭の中では、暗闇の中で、フーカにだけスポットライトが当たっている。
だってそれはあんまり無理じゃありませんか。そんなことをする位なら、私はもう死んだ方がましです。今すぐ殺して下さい。
フーカの声。私は、とぷんと物語に潜った。
もの悲しい話だと思う。嫌われ者の、よだかの話。私みたいだ。
そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。
今でもまだ燃えています。
「おしまい」と、フーカ。私は、ゆっくりと目を開く。
「どうでした?」
「よかったよ。フーカは、自分の役割を見付けて偉いね」
「いや、そんな大層なことでは」
「凄いことだよ」
みんな、何かになりたいんだ。でも、何にもなれない。そして、そのまま死んでいくんだよ。
「ナナシさんは、見付けられましたか? 役割……」
「見付からないな。新しい名前さえ、自分では見付けられなかった」
「ナナシって、やっぱり嫌ですか?」
「そんなことはないけれどね。私にはお似合いだよ」
「あの、よかったら、名前を考えませんか?」
「……ふむ。そうだな。君が決めてくれ」
「あなたの名前は————」