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お題「エイプリルフール」
4月って浮かれてらんねぇよな。忙しくてさ。
嘘? つかないつかない。
オレは、“煙に巻く者”だけど、嘘は言わないことにしてんだ。
大事なこと黙ってるのもやめろ? はは。
黙ってたって、見付ける癖に。
お題「大切なもの」
愛してるが言えない。オレには、“愛してる”が分からないんだ。
好きだよって、何度も言った。執着してるとも言った。憎らしいとも、消えてほしいとも。
愛してるだけ、言えない。大切な言葉だから、余計に。
大切な人にだから、言えないでいる。でも、日常がいつまでも続かないって知ってるから。オレは、言うよ。
「愛してる」
お題「1つだけ」
オレのいいところ、ひとつ挙げよ。
いや、黙るなよ。
手がかかるところ? マイナスだろ。
目が離せないところ? 幼児?
ほっとけないところ? おまえ、オレの保護者?
あー、うん。迷惑かけて、ごめん。
迷惑じゃない? そっか。ありがとう。
なるほどな。おまえを褒めることなら、いくらでも出来るぜ。任せとけ。
お題「それでいい」
部屋に、死体がひとつ。
生きてる者は、ふたり。オレとおまえ。
おまえが人殺しなんて、するはずがない。
しかし、オレも殺してない。
ここは、密室。ふたりだけでいたはずなのに、何故か死体が湧いてきた。
「犯人は、オレでいいよ」
へらへら笑いながら、そう言うオレ。
おまえは、なんとも言えない表情でオレを見た。
お題「星空の下で」
オレの中の星空で、おまえは一等星だったのに。
それをオレは、この手で消してしまった。部屋の灯りを消すように簡単ではなかったけど、完遂した。
オレは、笑いながら涙を流し、怒っている。
おまえのいない世界は、眩しくない。だから、居心地は良くなったはずだ。それなのに、夜空を見上げて、オレは慟哭している。
「ふざけんな! ふざけんなよ! おまえを消せば、オレは“正常”になれるはずだろ!」
でも、そうはならなかった。オレは、“正常”でも“普通”でもない。ただの、人殺し。
「はは…………」
乾いた笑いが漏れる。
星屑を辿った先に、おまえはいない。
お題「君の目を見つめると」
恋人が記憶を失くした。正確に言うと、俺に関する記憶のほとんどを消されたのだ。
「君は…………?」
親しくなってからのおまえは、俺のことを“君”なんて言わなかったし、“くん付け”で呼んだりしなかったのに。
ただ、おまえは、精神を壊してしまったから。今の方が健やかなんだろう。
そんなおまえが、俺の目を見つめてきて。
「なんだろう? なんかドキドキする」とか、抜かすもんだから。
俺は、未練たらしくしている。
お題「沈む夕日」
夕日を背に受けながら、ふたりで歩いている。
「今日が終わったら、オレはまた、おまえを忘れる」
「ああ」
オレの記憶は、一日でリセットされてしまうのだ。
「このオレとは、さよならだな」
正直、オレは悲しい。離れ難いと思う。けれど、時は容赦なく進み、セピア色の思い出すら作らせてはくれない。
「永遠に、さよならだ…………」
「……寂しくなるな」
おまえも、同じ気持ちでいてくれるなら、オレは嬉しい。
こんな別れを、オレたちは何度繰り返してきたのだろう?
それでも、何度でも、オレはおまえに会いたい。
お題「これからも、ずっと」
永遠の命を手に入れた。
だから、それをおまえにも分けて、共に生きる。
百年の時が過ぎ、オレたちの家族や友達や知り合いは、みんな死んでしまった。
でも、オレは、おまえさえいればいい。この世で一番特別な、おまえさえ隣にいればいい。
だが、おまえは違った。家族や友達や知り合いの死を、おまえは悼み、悲しむ。
そりゃあ、オレだって悲しいけどさ。
「おまえには、オレがいるよ」と言ったが、おまえの表情は暗いままだ。
永い時を、オレと過ごすおまえ。ある日、おまえは告げる。
「もう疲れた」と、一言。
悪いけど、不死の捨て方なんて、オレは知らない。
おまえは、両手で顔を覆い、膝から崩れた。
永遠に囚われたおまえは、そのことを嘆く。
それでもオレは、おまえを逃がしてやれない。逃がすもんか。
お題「誰よりも、ずっと」
人間でいる資格を剥奪された。
オレは、誰よりも自分のことが嫌いで仕方なかったから、そのせいで、人間不適合者として処罰されたのである。
今のオレは、一匹の毒虫だ。小さな虫けら。オレには、お似合いの命の器。
オレは体をくねらせ、おまえの足から這い上がり、肩に到達する。
そして、おまえがオレの存在に気付いた。
「意外と元気そうだな」
まあな。発声が出来ないので、心中で同意する。
横目でオレを見ながら、おまえは歩き出した。
「落ちるなよ?」
ま、善処するよ。
帰宅して。肩から降ろすために、毒虫のオレに触れるおまえは、怖いもの知らずだな?
「愛してる」と、手のひらの上のオレに告げられた。
オレが、世界で一番好きなおまえは、随分物好きで、シュミが悪い。でも、そのお陰で、こうして側にいられるんだから、嬉しいよ。
お題「春爛漫」
光があるところに影があり、花は咲いたら散るけれど。
「春っていいよな」とだけ、おまえに言うと、同意された。
おまえは覚えてないかもしれないが、オレは、あの春を覚えている。高校生になったばかりの頃、クラスがおまえと一緒だった。
またかよ。そう思った。中学の頃から、ずーっと同じなもんだから、話したことは、ほぼないのにフルネームを覚えてしまってたんだよな。
嫌いだったよ、おまえのこと。善人だから。
でも、おまえに恋をした。あれは、春だった。桜が美しく見えるようになったし、モンシロチョウが綺麗に見えたし、自分が独りだと気付いた。
オレの世界に、“寂しさ”を持ち込んで来たおまえは、本当に最悪で。
オレは、心の中の特別席におまえを座らせてしまったから、今でも隣を歩いている。
桜並木が、鮮やかに彩られていた。
お題「言葉にできない」
愛してると言わなくては、死んでしまう病に罹患した。
でも、オレは、おまえを“愛してない”から。どうしても言えない。
世界で一番好きだよ。世界で一番特別だよ。
だけど、愛することが出来ないでいる。オレの恋は、いつまでも花をつけない。
この恋は、祟りみたいなものなんだって、前に言っただろう?
おまえは、それを受け入れたけど。本当に感謝してるけど。愛せないんだ。
これは、オレの哲学の話。オレの定義では、オレはおまえを愛していない。
何も言えなくて、ごめん。
いきなり死んでしまうことを、ゆるさなくていい。
お題「遠くの空へ」
今は遠く。生まれ故郷を去り、親戚の元へ身を寄せてから、一週間。
故郷には、もう何もない。両親は、もういない。
だから、離れたはずなのに。何か、おかしい。
オレは、何故か君のことばかり考えている。
「あ…………」
そうか。これって、恋なんだ。
気付いてからは、怒涛の勢いだった。
君は、遠くにいるけど、会いに行けない距離じゃない。オレは、君に会いたい。
それだけで、行動するには充分だった。
電車を乗り継ぎ、故郷へ向かう。
君に会えたら、なんて声をかけようか?
お題「快晴」
空は、こんなに晴れているけど。ひまわりが太陽に向かって咲き誇っているけど。
オレの心の中には、暗雲が立ち込めていて、どしゃ降りの雨だ。
だって、おまえが、ひまわり畑に消えてしまったから。
探しても、探しても、見付からない。オレの大切な人。
おまえがいない晴天より、おまえが隣にいる嵐の中の方がいい。
だから、ずっと探している。
友人は、「もうやめなよ。見てらんないよ」と言った。
やめられるワケがない。
生きる意味がなくては、立っているのも億劫なんだよ。
お題「神様へ」
神様に人生相談したら、「好きな人のことを神様にするな」と言われた。
オレは、少し納得いかなかったが、頷く。
そうか。オレは、おまえを“神様”にしてしまっていたのか。
確かに、オレは、おまえを信仰している。だから、オレの理想のおまえから外れたら、おまえのことを憎むのだろう。
やっぱり、オレの恋は祟りだな。
お題「届かぬ想い」
永劫の片想い。オレのひとり遊び。恋愛ごっこ。
実らないはずの恋は、楽しかった。
一方的に、おまえに強い感情を抱いている。オレは、この感情に“恋”と名付けた。
でも、おまえにフラれた時に言ったよな? こんなのは、“祟り”なんだって。
オレは、延々と、おまえを祟っている。
どうか、振り向かないでくれ。
振り向かれたら、オレは、どうしたらいいのか分からなくなるから。
お題「ここではない、どこかで」
「あたしのことを覚えてる?」
覚えてるよ、クソ女。
「あたしは、あなた。あなたは、あたし」
そうだな。オレは、女だったら、年下だったらとか、そんなことを考えて、おまえを生み出した。
でも、おまえとは、「さよなら」したじゃねぇか。
「ここはね、あなたの夢の中だよ」
おいおい。勘弁してくれ。
「あなた、未練があるの。まだ、女だったらよかったのにとか、年下だったらよかったのにとか、考えてるの」
あーやだやだ。オレは、おまえが嫌いだ。
「あたしに人生を明け渡すのが嫌なら、しっかりしなさい」
はいはい。オレは、オレが大好きだよ。嘘じゃない。
このメンドクサイ人間を、アイツは愛してるんだ。だから、オレもいつかは、どこかへ辿り着いて、アイツを愛するんだよ。
お題「桜散る」
散らない桜を作ることに成功した。
「桜が散らないなら、その方がいいだろ」と、オレはおまえに言う。
しかし、おまえは、命には限りがあるから、向上心が宿るんじゃないかと返した。
「花が散らない世界は、停滞するって? オレは、そうは思わないな。永遠を手に入れて初めて、オレたちには余力が生まれるんだよ」
まあ、そんなものは仮の話。
でも、こういうことを言えるのも、余裕があるからなんだよな。
お題「無色の世界」
気付けば、オレたちは、色のない世界にいた。
「ここは、昔のオレの世界みたいだな」
オレは、呟くように言う。
「おまえと出会う前、オレの世界はこんな感じだった」
彩度と明度が低く、無味乾燥な世界。それはそれは、つまらなくて、みんなが敵のように感じていた世界。
「いつも、“外”が大嫌いだったよ」
おまえとの邂逅は、色彩との出会いだった。人生の光が、おまえだから。
「さて、どうやったら戻れるのかな?」
犯人であろうオレは、名探偵に、そう訊いた。
お題「もしも未来を見れるなら」
未来から、オレがやって来た。
「未来のオレとアイツが、どうなってるか知りたいか?」
未来のオレは尋ねる。
もちろん、オレは「知りたくない」と答えた。
オレは、答えとか結果とか真実とかを知るのが怖いのだ。だから、哲学やってんだよ。
「そうだと思った」と、未来のオレ。何しに来たんだ? コイツ。
「答えから遠ざかるのが大好きだもんな、オレは」
でも、そうだ。未来から、オレが来たということは、オレとアイツが、まだ一緒にいるのだろう。
だって、幸せなら、何も知りたくないオレに会いに来れるもんな。
お題「何もいらない」
もう、何もいらなかった。どうせ、いつか奪われるのだから。
それなのに、オレは、他者を求めてしまった。おまえだけが、例外で。欲しくて欲しくて、堪らない。
両親を奪われ、日常は瓦解し。平和は崩れ去り、子供が戦っている。こんな、クソみたいなオレたちの世界。
その残酷さを、おまえは分かっているはずなのに、平然と日々を送っている。きっと、それは強さなんだろうけど。オレには、恐ろしく感じる。
いらないはずだったのにな。そんな覚悟は。
お題「雫」
なんで泣いてるんだろう?
オレは、どうしたんだ?
ただ、そう、心にぽっかりと穴が空いたような気持ちになって。気付けば、涙が落ちていた。
大切な何かを失ったような気がしている。
大切な誰かを忘れているような気がしている。
煌めく雫のように、手のひらからこぼれてしまったものは、なんなのだろう?
お題「たとえ間違いだったとしても」
間違いじゃないものを挙げる方が、楽だと思う。
オレの、おまえに対する感情は、きっと始めから間違いだった。“好き”だけが肥大していくオレは、醜い芋虫みたい。おまえに触角を伸ばしている。
だけど、それでも、おまえは隣にいた。
いつか、オレもおまえみたいに善くなれるだろうか?
その時まで、傍にいてほしい。
お題「今日の心模様」
あさ、めをさます。
おそらは、はれ。
でも、なんだろう? おれは、ないてる。
「おはよう」
「……だあれ?」
きみは、だれ? しらない、おとなのひと。
「俺は…………」
「ねぇ、なみだのとめかた、しってる?」
「……悪い。知らない」
「そう…………」
きみが、どうしてそんなかおをするのか、おれにはわからない。
お題「ルール」
決まりごとってのは、上手くすり抜けるためにあると思うんだ。
そう言ったら、おまえは、「危険思想だ」と苦笑いを浮かべて、オレに呆れたな。
正しいかもな。いや、おまえは、“いつも正しい”よ。
そして、オレは、“いつも間違っている”んだ。
そういう、世界の摂理だから。
名探偵のおまえは、犯人のオレを、どうしたい?
きっと、ルールに従えって言うんだろうな。
お題「流れ星に願いを」
流星への願いは、ひとつ。
「オレを、消せ」
その願いは、少し歪んで叶った。オレは、透明人間になったのである。
意識も消してくれよ。存在を消してくれよ。
特にしたいこともないので、オレは、おまえの後ろを歩く。
すぐに分かった。オレのことを捜してるって。
でも、見付かるはずがない。なんせ、オレは透明だから。
毎日、毎日。おまえは、オレを捜す。
いくら、おまえが名探偵でも、流石に透明なオレを見付けるなんて無理だろ。
そう思っていた、ある日。
「そこにいるのか?」
虚空に向かって、おまえがそんなことを言うもんだから、幽霊みたいになったオレは、元から色のないそれを、両目からこぼした。
お題「善悪」
おまえは、いつも犯人だが、悪人じゃない。
単純な癖に複雑怪奇で、自罰的な男だ。ずっと、この世から消えたいと思ってる。
そんなおまえを、傲慢かもしれないが、救いたくて。この手を伸ばす。
それを掴んでくれたことは、本当に嬉しかった。でも、俺はまだ、おまえを救い切れていない。
ずっと側にいてほしいと、おまえは言った。今すぐ自分の前から消えてほしいと、おまえは言った。
俺は、ただ、おまえに生きていてほしくて、離れずにいる。
結局、俺のエゴなんだろうな。
お題「生きる意味」
生まれたことに、意味なんてない。生きてることに、意味なんてない。
オレは、そう思ってた。
でも、おまえが、側で生きてほしいと言ったから、オレの命に重さが出来たんだよ。
地に足のつかなかったオレ。世間から浮いていたオレ。
おまえは、オレの人生の光だ。これからも、オレを導いてくれ。
お題「刹那」
瞬きの間に、人間の生は終わる。つまり、オレとおまえの結び付きも、すぐにほどけてしまうもの。
永遠が欲しい。おまえを、永遠に呪っていたい。
オレは、愛してるが、いつまでも言えないままでいる。
「おまえのこと、祟ってる」
そんな風に嘯くばかりで、オレは愛を紡げない。
オレたちを結び付けているものは、赤い糸ではないのかもしれないな。重たい鎖か、禍々しい髪の毛の束か、はたまた冷たくて痛みを伴う氷か。
オレは、祟りだ。厄災だ。例え死んでも、おまえを想う。
お題「風に乗って」
あたしは、ふわふわ。空を飛んでいる。
見下ろす先には、あの男。
アイツは、あたし。あたしは、アイツ。
あたしは、アイツに殺された。
なんて、嘘。あたし、消えてあげたの。アイツとあたしが、完全に別たれる前に。
彼の隣に、女でないといられないと思ったんだよね。可哀想に。
でも、彼が、手を取ってくれたから。
ハッピーエンドまで、駆け抜けて。
お題「楽園」
外のことなんて、気にしなくていいんだよ。
ここは、“楽園”だからね。
オレとおまえ、ふたりだけの“楽園”なんだ。必要なものは、オレが全部揃えるから。
もちろん、おまえには健康でいてほしいし、楽しい気持ちでいてほしい。そのために、色々と用意したんだよ。
ここで、ずっと一緒に暮らそう。
その足首の鎖には、きっと、そのうち慣れるよ。
4月って浮かれてらんねぇよな。忙しくてさ。
嘘? つかないつかない。
オレは、“煙に巻く者”だけど、嘘は言わないことにしてんだ。
大事なこと黙ってるのもやめろ? はは。
黙ってたって、見付ける癖に。
お題「大切なもの」
愛してるが言えない。オレには、“愛してる”が分からないんだ。
好きだよって、何度も言った。執着してるとも言った。憎らしいとも、消えてほしいとも。
愛してるだけ、言えない。大切な言葉だから、余計に。
大切な人にだから、言えないでいる。でも、日常がいつまでも続かないって知ってるから。オレは、言うよ。
「愛してる」
お題「1つだけ」
オレのいいところ、ひとつ挙げよ。
いや、黙るなよ。
手がかかるところ? マイナスだろ。
目が離せないところ? 幼児?
ほっとけないところ? おまえ、オレの保護者?
あー、うん。迷惑かけて、ごめん。
迷惑じゃない? そっか。ありがとう。
なるほどな。おまえを褒めることなら、いくらでも出来るぜ。任せとけ。
お題「それでいい」
部屋に、死体がひとつ。
生きてる者は、ふたり。オレとおまえ。
おまえが人殺しなんて、するはずがない。
しかし、オレも殺してない。
ここは、密室。ふたりだけでいたはずなのに、何故か死体が湧いてきた。
「犯人は、オレでいいよ」
へらへら笑いながら、そう言うオレ。
おまえは、なんとも言えない表情でオレを見た。
お題「星空の下で」
オレの中の星空で、おまえは一等星だったのに。
それをオレは、この手で消してしまった。部屋の灯りを消すように簡単ではなかったけど、完遂した。
オレは、笑いながら涙を流し、怒っている。
おまえのいない世界は、眩しくない。だから、居心地は良くなったはずだ。それなのに、夜空を見上げて、オレは慟哭している。
「ふざけんな! ふざけんなよ! おまえを消せば、オレは“正常”になれるはずだろ!」
でも、そうはならなかった。オレは、“正常”でも“普通”でもない。ただの、人殺し。
「はは…………」
乾いた笑いが漏れる。
星屑を辿った先に、おまえはいない。
お題「君の目を見つめると」
恋人が記憶を失くした。正確に言うと、俺に関する記憶のほとんどを消されたのだ。
「君は…………?」
親しくなってからのおまえは、俺のことを“君”なんて言わなかったし、“くん付け”で呼んだりしなかったのに。
ただ、おまえは、精神を壊してしまったから。今の方が健やかなんだろう。
そんなおまえが、俺の目を見つめてきて。
「なんだろう? なんかドキドキする」とか、抜かすもんだから。
俺は、未練たらしくしている。
お題「沈む夕日」
夕日を背に受けながら、ふたりで歩いている。
「今日が終わったら、オレはまた、おまえを忘れる」
「ああ」
オレの記憶は、一日でリセットされてしまうのだ。
「このオレとは、さよならだな」
正直、オレは悲しい。離れ難いと思う。けれど、時は容赦なく進み、セピア色の思い出すら作らせてはくれない。
「永遠に、さよならだ…………」
「……寂しくなるな」
おまえも、同じ気持ちでいてくれるなら、オレは嬉しい。
こんな別れを、オレたちは何度繰り返してきたのだろう?
それでも、何度でも、オレはおまえに会いたい。
お題「これからも、ずっと」
永遠の命を手に入れた。
だから、それをおまえにも分けて、共に生きる。
百年の時が過ぎ、オレたちの家族や友達や知り合いは、みんな死んでしまった。
でも、オレは、おまえさえいればいい。この世で一番特別な、おまえさえ隣にいればいい。
だが、おまえは違った。家族や友達や知り合いの死を、おまえは悼み、悲しむ。
そりゃあ、オレだって悲しいけどさ。
「おまえには、オレがいるよ」と言ったが、おまえの表情は暗いままだ。
永い時を、オレと過ごすおまえ。ある日、おまえは告げる。
「もう疲れた」と、一言。
悪いけど、不死の捨て方なんて、オレは知らない。
おまえは、両手で顔を覆い、膝から崩れた。
永遠に囚われたおまえは、そのことを嘆く。
それでもオレは、おまえを逃がしてやれない。逃がすもんか。
お題「誰よりも、ずっと」
人間でいる資格を剥奪された。
オレは、誰よりも自分のことが嫌いで仕方なかったから、そのせいで、人間不適合者として処罰されたのである。
今のオレは、一匹の毒虫だ。小さな虫けら。オレには、お似合いの命の器。
オレは体をくねらせ、おまえの足から這い上がり、肩に到達する。
そして、おまえがオレの存在に気付いた。
「意外と元気そうだな」
まあな。発声が出来ないので、心中で同意する。
横目でオレを見ながら、おまえは歩き出した。
「落ちるなよ?」
ま、善処するよ。
帰宅して。肩から降ろすために、毒虫のオレに触れるおまえは、怖いもの知らずだな?
「愛してる」と、手のひらの上のオレに告げられた。
オレが、世界で一番好きなおまえは、随分物好きで、シュミが悪い。でも、そのお陰で、こうして側にいられるんだから、嬉しいよ。
お題「春爛漫」
光があるところに影があり、花は咲いたら散るけれど。
「春っていいよな」とだけ、おまえに言うと、同意された。
おまえは覚えてないかもしれないが、オレは、あの春を覚えている。高校生になったばかりの頃、クラスがおまえと一緒だった。
またかよ。そう思った。中学の頃から、ずーっと同じなもんだから、話したことは、ほぼないのにフルネームを覚えてしまってたんだよな。
嫌いだったよ、おまえのこと。善人だから。
でも、おまえに恋をした。あれは、春だった。桜が美しく見えるようになったし、モンシロチョウが綺麗に見えたし、自分が独りだと気付いた。
オレの世界に、“寂しさ”を持ち込んで来たおまえは、本当に最悪で。
オレは、心の中の特別席におまえを座らせてしまったから、今でも隣を歩いている。
桜並木が、鮮やかに彩られていた。
お題「言葉にできない」
愛してると言わなくては、死んでしまう病に罹患した。
でも、オレは、おまえを“愛してない”から。どうしても言えない。
世界で一番好きだよ。世界で一番特別だよ。
だけど、愛することが出来ないでいる。オレの恋は、いつまでも花をつけない。
この恋は、祟りみたいなものなんだって、前に言っただろう?
おまえは、それを受け入れたけど。本当に感謝してるけど。愛せないんだ。
これは、オレの哲学の話。オレの定義では、オレはおまえを愛していない。
何も言えなくて、ごめん。
いきなり死んでしまうことを、ゆるさなくていい。
お題「遠くの空へ」
今は遠く。生まれ故郷を去り、親戚の元へ身を寄せてから、一週間。
故郷には、もう何もない。両親は、もういない。
だから、離れたはずなのに。何か、おかしい。
オレは、何故か君のことばかり考えている。
「あ…………」
そうか。これって、恋なんだ。
気付いてからは、怒涛の勢いだった。
君は、遠くにいるけど、会いに行けない距離じゃない。オレは、君に会いたい。
それだけで、行動するには充分だった。
電車を乗り継ぎ、故郷へ向かう。
君に会えたら、なんて声をかけようか?
お題「快晴」
空は、こんなに晴れているけど。ひまわりが太陽に向かって咲き誇っているけど。
オレの心の中には、暗雲が立ち込めていて、どしゃ降りの雨だ。
だって、おまえが、ひまわり畑に消えてしまったから。
探しても、探しても、見付からない。オレの大切な人。
おまえがいない晴天より、おまえが隣にいる嵐の中の方がいい。
だから、ずっと探している。
友人は、「もうやめなよ。見てらんないよ」と言った。
やめられるワケがない。
生きる意味がなくては、立っているのも億劫なんだよ。
お題「神様へ」
神様に人生相談したら、「好きな人のことを神様にするな」と言われた。
オレは、少し納得いかなかったが、頷く。
そうか。オレは、おまえを“神様”にしてしまっていたのか。
確かに、オレは、おまえを信仰している。だから、オレの理想のおまえから外れたら、おまえのことを憎むのだろう。
やっぱり、オレの恋は祟りだな。
お題「届かぬ想い」
永劫の片想い。オレのひとり遊び。恋愛ごっこ。
実らないはずの恋は、楽しかった。
一方的に、おまえに強い感情を抱いている。オレは、この感情に“恋”と名付けた。
でも、おまえにフラれた時に言ったよな? こんなのは、“祟り”なんだって。
オレは、延々と、おまえを祟っている。
どうか、振り向かないでくれ。
振り向かれたら、オレは、どうしたらいいのか分からなくなるから。
お題「ここではない、どこかで」
「あたしのことを覚えてる?」
覚えてるよ、クソ女。
「あたしは、あなた。あなたは、あたし」
そうだな。オレは、女だったら、年下だったらとか、そんなことを考えて、おまえを生み出した。
でも、おまえとは、「さよなら」したじゃねぇか。
「ここはね、あなたの夢の中だよ」
おいおい。勘弁してくれ。
「あなた、未練があるの。まだ、女だったらよかったのにとか、年下だったらよかったのにとか、考えてるの」
あーやだやだ。オレは、おまえが嫌いだ。
「あたしに人生を明け渡すのが嫌なら、しっかりしなさい」
はいはい。オレは、オレが大好きだよ。嘘じゃない。
このメンドクサイ人間を、アイツは愛してるんだ。だから、オレもいつかは、どこかへ辿り着いて、アイツを愛するんだよ。
お題「桜散る」
散らない桜を作ることに成功した。
「桜が散らないなら、その方がいいだろ」と、オレはおまえに言う。
しかし、おまえは、命には限りがあるから、向上心が宿るんじゃないかと返した。
「花が散らない世界は、停滞するって? オレは、そうは思わないな。永遠を手に入れて初めて、オレたちには余力が生まれるんだよ」
まあ、そんなものは仮の話。
でも、こういうことを言えるのも、余裕があるからなんだよな。
お題「無色の世界」
気付けば、オレたちは、色のない世界にいた。
「ここは、昔のオレの世界みたいだな」
オレは、呟くように言う。
「おまえと出会う前、オレの世界はこんな感じだった」
彩度と明度が低く、無味乾燥な世界。それはそれは、つまらなくて、みんなが敵のように感じていた世界。
「いつも、“外”が大嫌いだったよ」
おまえとの邂逅は、色彩との出会いだった。人生の光が、おまえだから。
「さて、どうやったら戻れるのかな?」
犯人であろうオレは、名探偵に、そう訊いた。
お題「もしも未来を見れるなら」
未来から、オレがやって来た。
「未来のオレとアイツが、どうなってるか知りたいか?」
未来のオレは尋ねる。
もちろん、オレは「知りたくない」と答えた。
オレは、答えとか結果とか真実とかを知るのが怖いのだ。だから、哲学やってんだよ。
「そうだと思った」と、未来のオレ。何しに来たんだ? コイツ。
「答えから遠ざかるのが大好きだもんな、オレは」
でも、そうだ。未来から、オレが来たということは、オレとアイツが、まだ一緒にいるのだろう。
だって、幸せなら、何も知りたくないオレに会いに来れるもんな。
お題「何もいらない」
もう、何もいらなかった。どうせ、いつか奪われるのだから。
それなのに、オレは、他者を求めてしまった。おまえだけが、例外で。欲しくて欲しくて、堪らない。
両親を奪われ、日常は瓦解し。平和は崩れ去り、子供が戦っている。こんな、クソみたいなオレたちの世界。
その残酷さを、おまえは分かっているはずなのに、平然と日々を送っている。きっと、それは強さなんだろうけど。オレには、恐ろしく感じる。
いらないはずだったのにな。そんな覚悟は。
お題「雫」
なんで泣いてるんだろう?
オレは、どうしたんだ?
ただ、そう、心にぽっかりと穴が空いたような気持ちになって。気付けば、涙が落ちていた。
大切な何かを失ったような気がしている。
大切な誰かを忘れているような気がしている。
煌めく雫のように、手のひらからこぼれてしまったものは、なんなのだろう?
お題「たとえ間違いだったとしても」
間違いじゃないものを挙げる方が、楽だと思う。
オレの、おまえに対する感情は、きっと始めから間違いだった。“好き”だけが肥大していくオレは、醜い芋虫みたい。おまえに触角を伸ばしている。
だけど、それでも、おまえは隣にいた。
いつか、オレもおまえみたいに善くなれるだろうか?
その時まで、傍にいてほしい。
お題「今日の心模様」
あさ、めをさます。
おそらは、はれ。
でも、なんだろう? おれは、ないてる。
「おはよう」
「……だあれ?」
きみは、だれ? しらない、おとなのひと。
「俺は…………」
「ねぇ、なみだのとめかた、しってる?」
「……悪い。知らない」
「そう…………」
きみが、どうしてそんなかおをするのか、おれにはわからない。
お題「ルール」
決まりごとってのは、上手くすり抜けるためにあると思うんだ。
そう言ったら、おまえは、「危険思想だ」と苦笑いを浮かべて、オレに呆れたな。
正しいかもな。いや、おまえは、“いつも正しい”よ。
そして、オレは、“いつも間違っている”んだ。
そういう、世界の摂理だから。
名探偵のおまえは、犯人のオレを、どうしたい?
きっと、ルールに従えって言うんだろうな。
お題「流れ星に願いを」
流星への願いは、ひとつ。
「オレを、消せ」
その願いは、少し歪んで叶った。オレは、透明人間になったのである。
意識も消してくれよ。存在を消してくれよ。
特にしたいこともないので、オレは、おまえの後ろを歩く。
すぐに分かった。オレのことを捜してるって。
でも、見付かるはずがない。なんせ、オレは透明だから。
毎日、毎日。おまえは、オレを捜す。
いくら、おまえが名探偵でも、流石に透明なオレを見付けるなんて無理だろ。
そう思っていた、ある日。
「そこにいるのか?」
虚空に向かって、おまえがそんなことを言うもんだから、幽霊みたいになったオレは、元から色のないそれを、両目からこぼした。
お題「善悪」
おまえは、いつも犯人だが、悪人じゃない。
単純な癖に複雑怪奇で、自罰的な男だ。ずっと、この世から消えたいと思ってる。
そんなおまえを、傲慢かもしれないが、救いたくて。この手を伸ばす。
それを掴んでくれたことは、本当に嬉しかった。でも、俺はまだ、おまえを救い切れていない。
ずっと側にいてほしいと、おまえは言った。今すぐ自分の前から消えてほしいと、おまえは言った。
俺は、ただ、おまえに生きていてほしくて、離れずにいる。
結局、俺のエゴなんだろうな。
お題「生きる意味」
生まれたことに、意味なんてない。生きてることに、意味なんてない。
オレは、そう思ってた。
でも、おまえが、側で生きてほしいと言ったから、オレの命に重さが出来たんだよ。
地に足のつかなかったオレ。世間から浮いていたオレ。
おまえは、オレの人生の光だ。これからも、オレを導いてくれ。
お題「刹那」
瞬きの間に、人間の生は終わる。つまり、オレとおまえの結び付きも、すぐにほどけてしまうもの。
永遠が欲しい。おまえを、永遠に呪っていたい。
オレは、愛してるが、いつまでも言えないままでいる。
「おまえのこと、祟ってる」
そんな風に嘯くばかりで、オレは愛を紡げない。
オレたちを結び付けているものは、赤い糸ではないのかもしれないな。重たい鎖か、禍々しい髪の毛の束か、はたまた冷たくて痛みを伴う氷か。
オレは、祟りだ。厄災だ。例え死んでも、おまえを想う。
お題「風に乗って」
あたしは、ふわふわ。空を飛んでいる。
見下ろす先には、あの男。
アイツは、あたし。あたしは、アイツ。
あたしは、アイツに殺された。
なんて、嘘。あたし、消えてあげたの。アイツとあたしが、完全に別たれる前に。
彼の隣に、女でないといられないと思ったんだよね。可哀想に。
でも、彼が、手を取ってくれたから。
ハッピーエンドまで、駆け抜けて。
お題「楽園」
外のことなんて、気にしなくていいんだよ。
ここは、“楽園”だからね。
オレとおまえ、ふたりだけの“楽園”なんだ。必要なものは、オレが全部揃えるから。
もちろん、おまえには健康でいてほしいし、楽しい気持ちでいてほしい。そのために、色々と用意したんだよ。
ここで、ずっと一緒に暮らそう。
その足首の鎖には、きっと、そのうち慣れるよ。