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お題「窓越しに見えるのは」
小さな世界。それは、家の中。
少年は、自らそこに籠っていた。
そこには、家族がみんな揃っていて、安心する。哲学者の父と、音楽教師の母。優しい祖父と祖母。
穏やかな日々。不登校気味な少年に、家族はとくに厳しいことは言わなかった。
ある日、「いってきます」と言い、それぞれの職場へ向かった両親は、帰って来なかった。
ほどなくして、祖父母は親戚の元へ身を寄せることを提案する。しかし、彼は断った。
この世界が廃墟のようになるのが嫌で。ふたりが帰るところが無くなるみたいで。
独り、閉じた世界に残る。
ふと、窓の外を見ると、君がいた。
お題「日差し」
日の光が嫌いだ。
でも、おまえは月の光だったから、好きになれたんだと思う。
日の光は、容赦がなく、オレの影を濃くする。過去の傷も、底にある闇も、照らそうとする。無遠慮な光。
だけど、日に向かって咲くひまわりが、おまえみたいでさぁ。
オレは、日の下から逃げられずにいる。
お題「この道の先に」
歩いている。この道が辿り着くところは、崖。
そして、オレは、崖から飛び降りた。
最期に思い浮かべたのは、やっぱりおまえの顔で。我ながら、大好きだなぁ、と思った。
その大好きな人を、オレは悲しませるんだ。
ごめんな。ありがとう。さよなら。そんな、つまらない言葉だけ遺して。
どうか、オレを「救えなかった」と思わないでくれ。オレは、充分救われてたんだ。
お題「神様だけが知っている」
神様は死んだって。真理を抱えたまま、死んでしまった。
だから、哲学者たちは、それに辿り着こうとしてきた。
オレは、しがない哲学オタクである。真理に至る気はない。答えを出すのが苦手だから、哲学をこねくりまわしているに過ぎないんだ。
ただ、オレは、おまえが神様だったらよかったのにって、くだらないことを考えている。
お題「星空」
星が綺麗な夜。月は出ていない。
空を見上げて、オレは何かを忘れている気がした。
月のように優しい、何か。とても大切なこと。
美しい夜空なのに、どこか寂しい。
心に引っかかっているものが、ひとつ。それは、君のこと。全然親しくもない、君。
ねえ、オレたちって関係ないよね?
ベランダで吸う煙草の香りが一種類なのが、何故だか変な気がした。
お題「友だちの思い出」
真夏。照り付ける太陽から逃げるように、神社の境内の木陰へと向かった。
そこには、先客がいて。それが、君だった。
オレたちは、同じ小学校のクラスメイトだけど、話したことはなく。人見知りの激しいオレは、そもそも誰とも親しくはなく。
でも、君は面倒見のいい奴で、オレに自然に話しかけてくれた。
気安くするなよ。という拒絶を、珍しくオレはせずに、返事をした。
そういう、夏の記憶があれば、よかったな。
オレとおまえは、そんな綺麗な思い出を共有していない。でも、まあ、今も悪くはないよ。
お題「七夕」
「置いて行かないで」と書いた短冊を、くしゃりと握り、ポケットに突っ込んだ。
代わりに、「平穏無事」と書いたものを吊るす。
おまえはなんて書いたのかな、と、覗き見すると、「麻雀大勝ち」と書いてあったので笑った。
オレも勝ちたいよ。しょっちゅう馬鹿みたいな賭け麻雀をやるオレたちは、本当にアホだ。
ただ、もうこれ以上日常が壊れませんように。それだけ、オレは願った。
お題「街の明かり」
その家族が、本当に幸せかどうかなんて知らねぇけど。窓から覗いたその家族の表象は、幸せそうだった。
明かりを避けるように、影の中を歩く。
何事もなく、日常を送る数々の明かり。それが、オレには眩し過ぎた。
自宅に帰り、明かりをつける。
「ただいま」と言ってみても、返事はない。
きっと、いい加減慣れるべきなんだろう。
5-2-2=1
残されたのは、ひとりのオレ。
1+1=2
おまえがいなけりゃ、独りのオレ。
お題「私の当たり前」
慣れって怖いよな。おまえが隣にいるのが当たり前になっているなんて、とても怖いことだよ。
日常が破壊されたあの日に、もう何もよすがにしないと思ったはずなのに。
でも、オレはもう怖がるだけのガキじゃない。役割を果たして、最善を尽くそう。
あの日は、もう戻らないかもしれないけど、また新しく日常を作り直すんだ。
お題「目が覚めると」
寝ても覚めても、悪夢の中にいるような心地だった。
朝、目覚めると、ふたり分の空白がある。世界が、ひび割れ、欠けていた。
いつまで続くのか分からない空白。見たくない癖に、自らの手でエンドマークを押すことも出来ずにいる。
終わらせたくない。いつまでも結末には辿り着きたくない。
真実よりは、終わらない空白の方がマシなんだ。
でも、オレの世界は、閉じたままではいられなかった。
それは、優しい月明かりのせい。
お題「1件のLINE」
『さよなら』と、メッセージがひとつだけ残されていた。
恋人が、突然いなくなった。警察も動いたが、見付からない。煙のように消えてしまった。
煙に巻くのが得意だからって、そりゃねーだろ。
さよなら? 勝手なこと言いやがって。
ゆるせねぇ。
見付けたら、一発殴らせてもらう。
お題「これまでずっと」
これからも、あたしは静観し続ける。あの男と、その恋人のことを。
あたしは、ユーレイ。守護霊でもなんでもないけど。
あの男は、ずっとずっと素直じゃない。でも、段々変わってきた気がする。
自罰感情と自己嫌悪で、がんじがらめだったのに。「自分のことが大好き」を真にした日から、変化の兆しがあった。
よかったね。ざまあみろ。
お題「優越感、劣等感」
昔、自分に貼ったレッテルは、「劣等生」。
なんにも出来なかったから。
結局、色々出来るようになった今でも、優越感は得られない。
それでも、自分のことは好きだし、否定はしないが。
だけど、月明かりがなかったら、今頃どうしてたかな?
首吊り縄が、頭に浮かんだ。
お題「手を取り合って」
手を繋ぎ、夜の海にいる。
ザブザブと、深くへと入って行く。
ふたりとも、けらけら笑っている。
そして、全身が海に沈んだ。
朝、目を覚ます。バカみたいな夢を見ていた。
おまえが、オレと死んでくれるはずないのに。
お題「終わりにしよう」
「別れよう、オレたち」
それを聞いた時、いつものマイナス思考からくる一時的なものだと思った。
でも、違った。
「オレ、もう一緒にいられないんだ」
ドクターストップ。おまえは、そう言った。もう、兵士でいられない、と。
「記憶、消した方がいいだろうって」
それは、俺との繋がりを断つに等しい。
「だから、さよなら」
無理に笑おうとしたのか、下手くそな笑顔で俺に告げた。
お題「空を見上げて心に浮かんだこと」
眩しい太陽が嫌いだ。途方もない青空が嫌いだ。
日の光は、オレの居場所を奪っていく。
オレが死んだ後も、世界は続いていくのかな?
オレが死んだら、何もかも消えてしまえばいいのに。
小学生の頃のオレは、そんなことばかり考えていた。
お題「遠い日の記憶」
昔、恋人が死んだ。死ぬ気があったのかどうかは、分からない。
色々あって、遺骨は俺が海に持って行った。
たまに、その海を訪れる。
その時だけは、アイツの愛煙していた、ほんのりバニラの香りがする煙草を吸った。
遺骨を抱えて走るなんて、若いから出来たことだろう。あの日のことは、今でもよく覚えている。
ただ美しいだけじゃない、泥臭い思い出だ。
お題「私だけ」
あたしだけ置いてきぼりなんて、酷い。
あの女の夢を見た。
おまえは、納得して消えたワケだから、これはオレの妄想みたいなもん。
あの女に嫉まれる夢。でも、あの女=オレなんだよな。
化粧を落としてみろよ。オレと同じ顔だろ?
オレもおまえも、アイツが好きで、どうしようもない。
さあ、もう一度、アイツの隣に立とう。
お題「視線の先には」
いつも、目で追ってる。
あ、またなんか考え事してるなーとか。今、頭の中で会議してんのかなーとか。
煙草の持ち方が、ガラ悪りぃなーとか。哲学書を壊れ物みたいに触るなーとか。
そういう一挙手一投足が気になる。
友達だから? 仲間だから? 恋人だから?
「愛してる」と言っても、同じことを返さないおまえは、正直者だ。
お題「私の名前」
あたしには、名前がない。
正確に言うと、あたしたちは分離しなかったから、名前は同じなのかも。
認めてるもんね? あたしのこと。
自分が創り出した女。異性愛規範と年功序列と性質に最適化した架空の存在。
名前を付けたら、終わりだったよ。
あたしたちは、分かたれて、心はバラバラ。感情は、ぐちゃぐちゃ。で、入院。
よかったね。あたしに名前を付けなくて。
お題「今一番欲しいもの」
欲しいものは、全部。なんだけど、“今、欲しいもの”は……アイスかな……。
オレは、深夜にコンビニへ向かう。
暑苦しい外から、涼しい店内へ入り、アイスクリームの売り場へ行った。
オレの家族は、年中アイスを食べるから。かつては冷凍庫にアイスが常備されていた。
カップ入りのバニラアイスを手に取り、レジへ。
会計を済ませ、足早に帰宅する。
そして、メッセージが届いていることに気付いた。
『起きてるか?』
恋人からだ。
『アイス食ってる』
『何味?』
『バニラ』
『おまえ、好きだな、バニラ』
オレの煙草は、ほんのりバニラの香りがするものだから、そんなことを言ったのだろう。
『うるせー』
アイスをひと掬いしながら、返信した。
今、欲しいものは、もうひとり分の煙草の香り。
お題「もしもタイムマシンがあったなら」
中学生の頃の自分に、言いたいことがある。
おまえが、歯牙にもかけないクラスメイトの中に、将来恋人になる奴がいるって。
オレたちに、中学生の頃の思い出なんかない。
過去は変わらないけれど、これからは一緒に歩いて行ける。
それがいい。
お題「花咲いて」
向日葵が好きだ。なんだか、おまえみたいで。
太陽に向かって真っ直ぐに伸びる様が、美しい。
オレは、太陽から逃げ回ってるから、羨ましい。
夏の終わりに、枯れた向日葵畑を見ながら、そんなことを思った。
「おまえって、向日葵畑に消えそうだよな」
隣の恋人にそう言われて、オレは苦笑する。
お題「友情」
恋をしても、別にオレたちの友情は壊れなかった。
片想いをしてるオレをゆるしてくれた、おまえ。
ありがとう。本当に。
オレの恋が、友人に泥を塗るんじゃないかって、心配してたんだ。
オレのちっぽけで、ドロドロしてて、とても重い感情なんかに、おまえは汚せない。
お題「鳥かご」
永遠に、ゆりかごの中にいられたらよかった。
でも、他人は言う。そこは、鳥かごだよ、と。
そこから飛び立たないといけない、と。
勝手なこと言いやがって。外の世界でなんて、生きていけるワケないのに。
しかし、ある日、ゆりかごは、ぐちゃぐちゃに破壊された。
オレは、飛び立ったんじゃない。ただ、追い出されて地を這うしかなかったんだ。
お題「誰かのためになるならば」
人のために動けるおまえには、分かんねぇよ。
前は、少しそう思ってた。
オレのためにも行動してくれるけど、それはオレが特別だからじゃない。
おまえは、優しいから。
まあ、おまえは、それがいいよ。
お題「神様が舞い降りてきて、こう言った。」
世界中が全部嘘だと、神様が言った。
「知ってた」と、オレは返事をする。
だってさ、あんな月のように優しい奴が、オレの恋人のはずがないし。
さぁ、早く夢から醒ましてくれ。
どうせ、ほんとのオレは、病院のベッドの上なんだろ?
お題「お祭り」
脳内が、お祭り騒ぎ。部屋の中は、血塗れ。
オレが、おまえを殺したからだ。
これでもう、誰にも盗られないで済む。
熱が失われていく体を抱いて、「愛してる」と囁いた。
おまえとは、もう会話出来ないけど、それでいい。どうせ、オレはろくでもないことしか言えないんだから。
お題「嵐が来ようとも」
嵐みたいに激しく、炎みたいに身を焦がすのが、あの男の恋だった。
凪の世界は、とっくの昔に壊されている。
「好きだよ」「祟ってやる」
どちらも、アイツに言われたこと。どちらも、アイツの真実。
でも、大丈夫なんだ。例え、おまえの想いが嵐でも、そういうおまえを愛したから。
お題「澄んだ瞳」
純真無垢だった幼い子供は、自分の世界が広がるに連れて、その途方のなさに嫌気が差してきた。
輝きは失われ、外を拒む。
「心配すんな」
かつての自分に声をかけた。
「何年かしたら、変わるから」
男は、真っ直ぐな瞳で、少年を見つめる。
お題「だから、一人でいたい。」
昔、叔母に呪いをかけられた。
異性愛規範と、精神障害者差別。ふたつの呪い。
成人した今でも、それに苦しめられることがある。
自分以外の者と関わるのは、博打みたいなものだ。だから、孤立じゃなくて、孤高の存在として生きてきたんだよ。
時折、ひとりで物思いに耽るのは、昔からの癖。やめろって言われてるけど、もう少し待ってて。
小さな世界。それは、家の中。
少年は、自らそこに籠っていた。
そこには、家族がみんな揃っていて、安心する。哲学者の父と、音楽教師の母。優しい祖父と祖母。
穏やかな日々。不登校気味な少年に、家族はとくに厳しいことは言わなかった。
ある日、「いってきます」と言い、それぞれの職場へ向かった両親は、帰って来なかった。
ほどなくして、祖父母は親戚の元へ身を寄せることを提案する。しかし、彼は断った。
この世界が廃墟のようになるのが嫌で。ふたりが帰るところが無くなるみたいで。
独り、閉じた世界に残る。
ふと、窓の外を見ると、君がいた。
お題「日差し」
日の光が嫌いだ。
でも、おまえは月の光だったから、好きになれたんだと思う。
日の光は、容赦がなく、オレの影を濃くする。過去の傷も、底にある闇も、照らそうとする。無遠慮な光。
だけど、日に向かって咲くひまわりが、おまえみたいでさぁ。
オレは、日の下から逃げられずにいる。
お題「この道の先に」
歩いている。この道が辿り着くところは、崖。
そして、オレは、崖から飛び降りた。
最期に思い浮かべたのは、やっぱりおまえの顔で。我ながら、大好きだなぁ、と思った。
その大好きな人を、オレは悲しませるんだ。
ごめんな。ありがとう。さよなら。そんな、つまらない言葉だけ遺して。
どうか、オレを「救えなかった」と思わないでくれ。オレは、充分救われてたんだ。
お題「神様だけが知っている」
神様は死んだって。真理を抱えたまま、死んでしまった。
だから、哲学者たちは、それに辿り着こうとしてきた。
オレは、しがない哲学オタクである。真理に至る気はない。答えを出すのが苦手だから、哲学をこねくりまわしているに過ぎないんだ。
ただ、オレは、おまえが神様だったらよかったのにって、くだらないことを考えている。
お題「星空」
星が綺麗な夜。月は出ていない。
空を見上げて、オレは何かを忘れている気がした。
月のように優しい、何か。とても大切なこと。
美しい夜空なのに、どこか寂しい。
心に引っかかっているものが、ひとつ。それは、君のこと。全然親しくもない、君。
ねえ、オレたちって関係ないよね?
ベランダで吸う煙草の香りが一種類なのが、何故だか変な気がした。
お題「友だちの思い出」
真夏。照り付ける太陽から逃げるように、神社の境内の木陰へと向かった。
そこには、先客がいて。それが、君だった。
オレたちは、同じ小学校のクラスメイトだけど、話したことはなく。人見知りの激しいオレは、そもそも誰とも親しくはなく。
でも、君は面倒見のいい奴で、オレに自然に話しかけてくれた。
気安くするなよ。という拒絶を、珍しくオレはせずに、返事をした。
そういう、夏の記憶があれば、よかったな。
オレとおまえは、そんな綺麗な思い出を共有していない。でも、まあ、今も悪くはないよ。
お題「七夕」
「置いて行かないで」と書いた短冊を、くしゃりと握り、ポケットに突っ込んだ。
代わりに、「平穏無事」と書いたものを吊るす。
おまえはなんて書いたのかな、と、覗き見すると、「麻雀大勝ち」と書いてあったので笑った。
オレも勝ちたいよ。しょっちゅう馬鹿みたいな賭け麻雀をやるオレたちは、本当にアホだ。
ただ、もうこれ以上日常が壊れませんように。それだけ、オレは願った。
お題「街の明かり」
その家族が、本当に幸せかどうかなんて知らねぇけど。窓から覗いたその家族の表象は、幸せそうだった。
明かりを避けるように、影の中を歩く。
何事もなく、日常を送る数々の明かり。それが、オレには眩し過ぎた。
自宅に帰り、明かりをつける。
「ただいま」と言ってみても、返事はない。
きっと、いい加減慣れるべきなんだろう。
5-2-2=1
残されたのは、ひとりのオレ。
1+1=2
おまえがいなけりゃ、独りのオレ。
お題「私の当たり前」
慣れって怖いよな。おまえが隣にいるのが当たり前になっているなんて、とても怖いことだよ。
日常が破壊されたあの日に、もう何もよすがにしないと思ったはずなのに。
でも、オレはもう怖がるだけのガキじゃない。役割を果たして、最善を尽くそう。
あの日は、もう戻らないかもしれないけど、また新しく日常を作り直すんだ。
お題「目が覚めると」
寝ても覚めても、悪夢の中にいるような心地だった。
朝、目覚めると、ふたり分の空白がある。世界が、ひび割れ、欠けていた。
いつまで続くのか分からない空白。見たくない癖に、自らの手でエンドマークを押すことも出来ずにいる。
終わらせたくない。いつまでも結末には辿り着きたくない。
真実よりは、終わらない空白の方がマシなんだ。
でも、オレの世界は、閉じたままではいられなかった。
それは、優しい月明かりのせい。
お題「1件のLINE」
『さよなら』と、メッセージがひとつだけ残されていた。
恋人が、突然いなくなった。警察も動いたが、見付からない。煙のように消えてしまった。
煙に巻くのが得意だからって、そりゃねーだろ。
さよなら? 勝手なこと言いやがって。
ゆるせねぇ。
見付けたら、一発殴らせてもらう。
お題「これまでずっと」
これからも、あたしは静観し続ける。あの男と、その恋人のことを。
あたしは、ユーレイ。守護霊でもなんでもないけど。
あの男は、ずっとずっと素直じゃない。でも、段々変わってきた気がする。
自罰感情と自己嫌悪で、がんじがらめだったのに。「自分のことが大好き」を真にした日から、変化の兆しがあった。
よかったね。ざまあみろ。
お題「優越感、劣等感」
昔、自分に貼ったレッテルは、「劣等生」。
なんにも出来なかったから。
結局、色々出来るようになった今でも、優越感は得られない。
それでも、自分のことは好きだし、否定はしないが。
だけど、月明かりがなかったら、今頃どうしてたかな?
首吊り縄が、頭に浮かんだ。
お題「手を取り合って」
手を繋ぎ、夜の海にいる。
ザブザブと、深くへと入って行く。
ふたりとも、けらけら笑っている。
そして、全身が海に沈んだ。
朝、目を覚ます。バカみたいな夢を見ていた。
おまえが、オレと死んでくれるはずないのに。
お題「終わりにしよう」
「別れよう、オレたち」
それを聞いた時、いつものマイナス思考からくる一時的なものだと思った。
でも、違った。
「オレ、もう一緒にいられないんだ」
ドクターストップ。おまえは、そう言った。もう、兵士でいられない、と。
「記憶、消した方がいいだろうって」
それは、俺との繋がりを断つに等しい。
「だから、さよなら」
無理に笑おうとしたのか、下手くそな笑顔で俺に告げた。
お題「空を見上げて心に浮かんだこと」
眩しい太陽が嫌いだ。途方もない青空が嫌いだ。
日の光は、オレの居場所を奪っていく。
オレが死んだ後も、世界は続いていくのかな?
オレが死んだら、何もかも消えてしまえばいいのに。
小学生の頃のオレは、そんなことばかり考えていた。
お題「遠い日の記憶」
昔、恋人が死んだ。死ぬ気があったのかどうかは、分からない。
色々あって、遺骨は俺が海に持って行った。
たまに、その海を訪れる。
その時だけは、アイツの愛煙していた、ほんのりバニラの香りがする煙草を吸った。
遺骨を抱えて走るなんて、若いから出来たことだろう。あの日のことは、今でもよく覚えている。
ただ美しいだけじゃない、泥臭い思い出だ。
お題「私だけ」
あたしだけ置いてきぼりなんて、酷い。
あの女の夢を見た。
おまえは、納得して消えたワケだから、これはオレの妄想みたいなもん。
あの女に嫉まれる夢。でも、あの女=オレなんだよな。
化粧を落としてみろよ。オレと同じ顔だろ?
オレもおまえも、アイツが好きで、どうしようもない。
さあ、もう一度、アイツの隣に立とう。
お題「視線の先には」
いつも、目で追ってる。
あ、またなんか考え事してるなーとか。今、頭の中で会議してんのかなーとか。
煙草の持ち方が、ガラ悪りぃなーとか。哲学書を壊れ物みたいに触るなーとか。
そういう一挙手一投足が気になる。
友達だから? 仲間だから? 恋人だから?
「愛してる」と言っても、同じことを返さないおまえは、正直者だ。
お題「私の名前」
あたしには、名前がない。
正確に言うと、あたしたちは分離しなかったから、名前は同じなのかも。
認めてるもんね? あたしのこと。
自分が創り出した女。異性愛規範と年功序列と性質に最適化した架空の存在。
名前を付けたら、終わりだったよ。
あたしたちは、分かたれて、心はバラバラ。感情は、ぐちゃぐちゃ。で、入院。
よかったね。あたしに名前を付けなくて。
お題「今一番欲しいもの」
欲しいものは、全部。なんだけど、“今、欲しいもの”は……アイスかな……。
オレは、深夜にコンビニへ向かう。
暑苦しい外から、涼しい店内へ入り、アイスクリームの売り場へ行った。
オレの家族は、年中アイスを食べるから。かつては冷凍庫にアイスが常備されていた。
カップ入りのバニラアイスを手に取り、レジへ。
会計を済ませ、足早に帰宅する。
そして、メッセージが届いていることに気付いた。
『起きてるか?』
恋人からだ。
『アイス食ってる』
『何味?』
『バニラ』
『おまえ、好きだな、バニラ』
オレの煙草は、ほんのりバニラの香りがするものだから、そんなことを言ったのだろう。
『うるせー』
アイスをひと掬いしながら、返信した。
今、欲しいものは、もうひとり分の煙草の香り。
お題「もしもタイムマシンがあったなら」
中学生の頃の自分に、言いたいことがある。
おまえが、歯牙にもかけないクラスメイトの中に、将来恋人になる奴がいるって。
オレたちに、中学生の頃の思い出なんかない。
過去は変わらないけれど、これからは一緒に歩いて行ける。
それがいい。
お題「花咲いて」
向日葵が好きだ。なんだか、おまえみたいで。
太陽に向かって真っ直ぐに伸びる様が、美しい。
オレは、太陽から逃げ回ってるから、羨ましい。
夏の終わりに、枯れた向日葵畑を見ながら、そんなことを思った。
「おまえって、向日葵畑に消えそうだよな」
隣の恋人にそう言われて、オレは苦笑する。
お題「友情」
恋をしても、別にオレたちの友情は壊れなかった。
片想いをしてるオレをゆるしてくれた、おまえ。
ありがとう。本当に。
オレの恋が、友人に泥を塗るんじゃないかって、心配してたんだ。
オレのちっぽけで、ドロドロしてて、とても重い感情なんかに、おまえは汚せない。
お題「鳥かご」
永遠に、ゆりかごの中にいられたらよかった。
でも、他人は言う。そこは、鳥かごだよ、と。
そこから飛び立たないといけない、と。
勝手なこと言いやがって。外の世界でなんて、生きていけるワケないのに。
しかし、ある日、ゆりかごは、ぐちゃぐちゃに破壊された。
オレは、飛び立ったんじゃない。ただ、追い出されて地を這うしかなかったんだ。
お題「誰かのためになるならば」
人のために動けるおまえには、分かんねぇよ。
前は、少しそう思ってた。
オレのためにも行動してくれるけど、それはオレが特別だからじゃない。
おまえは、優しいから。
まあ、おまえは、それがいいよ。
お題「神様が舞い降りてきて、こう言った。」
世界中が全部嘘だと、神様が言った。
「知ってた」と、オレは返事をする。
だってさ、あんな月のように優しい奴が、オレの恋人のはずがないし。
さぁ、早く夢から醒ましてくれ。
どうせ、ほんとのオレは、病院のベッドの上なんだろ?
お題「お祭り」
脳内が、お祭り騒ぎ。部屋の中は、血塗れ。
オレが、おまえを殺したからだ。
これでもう、誰にも盗られないで済む。
熱が失われていく体を抱いて、「愛してる」と囁いた。
おまえとは、もう会話出来ないけど、それでいい。どうせ、オレはろくでもないことしか言えないんだから。
お題「嵐が来ようとも」
嵐みたいに激しく、炎みたいに身を焦がすのが、あの男の恋だった。
凪の世界は、とっくの昔に壊されている。
「好きだよ」「祟ってやる」
どちらも、アイツに言われたこと。どちらも、アイツの真実。
でも、大丈夫なんだ。例え、おまえの想いが嵐でも、そういうおまえを愛したから。
お題「澄んだ瞳」
純真無垢だった幼い子供は、自分の世界が広がるに連れて、その途方のなさに嫌気が差してきた。
輝きは失われ、外を拒む。
「心配すんな」
かつての自分に声をかけた。
「何年かしたら、変わるから」
男は、真っ直ぐな瞳で、少年を見つめる。
お題「だから、一人でいたい。」
昔、叔母に呪いをかけられた。
異性愛規範と、精神障害者差別。ふたつの呪い。
成人した今でも、それに苦しめられることがある。
自分以外の者と関わるのは、博打みたいなものだ。だから、孤立じゃなくて、孤高の存在として生きてきたんだよ。
時折、ひとりで物思いに耽るのは、昔からの癖。やめろって言われてるけど、もう少し待ってて。