うちよそ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
スペード海賊団の船の進行方向に、小舟が漂っていた。
船長のポートガス・D・エースは、そこに倒れている人影を見る。
そして、その小舟に降りてみると、白衣を着た小柄な人物がいた。
「おい、大丈夫か?」
「……うー」
小さな呻き声。
「……舟ごと引き上げるぞ」
命に関わることだろう。エースの決断は早かった。
こうして、ひとりの珍客は招かれる。
◆◆◆
目覚めれば、そこは見知らぬ船の一室だった。
「私…………」
「気が付きましたか?!」
「あなたは……?」
自分が寝かされているすぐ横には、心配そうな顔の眼鏡の人。
「わたし、ユウリといいます。この船のクルーです」
「私は、キリエです。民俗学者をしています」
ゆっくりと起き上がり、自己紹介をした。
ベッドサイドに置かれた眼鏡をかけ、キリエは溜め息をつく。
「どうやら、私が遭難していたところを助けていただいたようで。ありがとうございます」
「いえいえ、無事でよかったです」
柔らかい笑顔。
いい人なんだな、とキリエは思う。
「あ、エース……キリエさんを見付けた船長に知らせて来ますね……!」
「はい」
その人にもお礼を言いたい。
少しして、船長がやって来た。
「よう、船長のエースだ。命拾いしたな」
「拾ってくださり、ありがとうございます」
深々と頭を下げるキリエ。
「堅苦しいな。あんまり気にすんなよ」
エースは、からっと笑う。
その後、皆で食事を共にした。キリエは、少し遠慮がちに食べ始める。
生きていることが嬉しい。料理を食べられるって素晴らしい。
ユウリに勧められるままに、食べ進める。
それから、キリエは、「ご馳走さまでした!」と元気に言った。
「いい食べっぷりだなぁ!」とエース。
「あの、エースさん、しばらくこちらでご厄介になってもいいですか? 次の港まで。少しですが、生活費も出します……」
「いいぜ。好きなだけいりゃあいい」
「ありがとうございます!」
キリエは、一時的に仲間のような存在になった。
賑やかな歓談の最中、ユウリが話しかける。
「キリエさん、うちの書庫見ます?」
「いいんですか?! 見ます見ます!」
ユウリに案内され、船内を歩いた。
「ここです」
その部屋は、しんと静まっていて、紙の匂いがする。
「この辺は、わたしの趣味の本棚で、児童文学が多いですね。向こうはミハール先生の本棚です。教材は右手、趣味は左手ですね。デュースの本はもっぱら医療室に置いてあるんですが、趣味の本はこっちにもいくらか置いてあります」
「宝の山ですね! 全部読みたい!」
「えへへ、うちにいる限りは好きなだけ読んでもらっていいんで!」
このまま正式に仲間入りしてくれないかな。なんて思うユウリ。
日々は、過ぎていく。
キリエは、海賊の文化史を書くために、スペード海賊団の成り立ちや乗り越えてきた障害などを学ぶのと並行して、どこの出版物が、どのような経路を辿り、どう受容されているかも書き記す。
文化史と本の受容史。どちらも、キリエが書き上げたいものである。
ユウリとデュースとミハールは、快く協力してくれた。
特に、ユウリは率先して様々なことを話してくれる。彼女の故郷に伝わる物語や、おまじないなどを教わった。
南の海の話は興味深く、疑問が尽きない。
キリエは、すっかり予定よりも長く乗船していた。
しかし、別れの時はやってくる。
「ご協力ありがとうございました。私は、この場所で船を降ります」
「寂しい~!」
ユウリが、涙目になってキリエの白衣を掴んだ。
その手を両手で包み込み、「凪の日も嵐の日も、君が楽しく生きられますように」と、祈るキリエ。
「キリエさん……」
「私の故郷に伝わるおまじないです。どうか、お元気で。またどこかで会いましょう」
「うん……うん…………!」
ユウリは頷き、笑顔を見せた。
エースたちにも別れの挨拶をし、キリエは歩いていく。
その姿が見えなくなるまで、海賊たちは、港で佇む。
美しい夕日が、別れてなお、彼女らを同じように照らしていた。
船長のポートガス・D・エースは、そこに倒れている人影を見る。
そして、その小舟に降りてみると、白衣を着た小柄な人物がいた。
「おい、大丈夫か?」
「……うー」
小さな呻き声。
「……舟ごと引き上げるぞ」
命に関わることだろう。エースの決断は早かった。
こうして、ひとりの珍客は招かれる。
◆◆◆
目覚めれば、そこは見知らぬ船の一室だった。
「私…………」
「気が付きましたか?!」
「あなたは……?」
自分が寝かされているすぐ横には、心配そうな顔の眼鏡の人。
「わたし、ユウリといいます。この船のクルーです」
「私は、キリエです。民俗学者をしています」
ゆっくりと起き上がり、自己紹介をした。
ベッドサイドに置かれた眼鏡をかけ、キリエは溜め息をつく。
「どうやら、私が遭難していたところを助けていただいたようで。ありがとうございます」
「いえいえ、無事でよかったです」
柔らかい笑顔。
いい人なんだな、とキリエは思う。
「あ、エース……キリエさんを見付けた船長に知らせて来ますね……!」
「はい」
その人にもお礼を言いたい。
少しして、船長がやって来た。
「よう、船長のエースだ。命拾いしたな」
「拾ってくださり、ありがとうございます」
深々と頭を下げるキリエ。
「堅苦しいな。あんまり気にすんなよ」
エースは、からっと笑う。
その後、皆で食事を共にした。キリエは、少し遠慮がちに食べ始める。
生きていることが嬉しい。料理を食べられるって素晴らしい。
ユウリに勧められるままに、食べ進める。
それから、キリエは、「ご馳走さまでした!」と元気に言った。
「いい食べっぷりだなぁ!」とエース。
「あの、エースさん、しばらくこちらでご厄介になってもいいですか? 次の港まで。少しですが、生活費も出します……」
「いいぜ。好きなだけいりゃあいい」
「ありがとうございます!」
キリエは、一時的に仲間のような存在になった。
賑やかな歓談の最中、ユウリが話しかける。
「キリエさん、うちの書庫見ます?」
「いいんですか?! 見ます見ます!」
ユウリに案内され、船内を歩いた。
「ここです」
その部屋は、しんと静まっていて、紙の匂いがする。
「この辺は、わたしの趣味の本棚で、児童文学が多いですね。向こうはミハール先生の本棚です。教材は右手、趣味は左手ですね。デュースの本はもっぱら医療室に置いてあるんですが、趣味の本はこっちにもいくらか置いてあります」
「宝の山ですね! 全部読みたい!」
「えへへ、うちにいる限りは好きなだけ読んでもらっていいんで!」
このまま正式に仲間入りしてくれないかな。なんて思うユウリ。
日々は、過ぎていく。
キリエは、海賊の文化史を書くために、スペード海賊団の成り立ちや乗り越えてきた障害などを学ぶのと並行して、どこの出版物が、どのような経路を辿り、どう受容されているかも書き記す。
文化史と本の受容史。どちらも、キリエが書き上げたいものである。
ユウリとデュースとミハールは、快く協力してくれた。
特に、ユウリは率先して様々なことを話してくれる。彼女の故郷に伝わる物語や、おまじないなどを教わった。
南の海の話は興味深く、疑問が尽きない。
キリエは、すっかり予定よりも長く乗船していた。
しかし、別れの時はやってくる。
「ご協力ありがとうございました。私は、この場所で船を降ります」
「寂しい~!」
ユウリが、涙目になってキリエの白衣を掴んだ。
その手を両手で包み込み、「凪の日も嵐の日も、君が楽しく生きられますように」と、祈るキリエ。
「キリエさん……」
「私の故郷に伝わるおまじないです。どうか、お元気で。またどこかで会いましょう」
「うん……うん…………!」
ユウリは頷き、笑顔を見せた。
エースたちにも別れの挨拶をし、キリエは歩いていく。
その姿が見えなくなるまで、海賊たちは、港で佇む。
美しい夕日が、別れてなお、彼女らを同じように照らしていた。