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お題「明日、もし晴れたら」
夜、月が綺麗に見えたら、おまえのことを思い出す。
それを伝えたら、「ロマンチスト」だと言われた。笑わないのが、おまえらしい。
昔は、ペシミストだったんだけどな。
おまえのおかげで変われたと言えば、「おまえ自身の努力の結果だ」と言うんだろう。
人が好いから、オレみたいなのに粘着されるんだぜ?
お題「病室」
病室で目覚めた。
やっぱり、と思った。おまえがオレの恋人になるなんて、やっぱり夢だったんだな。
そう思ったのに、オレの手を握ってる奴が隣にいて。その光景には現実感がなかった。
なぁ、これが現実なんだとしたら、今から謝っても遅くはないか?
お題「目が覚めるまでに」
おまえが急に、夢から醒めるように、オレを嫌ったらどうしよう?
泣きわめく? すがり付く?
目の前で死んでやる。呪いをかけてやる。
そんな日が来るまで、オレはこの幸せを咀嚼し続けるんだ。
お題「つまらないことでも」
優しいおまえは、なんでも話してくれと言う。オレを助けたいと言う。
前より素直になったオレは、少しは自分の気持ちを話せる。
でも、本当にくだらないことを思うことがあるんだよ。
褒めてほしいとか。黙って側にいてほしいとか。どうか嫌わないでとか。置いてかないでとか。
つまらない人間なんだ、オレは。
お題「鐘の音」
鐘の音が聴こえる。
処刑の時間を知らせるものだ。
オレの罪は、なんだったっけ? 嘘つき以外の何かだろうけど。
ああ、そうか。おまえの全てを食らい尽くそうとしたことが罪なんだった。
処刑台に引っ立てられ、処刑人が、大きな斧を振り被る。
厄介者がいなくなるというのに、ここから見える景色の中のおまえが泣いていて、疑問に思った。
お題「太陽」
太陽は嫌いだ。容赦なく、オレの居場所をなくそうとするから。
そんな日陰者のオレが恋した相手は、月のように優しいおまえだった。
それでも、時々は眩しくて、消えてほしいと思う、身勝手なオレ。
ごめんなさい。恋して、ごめん。祟って、ごめん。呪って、ごめん。
別に、ゆるさなくてよかったんだよ。
お題「最初から決まってた」
いつか、“お別れ”がくること。分かってたはずだろ?
それが、今日だっただけ。
さよならは言わなかった。ただ、「愛してる」とだけ、嘘をついた。おまえにつく、最初で最後の嘘。
生涯、オレのことを引きずってくれなきゃ嫌だ。死に際に、オレを思い出してくれなきゃ嫌だ。
オレの祟る恋は、綺麗な巻く引きなんて迎えられるワケないんだよ。
お題「蝶よ花よ」
蝶よ花よと育てられて、18年。
あたしは、好きな人が出来た。
歳上で、カッコよくて、優しくて、面倒見がいい人。
あなたのことが、大好きです。
甘えちゃっていいですか? 頼ってもいいですか? たまには、困らせていいですか?
あたしは、あなたに救われたいけど。でも、そんな女は存在しないの。
お題「上手くいかなくたっていい」
いつも間違いばかり選んできた。
でも、“外”に出たことは、オレの選んだ最高の選択肢だったよ。
じゃなきゃ、おまえと出会えてない。仲良くなんてなれてない。
きっと、オレはこれからも間違えるんだろうけど。おまえに迷惑かけるんだろうけど。
おまえが、ゆるしてくれるなら、傍にいたい。
お題「終点」
列車が終点に着いた。だから、おまえとはここでお別れ。
「さよなら」
「待てよ!」
「オレは、ここまでだから。でも、おまえは、必ず次の駅に行ける」
降りようとするオレの服の袖を掴む指を、優しく取り払う。
「どうか、元気で」
「待ってくれ…………」
そんな辛そうにするな。おまえは、オレがいなくても大丈夫なんだから。
「また会えるよ」
オレは、初めておまえに嘘をついた。
お題「麦わら帽子」
夏の青空と、麦わら帽子に、白いワンピースの少女。よくある夏の風景。
夏の陽炎。ただの幻想。
あの女、結局は、オレと同じ存在。
ただ、アイス片手に夏空の下を歩くオレたちが、一体どういう風に見えるのかなんて、くだらないことを考えている。
あの女が、おまえの隣にいたら、恋人同士に見えてたのかな?
お題「君の奏でる音楽」
ボイスレコーダーから流れる君の声が、あんまりに美しくて。オレは、驚いた。
知らない会話。記憶にないやり取り。
何故、オレと君が、こんな話をしているのか? さっぱり分からないけど、とても大切なことだったような気がして、立ち竦んだ。
お題「心の健康」
俺がいらなくなったんだと思った。
おまえは、俺との思い出を消して、健康になったから。
ずっと、おまえの精神を蝕んでいたもの。行方不明になった両親のこと。戦争。兵士。そして、俺への恋心。
なあ、俺のこと忘れていても、おまえのことが好きだって言ったら、どうする?
紫煙を燻らせ、おまえの煙草の香りを思い出す。
お題「自転車に乗って」
どこへでも行ける気がしたんだけどな。
自転車に乗れるようになった少年は、結局は遠くへは行けなかった。
他人は怖い。信用出来ない。
ただ、両親が付き添ってくれる時だけ、彼は自転車に乗って出かけた。
「いつか、あなたにも他人の音楽を聴きたくなる時が来るかもしれない」
「いつか、おまえにも哲学を話したくなる相手が出来るかもしれない」
母と父は、穏やかに笑う。いつも、ふたりは優しくて、少年は、こんな日々がいつまでも続けばいいのにと思った。
お題「夜の海」
夜の海は、静かで、入る前から深海にでもいるかのよう。
それでも、オレは海へ足を進めた。
海水が胸まできたところで、おまえのことを思い出してしまい、泣いた。小さなガキみたいに泣いた。誰も聴いてないから、泣ける。
ほんの少し海を増やしながら、オレは進む。
とぷんと、全身が水の中に入って。ふと、見上げた先には、月の光があった。
月のように優しいおまえを傷付けるのは、これが最初で最後だから。
お題「誇らしさ」
息子は、とっても良い子なんです。
小学校はあまり好きじゃないみたいだし、お友達作りも得意じゃありませんけれど。
よく、夫の本棚から、哲学書を借りて読んでいます。
たまに、私にだけ歌を披露してくれます。
お義母さんとお義父さんにも優しくて、可愛いんです。
私たち家族の宝なんですよ。
素直な良い子です。
お題「いつまでも捨てられないもの」
捨てられずにいる、100円のライター。安っぽくて、その実安い。どこにでもありそうなもの。
おまえが、オレに初めてくれたもの。だから、特別で、大切なもの。
気持ち悪いほどの情念を抱えている。その癖、本心を誤魔化し続けているから、性質が悪い。
でも、この想いは、人ひとりを殺すのに充分な重さだから、煙に巻いている。
お題「鏡」
鏡を覗くと、たまに“あの女”がいる。
オレの分身になりかけていた女。
なあ、オレが女だったら、よかったのか?
おまえは、「そんなことない」って言うんだろうな。
オレを一番認められなかったのは、オレだ。昔かけられた呪いのせい。異性愛以外は異常だって。
歪な心を持っていると思った。化物なんだと思った。
でも、違う。オレは、ただの、おまえのことが好きな人間だ。
お題「空模様」
今日の天気は、雨。頭が痛い。
ここぞとばかりに、おまえにもたれかかってみる。
おまえは何も言わずに、オレの頭を撫でた。
甘やかされてる。と思う。
オレは身を捩って、おまえに抱き付いた。ソファーが少し軋んだ。
おまえが読んでいた本を置くのを見て、目を閉じる。
雨音が大きく聴こえた。
お題「さよならを言う前に」
出会ったってことは、いつか別れるってこと。
その時が突然やってきて、オレは悲しかった。
おまえには、「さよなら」を言わないといけない。
でも、その前にもう一度だけ、抱き締めてほしくて。オレは、「愛してる」と嘘をついたんだ。
さよなら、世界で一番特別な人。
お題「鳥のように」
鳥籠の中を出て、飛び立つように家を出た。
「は……はぁ…………」
人混みに、目眩がする。呼吸が難しいと感じる。
でも、行かなくてはならない。
高校へ行き、教室の自分の席に座った。
ちらちらとクラスメイトに見られる。保健室登校でないのが珍しいからだろう。
これからは、ひとりで立てるようにならないと。少年は、拳を握り、行方不明になった両親のために生きようと思った。
お題「裏返し」
好意が嫌悪に反転する病に罹患した。
でも、おまえへの気持ちには、特に変わりがなかったから。オレは、不思議に思った。
だけど、気付いたんだ。最初から、おまえのことが大好きで、大嫌いだったってことに。
相反するふたつの意見を抱え込むオレの性質は、消えちゃいなかったんだよ。
ああ、化物でよかったなぁ。
お題「海へ」
おまえの遺骨と、海に来た。
「静かだな…………」
夏の終わりを感じる。
おまえが生きてるうちに、海に来れたらよかったのに。
俺が、おまえにしてやれることは、もうない。
ただ、「海に行きたい」と言っていたから、ここへ来た。
「…………愛してたなぁ」
お題「やるせない気持ち」
遠くへ行ってしまった。俺との思い出のほとんどを置き去りに。
でも、おまえが元気なら、それでいい。それでいい、はずだった。
煙草を燻らせ、思い浮かべるのは、おまえの顔。俺が好きだと笑顔で言ってきた時の。
嫌になる。俺は、何ひとつ忘れられないのに。
お題「向かい合わせ」
図書室で向かい合って座り、読書している。
オレは、いつもの通り哲学書で、おまえも、いつもの通り推理小説だ。
決して答えに辿り着かないオレと、必ず真実に辿り着くおまえ。
お似合いだよな、全く。
オレはただ、おまえの隣にいられたらいい。
そうすれば、見える景色は同じだから。
お題「私の日記帳」
あたしには、日記帳がない。
オレには、日記帳がない。
あたしは、もういないから。
オレは、そんな習慣はないから。
そういう、自分の気持ちを出すのは、好きな自分であるべき。
そういう、自分の気持ちを正直に書くものには、抵抗がある。
だからね、おまえに覚えててもらうよ。オレのこと。
お題「雨に佇む」
雨の中にいる。ぼーっと突っ立っていたら、腕を引っ張られて、おまえの傘に入れられた。
「なにしてんだよ?」
「あー、いや……頭痛くて…………」
これは、本当。雨は嫌いだ。おまえも知ってる。
心配そうな顔をさせた。申し訳ない。
「ごめん。また、煙に巻こうとしたな」
一呼吸置いて。オレは口を開いた。
「あの日も、こんな雨だったなって」
喪失は、ずっと埋まらない。
お題「突然の君の訪問。」
最近、友達になった君は、とってもお人好しで、オレにも優しい。
そんな君が、突然家にやって来た。
「どうしたの?」
「いや、ちょっと雨に降られたからよ」
「なるほど。雨宿りね。オレしかいないから、テキトーにくつろいで」
「サンキュ」
よかった。雨の日に独りでいるのは、辛いから。
お題「言葉はいらない、ただ……」
おまえは、ずっとずっと喋り過ぎだったんだ。
でも、変わった。自然に、話したいことだけを話してくれるように。
多弁なのは、不器用なおまえなりの処世術だったけど、もういらないと言っていた。
「無理に話さなくても、心が通じてる気がするから」
笑顔で、そう言うおまえが可愛く見える。
俺は、ただ、おまえの頭を撫でた。
お題「香水」
煙草臭いと印象悪いとかなんとか上司に言われて、仕方なく香水を買った。禁煙という選択肢はない。
ウルトラマリンの香水瓶は、海の色をしてる。
シュッと、うなじに一吹きした。
「これ、意味あんのかな」
そう思いながらも、出勤する。
香水のおかげかはよく分からないけど、上司は何も言わなかった。
帰りに、待ち合わせた恋人と、オレの家に寄る。
「なんか、いい匂いすんな」
おまえがそう思うなら、それでいいや。
お題「不完全な僕」
ひとりでいるのが好きだった。
それなのに、今は、おまえがいなきゃ嫌だと思う。大切なものが欠けていると感じる。
この月明かりを失ったら、ダメになるんだろう。一歩も歩けないんだろう。
だから、どうか、嫌わないで。
夜、月が綺麗に見えたら、おまえのことを思い出す。
それを伝えたら、「ロマンチスト」だと言われた。笑わないのが、おまえらしい。
昔は、ペシミストだったんだけどな。
おまえのおかげで変われたと言えば、「おまえ自身の努力の結果だ」と言うんだろう。
人が好いから、オレみたいなのに粘着されるんだぜ?
お題「病室」
病室で目覚めた。
やっぱり、と思った。おまえがオレの恋人になるなんて、やっぱり夢だったんだな。
そう思ったのに、オレの手を握ってる奴が隣にいて。その光景には現実感がなかった。
なぁ、これが現実なんだとしたら、今から謝っても遅くはないか?
お題「目が覚めるまでに」
おまえが急に、夢から醒めるように、オレを嫌ったらどうしよう?
泣きわめく? すがり付く?
目の前で死んでやる。呪いをかけてやる。
そんな日が来るまで、オレはこの幸せを咀嚼し続けるんだ。
お題「つまらないことでも」
優しいおまえは、なんでも話してくれと言う。オレを助けたいと言う。
前より素直になったオレは、少しは自分の気持ちを話せる。
でも、本当にくだらないことを思うことがあるんだよ。
褒めてほしいとか。黙って側にいてほしいとか。どうか嫌わないでとか。置いてかないでとか。
つまらない人間なんだ、オレは。
お題「鐘の音」
鐘の音が聴こえる。
処刑の時間を知らせるものだ。
オレの罪は、なんだったっけ? 嘘つき以外の何かだろうけど。
ああ、そうか。おまえの全てを食らい尽くそうとしたことが罪なんだった。
処刑台に引っ立てられ、処刑人が、大きな斧を振り被る。
厄介者がいなくなるというのに、ここから見える景色の中のおまえが泣いていて、疑問に思った。
お題「太陽」
太陽は嫌いだ。容赦なく、オレの居場所をなくそうとするから。
そんな日陰者のオレが恋した相手は、月のように優しいおまえだった。
それでも、時々は眩しくて、消えてほしいと思う、身勝手なオレ。
ごめんなさい。恋して、ごめん。祟って、ごめん。呪って、ごめん。
別に、ゆるさなくてよかったんだよ。
お題「最初から決まってた」
いつか、“お別れ”がくること。分かってたはずだろ?
それが、今日だっただけ。
さよならは言わなかった。ただ、「愛してる」とだけ、嘘をついた。おまえにつく、最初で最後の嘘。
生涯、オレのことを引きずってくれなきゃ嫌だ。死に際に、オレを思い出してくれなきゃ嫌だ。
オレの祟る恋は、綺麗な巻く引きなんて迎えられるワケないんだよ。
お題「蝶よ花よ」
蝶よ花よと育てられて、18年。
あたしは、好きな人が出来た。
歳上で、カッコよくて、優しくて、面倒見がいい人。
あなたのことが、大好きです。
甘えちゃっていいですか? 頼ってもいいですか? たまには、困らせていいですか?
あたしは、あなたに救われたいけど。でも、そんな女は存在しないの。
お題「上手くいかなくたっていい」
いつも間違いばかり選んできた。
でも、“外”に出たことは、オレの選んだ最高の選択肢だったよ。
じゃなきゃ、おまえと出会えてない。仲良くなんてなれてない。
きっと、オレはこれからも間違えるんだろうけど。おまえに迷惑かけるんだろうけど。
おまえが、ゆるしてくれるなら、傍にいたい。
お題「終点」
列車が終点に着いた。だから、おまえとはここでお別れ。
「さよなら」
「待てよ!」
「オレは、ここまでだから。でも、おまえは、必ず次の駅に行ける」
降りようとするオレの服の袖を掴む指を、優しく取り払う。
「どうか、元気で」
「待ってくれ…………」
そんな辛そうにするな。おまえは、オレがいなくても大丈夫なんだから。
「また会えるよ」
オレは、初めておまえに嘘をついた。
お題「麦わら帽子」
夏の青空と、麦わら帽子に、白いワンピースの少女。よくある夏の風景。
夏の陽炎。ただの幻想。
あの女、結局は、オレと同じ存在。
ただ、アイス片手に夏空の下を歩くオレたちが、一体どういう風に見えるのかなんて、くだらないことを考えている。
あの女が、おまえの隣にいたら、恋人同士に見えてたのかな?
お題「君の奏でる音楽」
ボイスレコーダーから流れる君の声が、あんまりに美しくて。オレは、驚いた。
知らない会話。記憶にないやり取り。
何故、オレと君が、こんな話をしているのか? さっぱり分からないけど、とても大切なことだったような気がして、立ち竦んだ。
お題「心の健康」
俺がいらなくなったんだと思った。
おまえは、俺との思い出を消して、健康になったから。
ずっと、おまえの精神を蝕んでいたもの。行方不明になった両親のこと。戦争。兵士。そして、俺への恋心。
なあ、俺のこと忘れていても、おまえのことが好きだって言ったら、どうする?
紫煙を燻らせ、おまえの煙草の香りを思い出す。
お題「自転車に乗って」
どこへでも行ける気がしたんだけどな。
自転車に乗れるようになった少年は、結局は遠くへは行けなかった。
他人は怖い。信用出来ない。
ただ、両親が付き添ってくれる時だけ、彼は自転車に乗って出かけた。
「いつか、あなたにも他人の音楽を聴きたくなる時が来るかもしれない」
「いつか、おまえにも哲学を話したくなる相手が出来るかもしれない」
母と父は、穏やかに笑う。いつも、ふたりは優しくて、少年は、こんな日々がいつまでも続けばいいのにと思った。
お題「夜の海」
夜の海は、静かで、入る前から深海にでもいるかのよう。
それでも、オレは海へ足を進めた。
海水が胸まできたところで、おまえのことを思い出してしまい、泣いた。小さなガキみたいに泣いた。誰も聴いてないから、泣ける。
ほんの少し海を増やしながら、オレは進む。
とぷんと、全身が水の中に入って。ふと、見上げた先には、月の光があった。
月のように優しいおまえを傷付けるのは、これが最初で最後だから。
お題「誇らしさ」
息子は、とっても良い子なんです。
小学校はあまり好きじゃないみたいだし、お友達作りも得意じゃありませんけれど。
よく、夫の本棚から、哲学書を借りて読んでいます。
たまに、私にだけ歌を披露してくれます。
お義母さんとお義父さんにも優しくて、可愛いんです。
私たち家族の宝なんですよ。
素直な良い子です。
お題「いつまでも捨てられないもの」
捨てられずにいる、100円のライター。安っぽくて、その実安い。どこにでもありそうなもの。
おまえが、オレに初めてくれたもの。だから、特別で、大切なもの。
気持ち悪いほどの情念を抱えている。その癖、本心を誤魔化し続けているから、性質が悪い。
でも、この想いは、人ひとりを殺すのに充分な重さだから、煙に巻いている。
お題「鏡」
鏡を覗くと、たまに“あの女”がいる。
オレの分身になりかけていた女。
なあ、オレが女だったら、よかったのか?
おまえは、「そんなことない」って言うんだろうな。
オレを一番認められなかったのは、オレだ。昔かけられた呪いのせい。異性愛以外は異常だって。
歪な心を持っていると思った。化物なんだと思った。
でも、違う。オレは、ただの、おまえのことが好きな人間だ。
お題「空模様」
今日の天気は、雨。頭が痛い。
ここぞとばかりに、おまえにもたれかかってみる。
おまえは何も言わずに、オレの頭を撫でた。
甘やかされてる。と思う。
オレは身を捩って、おまえに抱き付いた。ソファーが少し軋んだ。
おまえが読んでいた本を置くのを見て、目を閉じる。
雨音が大きく聴こえた。
お題「さよならを言う前に」
出会ったってことは、いつか別れるってこと。
その時が突然やってきて、オレは悲しかった。
おまえには、「さよなら」を言わないといけない。
でも、その前にもう一度だけ、抱き締めてほしくて。オレは、「愛してる」と嘘をついたんだ。
さよなら、世界で一番特別な人。
お題「鳥のように」
鳥籠の中を出て、飛び立つように家を出た。
「は……はぁ…………」
人混みに、目眩がする。呼吸が難しいと感じる。
でも、行かなくてはならない。
高校へ行き、教室の自分の席に座った。
ちらちらとクラスメイトに見られる。保健室登校でないのが珍しいからだろう。
これからは、ひとりで立てるようにならないと。少年は、拳を握り、行方不明になった両親のために生きようと思った。
お題「裏返し」
好意が嫌悪に反転する病に罹患した。
でも、おまえへの気持ちには、特に変わりがなかったから。オレは、不思議に思った。
だけど、気付いたんだ。最初から、おまえのことが大好きで、大嫌いだったってことに。
相反するふたつの意見を抱え込むオレの性質は、消えちゃいなかったんだよ。
ああ、化物でよかったなぁ。
お題「海へ」
おまえの遺骨と、海に来た。
「静かだな…………」
夏の終わりを感じる。
おまえが生きてるうちに、海に来れたらよかったのに。
俺が、おまえにしてやれることは、もうない。
ただ、「海に行きたい」と言っていたから、ここへ来た。
「…………愛してたなぁ」
お題「やるせない気持ち」
遠くへ行ってしまった。俺との思い出のほとんどを置き去りに。
でも、おまえが元気なら、それでいい。それでいい、はずだった。
煙草を燻らせ、思い浮かべるのは、おまえの顔。俺が好きだと笑顔で言ってきた時の。
嫌になる。俺は、何ひとつ忘れられないのに。
お題「向かい合わせ」
図書室で向かい合って座り、読書している。
オレは、いつもの通り哲学書で、おまえも、いつもの通り推理小説だ。
決して答えに辿り着かないオレと、必ず真実に辿り着くおまえ。
お似合いだよな、全く。
オレはただ、おまえの隣にいられたらいい。
そうすれば、見える景色は同じだから。
お題「私の日記帳」
あたしには、日記帳がない。
オレには、日記帳がない。
あたしは、もういないから。
オレは、そんな習慣はないから。
そういう、自分の気持ちを出すのは、好きな自分であるべき。
そういう、自分の気持ちを正直に書くものには、抵抗がある。
だからね、おまえに覚えててもらうよ。オレのこと。
お題「雨に佇む」
雨の中にいる。ぼーっと突っ立っていたら、腕を引っ張られて、おまえの傘に入れられた。
「なにしてんだよ?」
「あー、いや……頭痛くて…………」
これは、本当。雨は嫌いだ。おまえも知ってる。
心配そうな顔をさせた。申し訳ない。
「ごめん。また、煙に巻こうとしたな」
一呼吸置いて。オレは口を開いた。
「あの日も、こんな雨だったなって」
喪失は、ずっと埋まらない。
お題「突然の君の訪問。」
最近、友達になった君は、とってもお人好しで、オレにも優しい。
そんな君が、突然家にやって来た。
「どうしたの?」
「いや、ちょっと雨に降られたからよ」
「なるほど。雨宿りね。オレしかいないから、テキトーにくつろいで」
「サンキュ」
よかった。雨の日に独りでいるのは、辛いから。
お題「言葉はいらない、ただ……」
おまえは、ずっとずっと喋り過ぎだったんだ。
でも、変わった。自然に、話したいことだけを話してくれるように。
多弁なのは、不器用なおまえなりの処世術だったけど、もういらないと言っていた。
「無理に話さなくても、心が通じてる気がするから」
笑顔で、そう言うおまえが可愛く見える。
俺は、ただ、おまえの頭を撫でた。
お題「香水」
煙草臭いと印象悪いとかなんとか上司に言われて、仕方なく香水を買った。禁煙という選択肢はない。
ウルトラマリンの香水瓶は、海の色をしてる。
シュッと、うなじに一吹きした。
「これ、意味あんのかな」
そう思いながらも、出勤する。
香水のおかげかはよく分からないけど、上司は何も言わなかった。
帰りに、待ち合わせた恋人と、オレの家に寄る。
「なんか、いい匂いすんな」
おまえがそう思うなら、それでいいや。
お題「不完全な僕」
ひとりでいるのが好きだった。
それなのに、今は、おまえがいなきゃ嫌だと思う。大切なものが欠けていると感じる。
この月明かりを失ったら、ダメになるんだろう。一歩も歩けないんだろう。
だから、どうか、嫌わないで。