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お題「梅雨」
「雨は嫌いなんだ。頭痛がするから」
生前、おまえは、そう言っていた。
梅雨入りしたここにおまえがいたら、さぞ苦い顔になったことだろう。
いつもなら、煙草に火を着けて供えるが、この時期はしない。代わりに、缶ビールを一本供えた。
空が泣いてくれているから、俺は泣かない。
お題「正直」
オレの名前って、正直者っぽいよな。
全然そんなことないって、おまえは骨身に染みてるだろうけど。
親の祈りを、オレは踏みにじってるのかな?
おまえは、オレの光だから、ぴったりな名前だ。
ただ、オレは自分の“好き”しか口に出来なくて。オレの“好き”は、“呪言”だから、ずっとずっと、おまえに迷惑かけてる。
だけど、おまえといれば、オレは…………。
救われてるよ。本当に。
お題「失恋」
一度、恋を失ったことがある。
おまえが、記憶を封印されてしまった時。おまえは、俺との思い出をほとんど失い、しつこく言い続けていた“好き”も失くした。
おまえの心を守るため。病んだ精神を治すため。そうやって、聞き分けのいい振りをするしかなかった。俺には、どうしようもないことだから。
おまえのことを、救えなかった。手のひらから、こぼれ落ちてしまった。
でも、おまえは、案外しぶとくて。自分で自分を拾い集めて、俺の元へ来た。
俺は、おまえに救われたんだ。
お題「狭い部屋」
箱の中に閉じ込められた。
犯人は、もちろん、おまえ。あんなに、俺の身に起きた命の危機を気にしていたのに。いや、“だから”なのか。
この箱の中には、必要なものはなんでもある。おまえが用意してくれるから。
ただ、俺を守りたくて。安心したくて。きっと、そう考えて、おまえは俺を囚えている。
俺への好意だけで動くおまえだから。俺への愛情はないと言っていたおまえだから。いつまでも祟ると宣言したおまえだから。
おまえへの情があるせいで、俺は縄抜け出来ずにいる。
お題「誰にも言えない秘密」
おまえが俺を嫌いたかったことを、実は知ってる。
寝言で「嫌い」と呟いたから、なんの夢を見ていたのか訊いた。そしたら、「おまえ」と言われた。
ああ、俺のことを嫌いたいんだな、と。そういう真実に辿り着いたことを、俺は決して言わない。
言えば、おまえが傷付くからだ。
水面下でもがいてることくらい、見逃してやれるが、きっとそれも嫌がるんだろう。
お題「最悪」
この最悪な感情に、オレは“恋”と名付けた。
別に、“祟り”でもよかったし、“呪い”でもよかったんだけど。
嘘にはならないけど、真実でもないことばかり口にしている。
全てを煙の中に隠して、いつもヘラヘラ笑って。バカ過ぎる。
こんなバカを、隣に置くなよ。近寄るな。傍に来ないで。
ド屑。見捨てられたら、死ぬ癖に。
お題「世界の終わりに君と」
その人は、「悪りぃ」と謝った。
「なんで謝るの?」
「よく知らない奴と、最期の時を過ごさせちまってるから」
「確かに、君のことよく知らないけど……」
でも、何故だろう? なんだか安心する。
世界の終わりに、君が隣にいるのが、なんだか嬉しい。
「ありがとう」
「なんで、礼?」
「オレを選んでくれて、ありがとう」
そう言ったら、君は、くしゃりと笑って、オレの頭を撫でた。
あの世でも、よろしく。
お題「岐路」
ここは、別れ道。このまま家に引きこもるか、外へ出るか。
結論。オレは、外へ出た。
そこでオレは、おまえに出会い、おまえを呪わしく想ったんだ。
ずうっと、“好き”だけに突き動かされて、生きている。だけど、おまえと出会わなければ、ひとりで歩いて行くことは出来なかっただろう。
災難だな、おまえは。
お題「朝日の温もり」
眩しい朝日が嫌いだった。けど、おまえは、月明かりだったから。オレは、居心地がよかった。
段々と光に慣れてきて、今では陽光も平気だ。
その温もりを、おまえと分かち合えることが不思議で。嬉しくて。時々、泣きそうになる。
どこまでも手を引いてほしかったけど、さよなら。
ごめん。ありがとう。
次に会うオレは、今のオレじゃない。
お題「やりたいこと」
死ぬまでに何がしたい?
オレは、なぁんにもないよ。前は、な。
今は、ただ、おまえと肩を並べられる人間になりたい。それで、ずっと隣にいたい。それだけ。
オレの思考は、答えを出せないものだけど、いつか必ず答えに辿り着くおまえのことを、応援することは出来るんだ。
オレだって、たまには素直になんだよ。
お題「街」
この場所しか知らない。この街の外へ出たことがない。
オレの世界は、狭い。前は、もっと狭かったけど。家の中だけが、オレの居場所だった。
今は、大学の喫煙室とか、仕事場の仮眠室とか、おまえの部屋とか。そういう所が、自分のいていい場所だと感じる。
どうか、もう居場所を奪わないで。
お題「好き嫌い」
どうして、こんな単純な話を複雑怪奇にしちまうんだ、おまえは?
好きなら、好き。嫌いなら、嫌い。それでいいだろ。
なのに、おまえは、「大好き」だとか「嫌いたかった」とか「愛せない」とか「祟り」とか言う。
おまえの考えてる“愛の定義”とやらのことは知らねーが、なんでそんなに自罰的なんだ?
いつになったら、おまえは自分のことを赦せるんだよ?
お題「あじさい」
紫陽花の花言葉は、無常。
かつて、オレの日常は奪われた。それを取り戻すことは、自分では出来ない。
「おまえは、オレの傍を離れて、真実を追い求めるのか?」
隣で眠っている恋人に問いかけた。
オレは、おまえとは行けないよ。
いつか、オレの日常が引き戻されても、もう前のままじゃない。オレには、おまえがいて。友人がいて。仲間がいる。
それが日常。こんな風に変わったオレを、両親が見たら、なんて言うだろう?
お題「あいまいな空」
快晴でも曇りでもない空を見て、おまえのことを思い出した。
おまえは、曖昧なのが好きで。白黒はっきりさせるのが苦手だ。
全てを煙の中に隠しておきたいのに、嘘がつけないおまえは、やっぱりバカみたいに単純で複雑だから。
ずっと、目が離せない。目を離したら、煙みたいに消えそうだ。
お題「好きな本」
哲学書が好きだ。永遠に答えの出ないことを考えるのが好き。
推理小説が嫌いだ。真実に辿り着いてしまうから。
オレとおまえは、なんで仲良くやれてんだろうな? まあ、おまえが善い奴だからか。
こんなにも相性が悪そうなのに、オレたちは、ふたりでいる。
そのことは、奇跡みたいで、深い傷を塞ぐ絆創膏みたいで、月の光のよう。
お題「1年前」
一年前は、こんなことになるとは思ってなかった。
これは、永劫の片想いだと思っていたから。
なんで、こんなろくでなしの手を取った?
“おまえが、俺じゃないから”
そう答えられたことを、昨日のことのように覚えている。
哲学的だ。それは、オレの領分だろうが。
全然違うふたりは、今日も一緒にいる。
お題「未来」
未来予知? 可能性の分岐? なんだか知らないが、おまえにはオレの死が視えてたんだろ?
オレは、殺されるはずだったんだろ?!
どうして死なせてくれなかったんだよ。
アイツが拐われた、こんな現実にいるくらいなら、死んだ方がマシだ。
何もかもが、呪わしい。
オレは、また取り残されたのか。
目先の絶望で、人は死ねるんだぜ。
お題「落下」
どこまでも落ちていく。深く、深く。暗い、暗いところへ。
おまえがいない。近くにいない。隣にいない。傍にいない。
どこにいるかも分からない。
「置いて行かないで…………」
オレの泣き言も聴こえるはずがない。
光を奪われた世界には、一筋も灯りがないんだ。
ひとりじゃ立てないよ。助けてよ。
おまえがいないと、オレは…………。
お題「相合傘」
人がふたり。傘はひとつ。
「入れよ」と言われて、おとなしく傘に入った。
歩調を合わせて歩く。
「…………」
いつもなら。いつもなら、そう。オレがペラペラ喋るんだけど。
なんでか、何も言えないでいる。
そのまま、オレの家に着いて、ようやく口を開いた。
「上がってけ」と。
素直に提案を呑むおまえの右肩が濡れていて、オレは、堪らない気持ちになった。
お題「あなたがいたから」
私は特別にはなれない。あなたのせいで。
彼の恋人。私の恋敵。
いくら泥仕合を繰り広げたところで、運命は私を選ばないだろう。
それでも、これは、私が死ぬか、あなたが死ぬかの闘いだ。
負けたくない! 生きたい!
でも、ダメだったね。
私の首を絞める腕が、震えている。
愚かな子。
お題「好きな色」
好きな色? 特にない。でも、金髪は好きかな。
おまえの色だから。
オレの茶髪は、地毛だしなぁ。染める気はないな、メンドーだから。
オレなんて、空白みたいなもんだよ。
おまえが染めればいい。
お題「日常」
この戦時下が、日常なんだってさ。クソ食らえ。
でも、戦時下だってことを、みんな努めて忘れてる。少なくとも、オレはそう。
少年兵を部活に誘うみたいに募って、日々防衛を任せる。
そんな都市なのに、人口の流出は少ない。そういう場所なんだ、ここは。
オレが、おかしいのか?
そうなんだろう。“適応”出来ないのなら、ここに居場所はない。
「走り続けなくては、この場所に留まれない、か……」
お題「子供の頃は」
家族にしか懐かない子供だった。
不登校だったし、友達なんていないし、恋なんてしないと思ってた。
ある頃から、外に出たら、人の振りをするので精一杯。そんな日々。
その中で、おまえに出会った。苦手だったよ。
面倒見がいいところも、頭がいいところも、勝負強さも、何もかもが憎らしかった。
正しい人って、怖い。オレは、正しくないから。
善人が、天国行きのチケットを持っているとしたら、オレはどうなる?
だから、ガキのオレは、あの世なんてものはないということにした。
ある日、オレは、おまえへの恋心を自覚する。
地獄って、ここのことだったんだ。
お題「1年後」
そんな先のことは知らねぇよ。
明日のことだって分からねぇのに。
オレは、自分が大人になれると思ってないガキだったんだぜ?
あーあ。だいたい、答えを出すのが苦手なんだよ。
ただ、これからも、おまえといられりゃいい。
お題「繊細な花」
その花は、ガラスで出来ていた。
その花は、時が経つに連れて、ひびだらけになった。
その花は、ある日、粉々にされた。
「美しくないね」と、彼は自嘲する。
もう綺麗じゃない。もう誰にも見られたくない。
でも、それを見付けた人は言った。
「まだ燃えてる」「直せる」「俺が手伝う」と。
かつて美しい花だった粉を、炉に入れて、もう一度咲かせよう。
そう思えた彼は、幸せ者だ。
お題「君と最後に会った日」
君と最後に交わした言葉。
「消しゴム貸して」「うん」とかだっけ?
そんな相手のことが好きかもしれない。何かの間違い?
遠い人なのに。物理的にも、精神的にも。
故郷は遥か、遠く。関係性は、薄く。
何故か、心に穴が空いているような気がするんだ。
大切なパーツを落としたような。
一体、何が欠けているのだろう?
お題「ここではないどこか」
どっか連れてって。
あの女の声がする。甘ったるくて、少し寂しげな。
でも、この声は、オレにしか聴こえないはず。
「なぁ」
「ん?」
「……なんでもない」
ここから、おまえが連れ出してくれるワケがない。ここを出ることがあるとすれば、きっとオレはひとりだ。
ねぇ、どっか連れてって。
うるせぇな。言えるか、んなこと。
お題「夏」
影の下に逃げても、日の光は容赦がなく。本当は、逃げ場なんてないんだって思い知る。
コンビニで、アイスクリームをひとつだけ買う。
前は、家族みんなの分も買っていたっけな。
帰路を歩きながら、ソーダ味のアイスを齧る。
ほとんど脱け殻の自宅に帰ると、メッセージが届いた。
『もうすぐ行く』
返信をする前に、インターホンが鳴る。
少し、ソーダがはじけるみたいな気持ちになった。
お題「入道雲」
今年の夏も、似たような夏。
日射しにうんざりして、デケェ雲見て、ひまわり畑を横目にして、アイス齧りながら、独りきりの家に帰る。
よく、考えることがある。この日常を壊す方法。
例えば、おまえに「好きだ」と告げてみるとか。
でも、壊せないままでいる。この手で終わらせるまでもなく、日常なんてものは、どうしようもなく壊されてしまっているし。
ただ、オレは、かつての夏の残りカスを握っている。
お題「赤い糸」
この世界が運命で編まれているのだとしたら、それは残酷なことだと思う。
おまえの運命は、たくさんの人の元へと繋がっていて、オレもそのひとりなんだろう。
糸が見えなくて、よかった。見えていたら、オレという祟りは、自分のもの以外は全て切っていただろうから。
出来ることなら、オレの糸でおまえを絡めとって、閉じ込めてしまいたいよ。
「雨は嫌いなんだ。頭痛がするから」
生前、おまえは、そう言っていた。
梅雨入りしたここにおまえがいたら、さぞ苦い顔になったことだろう。
いつもなら、煙草に火を着けて供えるが、この時期はしない。代わりに、缶ビールを一本供えた。
空が泣いてくれているから、俺は泣かない。
お題「正直」
オレの名前って、正直者っぽいよな。
全然そんなことないって、おまえは骨身に染みてるだろうけど。
親の祈りを、オレは踏みにじってるのかな?
おまえは、オレの光だから、ぴったりな名前だ。
ただ、オレは自分の“好き”しか口に出来なくて。オレの“好き”は、“呪言”だから、ずっとずっと、おまえに迷惑かけてる。
だけど、おまえといれば、オレは…………。
救われてるよ。本当に。
お題「失恋」
一度、恋を失ったことがある。
おまえが、記憶を封印されてしまった時。おまえは、俺との思い出をほとんど失い、しつこく言い続けていた“好き”も失くした。
おまえの心を守るため。病んだ精神を治すため。そうやって、聞き分けのいい振りをするしかなかった。俺には、どうしようもないことだから。
おまえのことを、救えなかった。手のひらから、こぼれ落ちてしまった。
でも、おまえは、案外しぶとくて。自分で自分を拾い集めて、俺の元へ来た。
俺は、おまえに救われたんだ。
お題「狭い部屋」
箱の中に閉じ込められた。
犯人は、もちろん、おまえ。あんなに、俺の身に起きた命の危機を気にしていたのに。いや、“だから”なのか。
この箱の中には、必要なものはなんでもある。おまえが用意してくれるから。
ただ、俺を守りたくて。安心したくて。きっと、そう考えて、おまえは俺を囚えている。
俺への好意だけで動くおまえだから。俺への愛情はないと言っていたおまえだから。いつまでも祟ると宣言したおまえだから。
おまえへの情があるせいで、俺は縄抜け出来ずにいる。
お題「誰にも言えない秘密」
おまえが俺を嫌いたかったことを、実は知ってる。
寝言で「嫌い」と呟いたから、なんの夢を見ていたのか訊いた。そしたら、「おまえ」と言われた。
ああ、俺のことを嫌いたいんだな、と。そういう真実に辿り着いたことを、俺は決して言わない。
言えば、おまえが傷付くからだ。
水面下でもがいてることくらい、見逃してやれるが、きっとそれも嫌がるんだろう。
お題「最悪」
この最悪な感情に、オレは“恋”と名付けた。
別に、“祟り”でもよかったし、“呪い”でもよかったんだけど。
嘘にはならないけど、真実でもないことばかり口にしている。
全てを煙の中に隠して、いつもヘラヘラ笑って。バカ過ぎる。
こんなバカを、隣に置くなよ。近寄るな。傍に来ないで。
ド屑。見捨てられたら、死ぬ癖に。
お題「世界の終わりに君と」
その人は、「悪りぃ」と謝った。
「なんで謝るの?」
「よく知らない奴と、最期の時を過ごさせちまってるから」
「確かに、君のことよく知らないけど……」
でも、何故だろう? なんだか安心する。
世界の終わりに、君が隣にいるのが、なんだか嬉しい。
「ありがとう」
「なんで、礼?」
「オレを選んでくれて、ありがとう」
そう言ったら、君は、くしゃりと笑って、オレの頭を撫でた。
あの世でも、よろしく。
お題「岐路」
ここは、別れ道。このまま家に引きこもるか、外へ出るか。
結論。オレは、外へ出た。
そこでオレは、おまえに出会い、おまえを呪わしく想ったんだ。
ずうっと、“好き”だけに突き動かされて、生きている。だけど、おまえと出会わなければ、ひとりで歩いて行くことは出来なかっただろう。
災難だな、おまえは。
お題「朝日の温もり」
眩しい朝日が嫌いだった。けど、おまえは、月明かりだったから。オレは、居心地がよかった。
段々と光に慣れてきて、今では陽光も平気だ。
その温もりを、おまえと分かち合えることが不思議で。嬉しくて。時々、泣きそうになる。
どこまでも手を引いてほしかったけど、さよなら。
ごめん。ありがとう。
次に会うオレは、今のオレじゃない。
お題「やりたいこと」
死ぬまでに何がしたい?
オレは、なぁんにもないよ。前は、な。
今は、ただ、おまえと肩を並べられる人間になりたい。それで、ずっと隣にいたい。それだけ。
オレの思考は、答えを出せないものだけど、いつか必ず答えに辿り着くおまえのことを、応援することは出来るんだ。
オレだって、たまには素直になんだよ。
お題「街」
この場所しか知らない。この街の外へ出たことがない。
オレの世界は、狭い。前は、もっと狭かったけど。家の中だけが、オレの居場所だった。
今は、大学の喫煙室とか、仕事場の仮眠室とか、おまえの部屋とか。そういう所が、自分のいていい場所だと感じる。
どうか、もう居場所を奪わないで。
お題「好き嫌い」
どうして、こんな単純な話を複雑怪奇にしちまうんだ、おまえは?
好きなら、好き。嫌いなら、嫌い。それでいいだろ。
なのに、おまえは、「大好き」だとか「嫌いたかった」とか「愛せない」とか「祟り」とか言う。
おまえの考えてる“愛の定義”とやらのことは知らねーが、なんでそんなに自罰的なんだ?
いつになったら、おまえは自分のことを赦せるんだよ?
お題「あじさい」
紫陽花の花言葉は、無常。
かつて、オレの日常は奪われた。それを取り戻すことは、自分では出来ない。
「おまえは、オレの傍を離れて、真実を追い求めるのか?」
隣で眠っている恋人に問いかけた。
オレは、おまえとは行けないよ。
いつか、オレの日常が引き戻されても、もう前のままじゃない。オレには、おまえがいて。友人がいて。仲間がいる。
それが日常。こんな風に変わったオレを、両親が見たら、なんて言うだろう?
お題「あいまいな空」
快晴でも曇りでもない空を見て、おまえのことを思い出した。
おまえは、曖昧なのが好きで。白黒はっきりさせるのが苦手だ。
全てを煙の中に隠しておきたいのに、嘘がつけないおまえは、やっぱりバカみたいに単純で複雑だから。
ずっと、目が離せない。目を離したら、煙みたいに消えそうだ。
お題「好きな本」
哲学書が好きだ。永遠に答えの出ないことを考えるのが好き。
推理小説が嫌いだ。真実に辿り着いてしまうから。
オレとおまえは、なんで仲良くやれてんだろうな? まあ、おまえが善い奴だからか。
こんなにも相性が悪そうなのに、オレたちは、ふたりでいる。
そのことは、奇跡みたいで、深い傷を塞ぐ絆創膏みたいで、月の光のよう。
お題「1年前」
一年前は、こんなことになるとは思ってなかった。
これは、永劫の片想いだと思っていたから。
なんで、こんなろくでなしの手を取った?
“おまえが、俺じゃないから”
そう答えられたことを、昨日のことのように覚えている。
哲学的だ。それは、オレの領分だろうが。
全然違うふたりは、今日も一緒にいる。
お題「未来」
未来予知? 可能性の分岐? なんだか知らないが、おまえにはオレの死が視えてたんだろ?
オレは、殺されるはずだったんだろ?!
どうして死なせてくれなかったんだよ。
アイツが拐われた、こんな現実にいるくらいなら、死んだ方がマシだ。
何もかもが、呪わしい。
オレは、また取り残されたのか。
目先の絶望で、人は死ねるんだぜ。
お題「落下」
どこまでも落ちていく。深く、深く。暗い、暗いところへ。
おまえがいない。近くにいない。隣にいない。傍にいない。
どこにいるかも分からない。
「置いて行かないで…………」
オレの泣き言も聴こえるはずがない。
光を奪われた世界には、一筋も灯りがないんだ。
ひとりじゃ立てないよ。助けてよ。
おまえがいないと、オレは…………。
お題「相合傘」
人がふたり。傘はひとつ。
「入れよ」と言われて、おとなしく傘に入った。
歩調を合わせて歩く。
「…………」
いつもなら。いつもなら、そう。オレがペラペラ喋るんだけど。
なんでか、何も言えないでいる。
そのまま、オレの家に着いて、ようやく口を開いた。
「上がってけ」と。
素直に提案を呑むおまえの右肩が濡れていて、オレは、堪らない気持ちになった。
お題「あなたがいたから」
私は特別にはなれない。あなたのせいで。
彼の恋人。私の恋敵。
いくら泥仕合を繰り広げたところで、運命は私を選ばないだろう。
それでも、これは、私が死ぬか、あなたが死ぬかの闘いだ。
負けたくない! 生きたい!
でも、ダメだったね。
私の首を絞める腕が、震えている。
愚かな子。
お題「好きな色」
好きな色? 特にない。でも、金髪は好きかな。
おまえの色だから。
オレの茶髪は、地毛だしなぁ。染める気はないな、メンドーだから。
オレなんて、空白みたいなもんだよ。
おまえが染めればいい。
お題「日常」
この戦時下が、日常なんだってさ。クソ食らえ。
でも、戦時下だってことを、みんな努めて忘れてる。少なくとも、オレはそう。
少年兵を部活に誘うみたいに募って、日々防衛を任せる。
そんな都市なのに、人口の流出は少ない。そういう場所なんだ、ここは。
オレが、おかしいのか?
そうなんだろう。“適応”出来ないのなら、ここに居場所はない。
「走り続けなくては、この場所に留まれない、か……」
お題「子供の頃は」
家族にしか懐かない子供だった。
不登校だったし、友達なんていないし、恋なんてしないと思ってた。
ある頃から、外に出たら、人の振りをするので精一杯。そんな日々。
その中で、おまえに出会った。苦手だったよ。
面倒見がいいところも、頭がいいところも、勝負強さも、何もかもが憎らしかった。
正しい人って、怖い。オレは、正しくないから。
善人が、天国行きのチケットを持っているとしたら、オレはどうなる?
だから、ガキのオレは、あの世なんてものはないということにした。
ある日、オレは、おまえへの恋心を自覚する。
地獄って、ここのことだったんだ。
お題「1年後」
そんな先のことは知らねぇよ。
明日のことだって分からねぇのに。
オレは、自分が大人になれると思ってないガキだったんだぜ?
あーあ。だいたい、答えを出すのが苦手なんだよ。
ただ、これからも、おまえといられりゃいい。
お題「繊細な花」
その花は、ガラスで出来ていた。
その花は、時が経つに連れて、ひびだらけになった。
その花は、ある日、粉々にされた。
「美しくないね」と、彼は自嘲する。
もう綺麗じゃない。もう誰にも見られたくない。
でも、それを見付けた人は言った。
「まだ燃えてる」「直せる」「俺が手伝う」と。
かつて美しい花だった粉を、炉に入れて、もう一度咲かせよう。
そう思えた彼は、幸せ者だ。
お題「君と最後に会った日」
君と最後に交わした言葉。
「消しゴム貸して」「うん」とかだっけ?
そんな相手のことが好きかもしれない。何かの間違い?
遠い人なのに。物理的にも、精神的にも。
故郷は遥か、遠く。関係性は、薄く。
何故か、心に穴が空いているような気がするんだ。
大切なパーツを落としたような。
一体、何が欠けているのだろう?
お題「ここではないどこか」
どっか連れてって。
あの女の声がする。甘ったるくて、少し寂しげな。
でも、この声は、オレにしか聴こえないはず。
「なぁ」
「ん?」
「……なんでもない」
ここから、おまえが連れ出してくれるワケがない。ここを出ることがあるとすれば、きっとオレはひとりだ。
ねぇ、どっか連れてって。
うるせぇな。言えるか、んなこと。
お題「夏」
影の下に逃げても、日の光は容赦がなく。本当は、逃げ場なんてないんだって思い知る。
コンビニで、アイスクリームをひとつだけ買う。
前は、家族みんなの分も買っていたっけな。
帰路を歩きながら、ソーダ味のアイスを齧る。
ほとんど脱け殻の自宅に帰ると、メッセージが届いた。
『もうすぐ行く』
返信をする前に、インターホンが鳴る。
少し、ソーダがはじけるみたいな気持ちになった。
お題「入道雲」
今年の夏も、似たような夏。
日射しにうんざりして、デケェ雲見て、ひまわり畑を横目にして、アイス齧りながら、独りきりの家に帰る。
よく、考えることがある。この日常を壊す方法。
例えば、おまえに「好きだ」と告げてみるとか。
でも、壊せないままでいる。この手で終わらせるまでもなく、日常なんてものは、どうしようもなく壊されてしまっているし。
ただ、オレは、かつての夏の残りカスを握っている。
お題「赤い糸」
この世界が運命で編まれているのだとしたら、それは残酷なことだと思う。
おまえの運命は、たくさんの人の元へと繋がっていて、オレもそのひとりなんだろう。
糸が見えなくて、よかった。見えていたら、オレという祟りは、自分のもの以外は全て切っていただろうから。
出来ることなら、オレの糸でおまえを絡めとって、閉じ込めてしまいたいよ。