創作企画「冥冥の澱」2
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「たすけられなくて、ごめん」と、燈哉に言われた。
「謝るのは、オレの方だろ……オレなんかと関わらせて、ごめん…………」
「聖爾がいないのは、嫌だ……だから……」
「燈哉が逃げるなら、追わないつもりだった。燈哉に嫌われても仕方ないと思った。燈哉は、何も悪くないから」
それで、来目聖爾の一生を終わらせる気でいた。
次に生まれたら、赤城燈哉の“当たり”になれるかな?
「愛してるから、側にいさせてくれ……」
「聖爾…………」
燈哉の目から、涙がこぼれた。
「燈哉のことを、愛してる」
頬に手を添えて、指で涙を拭う。そのまましたキスは、拒まれなかった。
「ごめんな……」
呟くように言い、燈哉を抱き締める。
好きになって、ごめん。離れられなくて、ごめん。化物に生まれて、ごめん。これしかなくて、ごめん。
「オレの正体なんて、話すべきじゃないことくらい、分かってたんだ。燈哉を傷付けるから。でも、オレは自分勝手で、燈哉に全部受け入れてほしくて……オレのせいで、燈哉まで道を外れて……」
「聖爾、もういいんだ。俺は、聖爾を選んだんだから。ずっと側にいるから……」
「ありがとう、燈哉……」
この血塗れの手では、一番好きな人のことすら、守れない。
燈哉は、化物の中から、人の心を掬い上げてくれたのに。
オレは、どうしてオレになったんだ?
◆◆◆
燈哉は、聖爾の腕の中で眠っている。
自分のせいで、負わなくていい傷を負った恋人。せめて、夢の中でくらいは幸せでいてほしいと願った。
愛してるのに、幸せに出来ないのが辛く、悲しい。
「燈哉」
ごめん。何度謝ろうが、どうしようもない。
ああ、夢の中だな、と気付く。
「天狐、オレは結局、燈哉を酷い目に遭わせたよ」
『そうかもしれないね』
真っ暗な空間に、ひとりと1匹。あるいは2匹の姿だけが浮かび上がっている。
「オレは、どうすればよかったんだ?」
『好きに生きなよ』
「はっ。燈哉も手放さねぇし、人も殺し続けて、その上好きに生きるのか?」
『だって、どっちも聖爾の好きなものだから』
「どっちか選べるなら、燈哉を選ぶ」
『時光は、好きに生きろって言ってた』
「は? 誰だよ?」
『聖爾の先祖。狐ヶ崎の始祖』
「知るかよ」
狐は、笑う。
『時光は、人殺しだったよ。でも、人生を楽しく生きて、死んだ。“そういうこと”のために、狐ヶ崎の力を使えって、最期に言った』
「ソイツ、ただの馬鹿だろ」
『自分が楽しくないなんて、なんのための人生なの?』
「オレは自分なんて、もうどうでもいい。燈哉が幸せでいてくれるなら、死んだっていい」
『でも、生きてと言われた。聖爾がいないと、燈哉は幸せじゃないんだよ』
「………」
聖爾は、人間に近付き過ぎたし、燈哉は、化物に近付き過ぎた。
変化は、不可逆。ふたりの運命は、歪な形のパズルピースになり、お互いを放さない。
「謝るのは、オレの方だろ……オレなんかと関わらせて、ごめん…………」
「聖爾がいないのは、嫌だ……だから……」
「燈哉が逃げるなら、追わないつもりだった。燈哉に嫌われても仕方ないと思った。燈哉は、何も悪くないから」
それで、来目聖爾の一生を終わらせる気でいた。
次に生まれたら、赤城燈哉の“当たり”になれるかな?
「愛してるから、側にいさせてくれ……」
「聖爾…………」
燈哉の目から、涙がこぼれた。
「燈哉のことを、愛してる」
頬に手を添えて、指で涙を拭う。そのまましたキスは、拒まれなかった。
「ごめんな……」
呟くように言い、燈哉を抱き締める。
好きになって、ごめん。離れられなくて、ごめん。化物に生まれて、ごめん。これしかなくて、ごめん。
「オレの正体なんて、話すべきじゃないことくらい、分かってたんだ。燈哉を傷付けるから。でも、オレは自分勝手で、燈哉に全部受け入れてほしくて……オレのせいで、燈哉まで道を外れて……」
「聖爾、もういいんだ。俺は、聖爾を選んだんだから。ずっと側にいるから……」
「ありがとう、燈哉……」
この血塗れの手では、一番好きな人のことすら、守れない。
燈哉は、化物の中から、人の心を掬い上げてくれたのに。
オレは、どうしてオレになったんだ?
◆◆◆
燈哉は、聖爾の腕の中で眠っている。
自分のせいで、負わなくていい傷を負った恋人。せめて、夢の中でくらいは幸せでいてほしいと願った。
愛してるのに、幸せに出来ないのが辛く、悲しい。
「燈哉」
ごめん。何度謝ろうが、どうしようもない。
ああ、夢の中だな、と気付く。
「天狐、オレは結局、燈哉を酷い目に遭わせたよ」
『そうかもしれないね』
真っ暗な空間に、ひとりと1匹。あるいは2匹の姿だけが浮かび上がっている。
「オレは、どうすればよかったんだ?」
『好きに生きなよ』
「はっ。燈哉も手放さねぇし、人も殺し続けて、その上好きに生きるのか?」
『だって、どっちも聖爾の好きなものだから』
「どっちか選べるなら、燈哉を選ぶ」
『時光は、好きに生きろって言ってた』
「は? 誰だよ?」
『聖爾の先祖。狐ヶ崎の始祖』
「知るかよ」
狐は、笑う。
『時光は、人殺しだったよ。でも、人生を楽しく生きて、死んだ。“そういうこと”のために、狐ヶ崎の力を使えって、最期に言った』
「ソイツ、ただの馬鹿だろ」
『自分が楽しくないなんて、なんのための人生なの?』
「オレは自分なんて、もうどうでもいい。燈哉が幸せでいてくれるなら、死んだっていい」
『でも、生きてと言われた。聖爾がいないと、燈哉は幸せじゃないんだよ』
「………」
聖爾は、人間に近付き過ぎたし、燈哉は、化物に近付き過ぎた。
変化は、不可逆。ふたりの運命は、歪な形のパズルピースになり、お互いを放さない。