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お気に入りの白いシャツが、何故こんなに赤いのか?
一瞬、オレは、おまえのことを忘れた。
「洸太郎……」
声が掠れる。
腕の中のおまえは、動かない。大量の血を流したせいだ。
悪夢なら、早く目覚めてくれ。
そう願ったけど。目の前の現実は、変わらない。
「なぁ、置いてかないって言ったよな……?」
愛してるから、置いて行かないで。
嫌なんだ。もう、置いて行かれるのは。
涙で視界が滲む。
奪わないでくれ。オレから、何も奪わないでください。
祈っても、無慈悲な現実は変わらない。
諏訪洸太郎は、死んだ。
残された男は、葬式に出ることすら出来なかった。
脱け殻みたいになって、日々の大半を眠って過ごす。
悪夢のような現実から逃げても、悪夢に捕らわれた。あの日のことを、夢に見る。
なんでオレじゃないんだ? オレの方がいらないのに。
目覚めると、失せていたはずの自罰感情が湧き上がる。両親がいなくなるべきではなかった。おまえがいなくなるべきではなかった。どうして、自分から殺してくれないんだ。
ふと、スマートフォンを見ると、友人たちからたくさんメッセージが届いていた。
どれも読む気になれない。
布団から這い出て、自室を出る。階段を降りて、キッチンへ行く。
冷蔵庫を開けると、諏訪の缶ビールが入っていた。
「…………」
家の至るところに、おまえの痕跡がある。専用のマグカップ。ふたつ並んだ歯ブラシ。ヘアワックス。服。
男は、床に膝をついて泣いた。親を失った子供。恋人を喪った者。世界に取り残されたよう。
失って、喪って、最後に残るのは、どうしようもない自分だけ。
耐えられない。
男は、現実を受け入れるのを拒否した。
「なんだ、そこにいたのか」
恋人の幻覚と暮らし始める男。
誰もいない隣に向かって話をして、自分しかいないテーブルにふたり分の食事を用意した。
夜中。煙草に火を着けて、ベランダに出る。
「今日は、星が綺麗だな」
迷い込んだ宵闇には、月がない。
一瞬、オレは、おまえのことを忘れた。
「洸太郎……」
声が掠れる。
腕の中のおまえは、動かない。大量の血を流したせいだ。
悪夢なら、早く目覚めてくれ。
そう願ったけど。目の前の現実は、変わらない。
「なぁ、置いてかないって言ったよな……?」
愛してるから、置いて行かないで。
嫌なんだ。もう、置いて行かれるのは。
涙で視界が滲む。
奪わないでくれ。オレから、何も奪わないでください。
祈っても、無慈悲な現実は変わらない。
諏訪洸太郎は、死んだ。
残された男は、葬式に出ることすら出来なかった。
脱け殻みたいになって、日々の大半を眠って過ごす。
悪夢のような現実から逃げても、悪夢に捕らわれた。あの日のことを、夢に見る。
なんでオレじゃないんだ? オレの方がいらないのに。
目覚めると、失せていたはずの自罰感情が湧き上がる。両親がいなくなるべきではなかった。おまえがいなくなるべきではなかった。どうして、自分から殺してくれないんだ。
ふと、スマートフォンを見ると、友人たちからたくさんメッセージが届いていた。
どれも読む気になれない。
布団から這い出て、自室を出る。階段を降りて、キッチンへ行く。
冷蔵庫を開けると、諏訪の缶ビールが入っていた。
「…………」
家の至るところに、おまえの痕跡がある。専用のマグカップ。ふたつ並んだ歯ブラシ。ヘアワックス。服。
男は、床に膝をついて泣いた。親を失った子供。恋人を喪った者。世界に取り残されたよう。
失って、喪って、最後に残るのは、どうしようもない自分だけ。
耐えられない。
男は、現実を受け入れるのを拒否した。
「なんだ、そこにいたのか」
恋人の幻覚と暮らし始める男。
誰もいない隣に向かって話をして、自分しかいないテーブルにふたり分の食事を用意した。
夜中。煙草に火を着けて、ベランダに出る。
「今日は、星が綺麗だな」
迷い込んだ宵闇には、月がない。