うちよそ
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急に雨が降ってきた。
オレは、近くの喫煙所に駆け込む。透明な箱みたいなその中には、ひとりの男がいた。
「こんにちは。後から失礼しまーっす」
190㎝あるオレと、そんなに変わらない身長の人だ。煙草を吸うのが様になってる。
「……こんにちは。吸う人じゃない?」
「正解! 雨から逃げて来た」
「やっぱり。香水の匂いしかしないから」
ウルトラマリンの香水は、オレのお気に入りである。
「オレ、七海夏生! 生粋の夏男でーす!」
梅雨が明けたら、夏が来る。オレの大好きな季節。
「ナナって呼んで」
「ナナさんは、お仕事中?」
「仕事帰りだよ。ちょっと休憩してたら雨降ってきて。帰り損ねちゃった」
「オレは、今日休み。だから、ナンパしてた」
ナナさんは、わずかに首を傾げて「ナンパ?」と訊く。
「オレの趣味。今日は女の子ひとりとお茶して、お兄さんひとりとボーリング行った!」
「性別問わずなんだ」
「うん。パンセクだしねー」
「へぇ」
性指向のことは、特に隠してない。職場の美容室でも、プライベートでも。
「オレのことはナンパしないの?」
ぽつりと、ナナさんが言う。
「えっ? いいの?」
「いつも了解取ってるの?」
「取ってなーい。ナンパするするー! ナナさん、夕食一緒にどう?」
「いいよ」
「やったー!」
しばらく、お互いについて話したり、オレに今日あったことの詳細を伝えたりした。
そうしているうちに、雨は止んだ。
◆◆◆
ふたりで、和食を食べに来た。店内には、まだ人が少ない。
「オレ、日替わり定食にしようかなー」
「オレも」
「あとね、ここは和菓子出してくれるんだよ。この、紫陽花の練り切りにしようかな。和菓子の日だしねー」
「そうなの?」
「うん。6月16日は、和菓子の日だよ」
ニコニコしながら答える。それに、ナナさんと出会えた日として、これからは覚えておこう。
「意外と博識だろ?」
「うん」
「肯定されたー!」と、大袈裟に片手で頭を押さえる。
まあ、チャラく見えるだろうし? 別にいいんだけどね。
料理と和菓子を注文し、しばし待つ。
「ねぇ、ナナさんは、なんでナンパされてくれたの?」
「初対面で、あんなに距離詰めて来る人、珍しいから」
「そっかー」
珍獣だと思われてる?
「身長高いと、なんか怖がられるよねー?」
「うん。きみは、オレより少し高いのに、ナンパ成功するんだねぇ」
「結構苦労したこともあるよ」
見た目とか、話し方とか、かなり気を付けてる。黙って立ってるだけで怖がられるもんね。
届いた定食の煮魚を食べながら、外を覗く。
雨こそ降っていないものの、曇り空のままで。だけど、そんなことは関係なく、オレは晴れやかな気持ちだ。
「ナナさんと会えて、よかった!」
ふたりで、紫陽花の練り切りを食べた後に、連絡先を交換した。
「今度は、どっかで遊ぼうね!」
ナナさんは、くすりと笑って、頷く。
海とか一緒に行ってくれないかなー?
水色の髪に、よく映えると思うんだけど。
オレは、近くの喫煙所に駆け込む。透明な箱みたいなその中には、ひとりの男がいた。
「こんにちは。後から失礼しまーっす」
190㎝あるオレと、そんなに変わらない身長の人だ。煙草を吸うのが様になってる。
「……こんにちは。吸う人じゃない?」
「正解! 雨から逃げて来た」
「やっぱり。香水の匂いしかしないから」
ウルトラマリンの香水は、オレのお気に入りである。
「オレ、七海夏生! 生粋の夏男でーす!」
梅雨が明けたら、夏が来る。オレの大好きな季節。
「ナナって呼んで」
「ナナさんは、お仕事中?」
「仕事帰りだよ。ちょっと休憩してたら雨降ってきて。帰り損ねちゃった」
「オレは、今日休み。だから、ナンパしてた」
ナナさんは、わずかに首を傾げて「ナンパ?」と訊く。
「オレの趣味。今日は女の子ひとりとお茶して、お兄さんひとりとボーリング行った!」
「性別問わずなんだ」
「うん。パンセクだしねー」
「へぇ」
性指向のことは、特に隠してない。職場の美容室でも、プライベートでも。
「オレのことはナンパしないの?」
ぽつりと、ナナさんが言う。
「えっ? いいの?」
「いつも了解取ってるの?」
「取ってなーい。ナンパするするー! ナナさん、夕食一緒にどう?」
「いいよ」
「やったー!」
しばらく、お互いについて話したり、オレに今日あったことの詳細を伝えたりした。
そうしているうちに、雨は止んだ。
◆◆◆
ふたりで、和食を食べに来た。店内には、まだ人が少ない。
「オレ、日替わり定食にしようかなー」
「オレも」
「あとね、ここは和菓子出してくれるんだよ。この、紫陽花の練り切りにしようかな。和菓子の日だしねー」
「そうなの?」
「うん。6月16日は、和菓子の日だよ」
ニコニコしながら答える。それに、ナナさんと出会えた日として、これからは覚えておこう。
「意外と博識だろ?」
「うん」
「肯定されたー!」と、大袈裟に片手で頭を押さえる。
まあ、チャラく見えるだろうし? 別にいいんだけどね。
料理と和菓子を注文し、しばし待つ。
「ねぇ、ナナさんは、なんでナンパされてくれたの?」
「初対面で、あんなに距離詰めて来る人、珍しいから」
「そっかー」
珍獣だと思われてる?
「身長高いと、なんか怖がられるよねー?」
「うん。きみは、オレより少し高いのに、ナンパ成功するんだねぇ」
「結構苦労したこともあるよ」
見た目とか、話し方とか、かなり気を付けてる。黙って立ってるだけで怖がられるもんね。
届いた定食の煮魚を食べながら、外を覗く。
雨こそ降っていないものの、曇り空のままで。だけど、そんなことは関係なく、オレは晴れやかな気持ちだ。
「ナナさんと会えて、よかった!」
ふたりで、紫陽花の練り切りを食べた後に、連絡先を交換した。
「今度は、どっかで遊ぼうね!」
ナナさんは、くすりと笑って、頷く。
海とか一緒に行ってくれないかなー?
水色の髪に、よく映えると思うんだけど。