創作企画「冥冥の澱」2
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死後があるなんて、聞いていなかったけれど。
十北斗は、澱みに当てられて自殺した。殺されたようなものだ。その後、いわゆる幽霊というものになったらしい。
半透明の体。空をふわふわと低空飛行出来る体。
謝りに行かないと、と思った。目指すのは、真咲黎命の居場所。
まず、自宅へ向かった。しかし、いない。
しばらく、庭で待つことにする。
そして、待ち人が帰って来た。
『黎命くん!』
「…………」
残酷な事実。真咲黎命に、幽霊は見えない。その声は聴こえない。
『黎命くん……!』
愛しい彼は、家屋に入って行ってしまった。
『そんな…………』
北斗は、ぽつんと取り残される。どうしたらいいか分からず、立ち尽くす。一晩、そうしていた。
翌朝。黎命が自宅から出て来たので、憑いて行く。
北斗は、澱み討伐へと赴く彼の背中を追った。
澱み討伐中、その様があまりにも痛々しくて、叫びたくなる。
『僕のせいだ…………』
愕然とした。こんなのは、違う。真咲黎命は、こんな人間ではなかったはずだ。
笑みを張り付けて、澱みを討伐する姿は、まるで人ではないみたいだった。装置のような、人の枠から外れた存在のような。そんな有り様。
「お疲れ様でしたぁ」
黎命が、相方にそう言った。
『黎命くん、やめて……やめてください……』
だって、これはきっと、自分のためにしていることだから。やめさせないといけない。
しかし、幽かな存在である北斗には、どうしようもない。なす術がない。謝罪さえ届かない。
愛する者を止められない自分を呪う。神がいるなら、それも呪う。
無力なひとりの霊は、それでも黎命の傍に居続けた。あわよくば、夢枕に立つことが出来ないだろうかと。
眠る黎命の元で、囁く。
『黎命くん、僕のことなんて、忘れてください。それで、幸せに生きてください』
毎晩、そう言い続けた。その言葉は、届かないけれど。
本当は、忘れてほしくない。だが、彼の幸せより優先すべきことなどないから。北斗は、嘘をつく。
死んだ後まで、僕は嘘つきだ。
自身を滑稽に思う北斗。
時は流れ、北斗の月命日がきた。
黎命は、十家の墓へ向かう。もちろん、北斗もである。
墓前にて、黎命は、何をするでもなく、無表情で立っていた。
何を考えているの? これからも、“あれ”を続けるの?
北斗は、彼に触れようとした。透ける手は、彼の顔をすり抜ける。
何も成せない自分に意識があるのは、きっと罰なんだと思った。愛しい人を置いて逝った罰。
なんとかすり抜けないように気を付けて、真咲黎命を抱き締める、十北斗。
『ごめんね』
その呟きは、誰にも聴こえることなく、消えていった。
十北斗は、澱みに当てられて自殺した。殺されたようなものだ。その後、いわゆる幽霊というものになったらしい。
半透明の体。空をふわふわと低空飛行出来る体。
謝りに行かないと、と思った。目指すのは、真咲黎命の居場所。
まず、自宅へ向かった。しかし、いない。
しばらく、庭で待つことにする。
そして、待ち人が帰って来た。
『黎命くん!』
「…………」
残酷な事実。真咲黎命に、幽霊は見えない。その声は聴こえない。
『黎命くん……!』
愛しい彼は、家屋に入って行ってしまった。
『そんな…………』
北斗は、ぽつんと取り残される。どうしたらいいか分からず、立ち尽くす。一晩、そうしていた。
翌朝。黎命が自宅から出て来たので、憑いて行く。
北斗は、澱み討伐へと赴く彼の背中を追った。
澱み討伐中、その様があまりにも痛々しくて、叫びたくなる。
『僕のせいだ…………』
愕然とした。こんなのは、違う。真咲黎命は、こんな人間ではなかったはずだ。
笑みを張り付けて、澱みを討伐する姿は、まるで人ではないみたいだった。装置のような、人の枠から外れた存在のような。そんな有り様。
「お疲れ様でしたぁ」
黎命が、相方にそう言った。
『黎命くん、やめて……やめてください……』
だって、これはきっと、自分のためにしていることだから。やめさせないといけない。
しかし、幽かな存在である北斗には、どうしようもない。なす術がない。謝罪さえ届かない。
愛する者を止められない自分を呪う。神がいるなら、それも呪う。
無力なひとりの霊は、それでも黎命の傍に居続けた。あわよくば、夢枕に立つことが出来ないだろうかと。
眠る黎命の元で、囁く。
『黎命くん、僕のことなんて、忘れてください。それで、幸せに生きてください』
毎晩、そう言い続けた。その言葉は、届かないけれど。
本当は、忘れてほしくない。だが、彼の幸せより優先すべきことなどないから。北斗は、嘘をつく。
死んだ後まで、僕は嘘つきだ。
自身を滑稽に思う北斗。
時は流れ、北斗の月命日がきた。
黎命は、十家の墓へ向かう。もちろん、北斗もである。
墓前にて、黎命は、何をするでもなく、無表情で立っていた。
何を考えているの? これからも、“あれ”を続けるの?
北斗は、彼に触れようとした。透ける手は、彼の顔をすり抜ける。
何も成せない自分に意識があるのは、きっと罰なんだと思った。愛しい人を置いて逝った罰。
なんとかすり抜けないように気を付けて、真咲黎命を抱き締める、十北斗。
『ごめんね』
その呟きは、誰にも聴こえることなく、消えていった。