うちよそ
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朝早く、男は、今日も自身の飲食店「ちかみ」で仕事をしている。
本日のオススメのメニューは、子羊の串焼き。いい肉が手に入った。
千頭了一は、地下室にて、慣れた手つきで羊を解体しながら、メニューを考案している。
串焼きに、特製スパイスを添えて出そう。
千頭の店は、酒も出す。合わせるなら、ワインがいいだろう。
山あいにある「ちかみ」は、知る人ぞ知る店であるが、最近はSNSなどを通して来訪する者が増えている。ありがたいことだ。
昼が近くなると、客がやって来る。それまでに仕込みを済ませて、了一は、厨房に立つ。
今日、一番に来た客は、背の高い青年だった。
「いらっしゃい」
「こんにちは。ここ、ネットで噂になってたんで、来ました」
「それは、どうも。せっかくだから、カウンターへどうぞ。お話聞かせてください」
「はい。ぼく、日隈慎也っていいます。モデル兼写真家してます」
「俺は、千頭了一です。よろしくお願いします」
「よろしく、チカさん」
馴れ馴れしい、よく言えばフレンドリーな男は、了一に渾名を付けて呼ぶ。
了一は、別段怒るでも喜ぶでもなく、自然に対応した。
簡単な身の上話や、店の歴史を語り、料理を提供する。慎也は、子羊の串焼きを美味しそうに食べた。慎也の方も、自分のことをぽつぽつと話す。
それを、にこやかに聞く了一。客の話を聞くのは好きだ。初対面でも、距離が離れているからこそ、客は油断して、様々なことを喋る。まあ、今いる彼は、元から話好きなのかもしれないが。
昼過ぎ。慎也は、この辺りの風景を撮ってから、また夜に来ると言って退店した。
「ありがとうございました」
見送ってから、日隈慎也は“なし”だな、と判断する了一。
「いらっしゃい」
「千頭さんですか?! あの、私、ずっとここに来てみたくて……!」
次に来たのは、若い女だった。
色々と話した結果。この女は“あり”にする。
夜。宣言通りに、慎也は、再びやって来た。
「こんばんは、チカさん」
「いらっしゃい。慎也くん」
客が複数いるので、長話は出来ないが、撮った風景について聞く。
夜が更けていくにつれて、客は帰っていった。最後に残ったのは、日隈慎也。彼ひとり。
「そろそろ帰らないとなぁ。また来ますね」
「はい。お気を付けて。この辺は、野生の動物が飛び出して来ますから」
「はーい。さよなら、チカさん」
手を振り、彼は去って行く。それを見送ってから、了一は、地下室へ向かった。
◆◆◆
忘れ物をしたことに気付く。
「やばっ。スマホない」
ちかみに戻ると、了一の姿はなく、厨房だけが灯りに照らされていた。自分が座っていた席の背もたれに立てかけたかのように、落としていかれたスマホ。それを回収し、帰ろうとしたところで。
「————!」
何か、人の声のようなものが聴こえた。
「チカさん?」
厨房に入り、奥へ向かう。地下室へ続く階段があった。
階段を降りて行くと、そこには鹿肉が吊るされていて、解体場であることが分かる。
その解体場の、鹿肉より奥に、液体を弾くエプロンやゴム手袋や長靴を身に付けた了一がいた。何かの肉を解体しているらしい。
「チカさ————」
近付いてから、理解する。千頭了一が、首のない人間を吊るして解体していることを。
「慎也くん…………」
「これ、人の…………」
「見られたからには、死んでもらう」
大きな肉切り包丁を手に、了一が向かって来る。
「ま、待って! 待って、チカさん! 秘密にするから、写真撮らせて!」
「はぁ?」
「ぼく、血が好きなんだ。だから、お願い! ぼくに見せて!」
「変態?」
了一は、包丁を持った腕を下ろし、怪訝な顔をした。
「チカさんは? なんで人を解体してんの?」
「食べるためだよ」
変態じゃん。という言葉を呑み込む慎也。
「まあ、君を殺すと色々と面倒そうだから、共犯になるなら、それでも構わないが……裏切ったら、殺す……」
「裏切らないよ! 約束する」
食人鬼と血液嗜好症の男は、約束を交わした。
本日のオススメのメニューは、子羊の串焼き。いい肉が手に入った。
千頭了一は、地下室にて、慣れた手つきで羊を解体しながら、メニューを考案している。
串焼きに、特製スパイスを添えて出そう。
千頭の店は、酒も出す。合わせるなら、ワインがいいだろう。
山あいにある「ちかみ」は、知る人ぞ知る店であるが、最近はSNSなどを通して来訪する者が増えている。ありがたいことだ。
昼が近くなると、客がやって来る。それまでに仕込みを済ませて、了一は、厨房に立つ。
今日、一番に来た客は、背の高い青年だった。
「いらっしゃい」
「こんにちは。ここ、ネットで噂になってたんで、来ました」
「それは、どうも。せっかくだから、カウンターへどうぞ。お話聞かせてください」
「はい。ぼく、日隈慎也っていいます。モデル兼写真家してます」
「俺は、千頭了一です。よろしくお願いします」
「よろしく、チカさん」
馴れ馴れしい、よく言えばフレンドリーな男は、了一に渾名を付けて呼ぶ。
了一は、別段怒るでも喜ぶでもなく、自然に対応した。
簡単な身の上話や、店の歴史を語り、料理を提供する。慎也は、子羊の串焼きを美味しそうに食べた。慎也の方も、自分のことをぽつぽつと話す。
それを、にこやかに聞く了一。客の話を聞くのは好きだ。初対面でも、距離が離れているからこそ、客は油断して、様々なことを喋る。まあ、今いる彼は、元から話好きなのかもしれないが。
昼過ぎ。慎也は、この辺りの風景を撮ってから、また夜に来ると言って退店した。
「ありがとうございました」
見送ってから、日隈慎也は“なし”だな、と判断する了一。
「いらっしゃい」
「千頭さんですか?! あの、私、ずっとここに来てみたくて……!」
次に来たのは、若い女だった。
色々と話した結果。この女は“あり”にする。
夜。宣言通りに、慎也は、再びやって来た。
「こんばんは、チカさん」
「いらっしゃい。慎也くん」
客が複数いるので、長話は出来ないが、撮った風景について聞く。
夜が更けていくにつれて、客は帰っていった。最後に残ったのは、日隈慎也。彼ひとり。
「そろそろ帰らないとなぁ。また来ますね」
「はい。お気を付けて。この辺は、野生の動物が飛び出して来ますから」
「はーい。さよなら、チカさん」
手を振り、彼は去って行く。それを見送ってから、了一は、地下室へ向かった。
◆◆◆
忘れ物をしたことに気付く。
「やばっ。スマホない」
ちかみに戻ると、了一の姿はなく、厨房だけが灯りに照らされていた。自分が座っていた席の背もたれに立てかけたかのように、落としていかれたスマホ。それを回収し、帰ろうとしたところで。
「————!」
何か、人の声のようなものが聴こえた。
「チカさん?」
厨房に入り、奥へ向かう。地下室へ続く階段があった。
階段を降りて行くと、そこには鹿肉が吊るされていて、解体場であることが分かる。
その解体場の、鹿肉より奥に、液体を弾くエプロンやゴム手袋や長靴を身に付けた了一がいた。何かの肉を解体しているらしい。
「チカさ————」
近付いてから、理解する。千頭了一が、首のない人間を吊るして解体していることを。
「慎也くん…………」
「これ、人の…………」
「見られたからには、死んでもらう」
大きな肉切り包丁を手に、了一が向かって来る。
「ま、待って! 待って、チカさん! 秘密にするから、写真撮らせて!」
「はぁ?」
「ぼく、血が好きなんだ。だから、お願い! ぼくに見せて!」
「変態?」
了一は、包丁を持った腕を下ろし、怪訝な顔をした。
「チカさんは? なんで人を解体してんの?」
「食べるためだよ」
変態じゃん。という言葉を呑み込む慎也。
「まあ、君を殺すと色々と面倒そうだから、共犯になるなら、それでも構わないが……裏切ったら、殺す……」
「裏切らないよ! 約束する」
食人鬼と血液嗜好症の男は、約束を交わした。