創作企画「冥冥の澱」2
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燈哉は、聖爾が人殺しの化物でもいいと言ったけれど。その言葉は、本当に嬉しいけれど。
「燈哉は、分かってねぇんだ…………」
「聖爾?」
「オレは…………」
両目から涙を流す獣の男。
赤城燈哉は、ぎょっとした。
「聖爾……!?」
「オレを見てくれ……」
「見てるよ」
聖爾を抱き締めて、後頭部を撫でる。
聖爾の表層は、もうボロボロだった。深層では、化物が鳴いている。
「燈哉がいないと、ダメなんだ……」
「いるよ」
「オレは、もう…………」
燈哉を、力強く抱き締め返す。
こんなもの、いらなかったのに。恋とか愛とか、いらなかった。
「今更、人間にはなれねぇよ……」
どんなに人に近付いたって、違いが色濃くなるばかりで。身の程を弁えて、人を好きになんかならなければ。感情を殺せてしまえば。それが出来れば良かったのに。
涙が止まった後。
「燈哉」
「ん?」
「見せるものがある」
燈哉をベッドに下ろしてから、押し入れの前まで行き、戸を開く。中には紙袋がたくさん。
「燈哉、来てくれ」
「うん」
そして、燈哉が見たものは。無数の紙袋と、無造作に中に突っ込まれた札束。
「これ…………」
「人殺しの対価だよ」
ひとり殺せば、札束がひとつ増える。特に意味を感じていなかったが、今では墓標のようにも思えた。
「オレは、本当はコンビニの店員じゃねぇ。反社会的組織に雇われた人殺しの呪術師だ」
天狐が憑いて、25年。人を殺し始めて、21年。ひとりで生きるようになって、銀行に預けられないような金を貯め続けて、9年。人間に近付いて、数ヶ月。特別が出来てから、まだ、ほんの少し。赤城燈哉を殺せないと思って、2日。
燈哉に「消えろ」と言われたら、消える。逃げるなら、追わない。もう関わらない。そんな生に意味などないから、潔く死のう。
「オレは、生まれながらの人殺しだよ。昔から、狐が憑いてる。オレ自身も、狐の化物なんだ」
大きく育った怪物は、世界で独りきりだったし、それで良かった。同じ種はいない。怪物が死んでも、誰も泣かない。
ある日突然、怪物の世界にひとりの人間が現れた。最初は、獲物かと思われた。でも、美味しそうじゃない。その人間のことを考えると、無関係なその人のことを思うと、ゆるせなくなった。殺してしまおうかとも考えていた。
殺さなくて良かった。恋人になれて良かった。例え、それが一瞬だとしても。
燈哉がいらないなら、こんな自分は捨ててしまおう。ゴミ箱行きだ。気持ち悪いからと、捨ててきたカップケーキみたいに。
「燈哉は、分かってねぇんだ…………」
「聖爾?」
「オレは…………」
両目から涙を流す獣の男。
赤城燈哉は、ぎょっとした。
「聖爾……!?」
「オレを見てくれ……」
「見てるよ」
聖爾を抱き締めて、後頭部を撫でる。
聖爾の表層は、もうボロボロだった。深層では、化物が鳴いている。
「燈哉がいないと、ダメなんだ……」
「いるよ」
「オレは、もう…………」
燈哉を、力強く抱き締め返す。
こんなもの、いらなかったのに。恋とか愛とか、いらなかった。
「今更、人間にはなれねぇよ……」
どんなに人に近付いたって、違いが色濃くなるばかりで。身の程を弁えて、人を好きになんかならなければ。感情を殺せてしまえば。それが出来れば良かったのに。
涙が止まった後。
「燈哉」
「ん?」
「見せるものがある」
燈哉をベッドに下ろしてから、押し入れの前まで行き、戸を開く。中には紙袋がたくさん。
「燈哉、来てくれ」
「うん」
そして、燈哉が見たものは。無数の紙袋と、無造作に中に突っ込まれた札束。
「これ…………」
「人殺しの対価だよ」
ひとり殺せば、札束がひとつ増える。特に意味を感じていなかったが、今では墓標のようにも思えた。
「オレは、本当はコンビニの店員じゃねぇ。反社会的組織に雇われた人殺しの呪術師だ」
天狐が憑いて、25年。人を殺し始めて、21年。ひとりで生きるようになって、銀行に預けられないような金を貯め続けて、9年。人間に近付いて、数ヶ月。特別が出来てから、まだ、ほんの少し。赤城燈哉を殺せないと思って、2日。
燈哉に「消えろ」と言われたら、消える。逃げるなら、追わない。もう関わらない。そんな生に意味などないから、潔く死のう。
「オレは、生まれながらの人殺しだよ。昔から、狐が憑いてる。オレ自身も、狐の化物なんだ」
大きく育った怪物は、世界で独りきりだったし、それで良かった。同じ種はいない。怪物が死んでも、誰も泣かない。
ある日突然、怪物の世界にひとりの人間が現れた。最初は、獲物かと思われた。でも、美味しそうじゃない。その人間のことを考えると、無関係なその人のことを思うと、ゆるせなくなった。殺してしまおうかとも考えていた。
殺さなくて良かった。恋人になれて良かった。例え、それが一瞬だとしても。
燈哉がいらないなら、こんな自分は捨ててしまおう。ゴミ箱行きだ。気持ち悪いからと、捨ててきたカップケーキみたいに。