うちよそ
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人の視線の先を見る癖がある。
私は、また、人見先生が鶯谷さんを見ているのに気付いた。
彼女に何かあるのか?
校舎裏の喫煙所で煙草を吸いながら、私はそう疑問に思った。
◆◆◆
私立聖山茶花女子学園。様々なコースがあるのが特徴的な中高一貫校だ。
そこで僕は、日本史の教師をしている。
教職は、なかなかに激務だが、その割には薄給だ。
でも、別に構わない。ここには、彼女がいるから。
僕の担当するクラスの学級委員長、鶯谷ユノヲ。彼女こそ、僕の特別な娘だ。
日々、彼女だけを想って過ごしている。
わずかな休憩時間。煙草を吸いながら、僕は、廊下を歩く彼女を窓越しに見ていた。
「人見先生~」
「……逆井先生」
「こんにちは。隣いい?」
「こんにちは」
いい? と質問してはいるものの、逆井蝶子は、答えを聞く前に隣で煙草を吸い始める。
この女は、養護教諭であり、保健室の主だ。そう邪険にも出来ないから困る。
「最近どう? 元気?」
「まあ、普通です」
「そっか。私は、ちょっと疲れ気味かなぁ。忙しいよね、季節の変わり目は」
「そうですね」
逆井のことは、苦手だ。歳上の女であり、陽気なところが。僕の気も知らずに、歯を見せ、からから笑うのが憎らしい。
黒縁眼鏡の奥の焦げ茶色は、僕を射抜くように真っ直ぐだ。
それに加えて、左手に光る銀色の結婚指輪。この女は、魔女だ。そうに違いない。
夜な夜な、男と寝てるんだろう?
反吐が出る。
「なーんか、また値上がりするんだってね、煙草。嫌になるよねぇ」
「はい」
「ま、喫煙者仲間として、お互いの銘柄が継続出来ることを祈ろう」
「そうですね」
勝手に仲間にされている。不快だ。
この女は、社交不安に陥ることはないのだろうか?
ないだろうな。
「うっわ。もう休憩終わり?」
逆井は、煙草を灰皿に押し付けた。そして、白衣のポケットから消臭スプレーを取り出して、煙草の匂いを消す。
「じゃ、またね、人見先生」
「はい」
手を振りながら、彼女は去った。
さて。僕も教室へ戻ろう。あの娘の元へ。
◆◆◆
人見先生のことは、なんだか放っておけない。
私は、そんなに世話焼きでもないけど、彼のことは寂しそうに見えた。
だから、出来るだけ声をかけることにしている。
「人見先生って、きょうだいいる?」
「姉が…………」
「へぇ。私は、弟がいてねぇ。少し、人見先生に似てるんだ。あ、見た目は似てないよ? 雰囲気がね」
「はあ…………」
いつも、益体もないことばかり話す。でも、人生って意味のないものだし。いいよね、別に。
私は、また、人見先生が鶯谷さんを見ているのに気付いた。
彼女に何かあるのか?
校舎裏の喫煙所で煙草を吸いながら、私はそう疑問に思った。
◆◆◆
私立聖山茶花女子学園。様々なコースがあるのが特徴的な中高一貫校だ。
そこで僕は、日本史の教師をしている。
教職は、なかなかに激務だが、その割には薄給だ。
でも、別に構わない。ここには、彼女がいるから。
僕の担当するクラスの学級委員長、鶯谷ユノヲ。彼女こそ、僕の特別な娘だ。
日々、彼女だけを想って過ごしている。
わずかな休憩時間。煙草を吸いながら、僕は、廊下を歩く彼女を窓越しに見ていた。
「人見先生~」
「……逆井先生」
「こんにちは。隣いい?」
「こんにちは」
いい? と質問してはいるものの、逆井蝶子は、答えを聞く前に隣で煙草を吸い始める。
この女は、養護教諭であり、保健室の主だ。そう邪険にも出来ないから困る。
「最近どう? 元気?」
「まあ、普通です」
「そっか。私は、ちょっと疲れ気味かなぁ。忙しいよね、季節の変わり目は」
「そうですね」
逆井のことは、苦手だ。歳上の女であり、陽気なところが。僕の気も知らずに、歯を見せ、からから笑うのが憎らしい。
黒縁眼鏡の奥の焦げ茶色は、僕を射抜くように真っ直ぐだ。
それに加えて、左手に光る銀色の結婚指輪。この女は、魔女だ。そうに違いない。
夜な夜な、男と寝てるんだろう?
反吐が出る。
「なーんか、また値上がりするんだってね、煙草。嫌になるよねぇ」
「はい」
「ま、喫煙者仲間として、お互いの銘柄が継続出来ることを祈ろう」
「そうですね」
勝手に仲間にされている。不快だ。
この女は、社交不安に陥ることはないのだろうか?
ないだろうな。
「うっわ。もう休憩終わり?」
逆井は、煙草を灰皿に押し付けた。そして、白衣のポケットから消臭スプレーを取り出して、煙草の匂いを消す。
「じゃ、またね、人見先生」
「はい」
手を振りながら、彼女は去った。
さて。僕も教室へ戻ろう。あの娘の元へ。
◆◆◆
人見先生のことは、なんだか放っておけない。
私は、そんなに世話焼きでもないけど、彼のことは寂しそうに見えた。
だから、出来るだけ声をかけることにしている。
「人見先生って、きょうだいいる?」
「姉が…………」
「へぇ。私は、弟がいてねぇ。少し、人見先生に似てるんだ。あ、見た目は似てないよ? 雰囲気がね」
「はあ…………」
いつも、益体もないことばかり話す。でも、人生って意味のないものだし。いいよね、別に。