創作企画「冥冥の澱」2
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逃避行することにした。
燈哉の卒業を待ってから。来目聖爾と赤城燈哉は、ふたりでとある国に逃げることを決めた。
慎重に痕跡を消し、足取りを掴めないようにして、旅立つ。
お互いに、お互いにの人生を捧げて、一組の恋人たちは行く。
「…………」
飛行機の中で、聖爾は、「ごめん」と、言いたくなったが、やめた。そんなことは、燈哉は望まないだろうから。
そうして。辿り着いた先は、楽園みたいな南国の空の下。海風が、ふたりの肌を撫でる。
しばらく、寄せては返す波を見つめた。
その後、ふたりの新居へと向かう。木造の、暖かみのある一軒家。日本より物価が安いこの国では、聖爾の金で、安価に家や家具を揃えられた。
「荷ほどきするか」
「ああ」
燈哉の言葉に、返事をする。
と言っても、聖爾の私物は、生活必需品と燈哉とお揃いのボールペンと、大切な例のコーヒーの空き缶くらいのものだが。
「それ…………」
空き缶を見て、燈哉が声を出す。
「燈哉からもらったやつだ」
「はは。俺のこと大好きだな」
「愛してるよ」
「……ありがとう」
徒歩圏内に海がある家は、ふたりの新たな居場所だ。大切な、居場所。
もう、自分は迷わない。ふたりの幸せのためだけに尽力しよう。聖爾は、決意した。
愛することは、選ぶこと。人生は、選択肢選びの連続で出来ている。
この選択肢を、間違いにしたくない。
愛する人が、隣で笑っていられるように。ふたりで、並んで歩いて行けるように。片時も、この手を離さないように。
燈哉と向き合うことからは、逃げはしない。
「オレの人生は、ずっと間違いだった。でも、これからは、正しくありたい。オレたち、ふたりのために」
「聖爾がそれを望むなら、きっと叶うよ」
ふ、と笑う燈哉。その微笑みを、愛おしく思う聖爾。
もし、神がいるのなら。どうか、この世界で彼に寄り添わせてほしい。なんて、らしくないことを考えている。
ずっと、来目聖爾は、後悔を抱えながら生きることになるが、それでも赤城燈哉の傍にいたい。
赤城燈哉は、来目聖爾の化物みたいな精神性を、理解することは出来ないだろうが、それでも歩み寄ることは出来る。
相互不理解。しかし、それは断絶の言葉ではない。
ふたりに限った話ではなく、人と人は、完全には理解し合えないものだ。だから、対話がある。言葉がある。思いを伝えることが出来る。
この醜くて残酷で、美しくて尊い世界で、共に生きると誓ったふたりは、強かさを備えて歩いて行く。一歩一歩、着実に。時には、坂もあるだろう。時には、壁もあるだろう。だけど、一緒に乗り越えたいと願った。
ふたりの旅路に幸いあれ、と。
燈哉の卒業を待ってから。来目聖爾と赤城燈哉は、ふたりでとある国に逃げることを決めた。
慎重に痕跡を消し、足取りを掴めないようにして、旅立つ。
お互いに、お互いにの人生を捧げて、一組の恋人たちは行く。
「…………」
飛行機の中で、聖爾は、「ごめん」と、言いたくなったが、やめた。そんなことは、燈哉は望まないだろうから。
そうして。辿り着いた先は、楽園みたいな南国の空の下。海風が、ふたりの肌を撫でる。
しばらく、寄せては返す波を見つめた。
その後、ふたりの新居へと向かう。木造の、暖かみのある一軒家。日本より物価が安いこの国では、聖爾の金で、安価に家や家具を揃えられた。
「荷ほどきするか」
「ああ」
燈哉の言葉に、返事をする。
と言っても、聖爾の私物は、生活必需品と燈哉とお揃いのボールペンと、大切な例のコーヒーの空き缶くらいのものだが。
「それ…………」
空き缶を見て、燈哉が声を出す。
「燈哉からもらったやつだ」
「はは。俺のこと大好きだな」
「愛してるよ」
「……ありがとう」
徒歩圏内に海がある家は、ふたりの新たな居場所だ。大切な、居場所。
もう、自分は迷わない。ふたりの幸せのためだけに尽力しよう。聖爾は、決意した。
愛することは、選ぶこと。人生は、選択肢選びの連続で出来ている。
この選択肢を、間違いにしたくない。
愛する人が、隣で笑っていられるように。ふたりで、並んで歩いて行けるように。片時も、この手を離さないように。
燈哉と向き合うことからは、逃げはしない。
「オレの人生は、ずっと間違いだった。でも、これからは、正しくありたい。オレたち、ふたりのために」
「聖爾がそれを望むなら、きっと叶うよ」
ふ、と笑う燈哉。その微笑みを、愛おしく思う聖爾。
もし、神がいるのなら。どうか、この世界で彼に寄り添わせてほしい。なんて、らしくないことを考えている。
ずっと、来目聖爾は、後悔を抱えながら生きることになるが、それでも赤城燈哉の傍にいたい。
赤城燈哉は、来目聖爾の化物みたいな精神性を、理解することは出来ないだろうが、それでも歩み寄ることは出来る。
相互不理解。しかし、それは断絶の言葉ではない。
ふたりに限った話ではなく、人と人は、完全には理解し合えないものだ。だから、対話がある。言葉がある。思いを伝えることが出来る。
この醜くて残酷で、美しくて尊い世界で、共に生きると誓ったふたりは、強かさを備えて歩いて行く。一歩一歩、着実に。時には、坂もあるだろう。時には、壁もあるだろう。だけど、一緒に乗り越えたいと願った。
ふたりの旅路に幸いあれ、と。