創作企画「冥冥の澱」2
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こんな夢を見た。
「俺に近付くな! 人殺し!」
「燈哉……」
「お前なんか、嫌いだ……!」
「……ごめん」
もういらない。死んじまえ。
「喰らえ、天狐」
来目聖爾は、自身を殺した。
「はぁっ……はぁ…………」
ベッドの上で飛び起きる。体が嫌な汗で濡れていた。気持ち悪い。吐き気がする。
「燈哉…………」
赤城燈哉に嫌われたら。拒絶されたら。いらないと言われたら。
アイツを殺して、オレも死ぬはずだった。でも、夢の中では。ただ、自分だけを消していた。
自分はもう、燈哉を殺せないんだと悟る。
そのことは、聖爾にとっては衝撃だった。
まただ。中途半端に、人間に近付いている。
「…………」
どうすればいい? 殺しをやめる? 今更、そんなことが出来るのか?
無理。無理だ。
「オレのことを、全部受け入れてくれよぉ……」
聖爾は、物心ついてから初めて涙を流した。黒い布団が濡れて、黒を濃くする。
だけど、知っている。“普通の人間”は、“化物”なんか愛さない。
◆◆◆
依頼を済ませた後、聖爾は、組織の連絡係の男に言った。
「もうやめる」
「は? 何を?」
「殺し」
「ああ?」
途端に、ヘラヘラしていた男の纏う空気が変わる。車中が緊張に包まれた。
「聖爾くん、やめますって言われて、そうですかーなんてならないことくらい分かるよね?」
「……冗談だよ」
「なぁんだ! 冗談か!」と、男は笑う。空気が戻った。
「……まともに生きていけると思うなよ?」
「…………」
「でもね、俺なら、君のこと愛してあげるよ。人殺しの聖爾くん!」
「あんたは、いらねぇ」
それでも、赤城燈哉しかいらない。
「冷たいなー」
「帰る」
「はい、これ報酬。お疲れ様。またね」
「……ああ」
粗雑に札束の入った封筒を受け取り、車を出る。バイクに跨がり、家へと向かった。
帰宅すると、すぐにシャワーを浴びる。鏡に映る自分が、酷く汚れているような気がした。
「燈哉…………」
名前を呼んでも、当然返事はない。
浴室を出て、身支度を済ませてから、ベッドに腰かける。ローテーブルの上のスマホを取り、メッセージアプリを開いた。
『燈哉』
後に続ける文章は、思い付かない。
時刻は、深夜。燈哉は、たぶん寝ている。
既読がつかないままの画面を、じっと眺めた。
夢を見ている。
『コン!』
「天狐……」
『燈哉に捨てられたくないの?』
「嫌だ」
『話さなければいいのに』
「きっと、いつか耐えられなくなる」
『受け入れてくれるかもよ?』
「無理だろ…………」
壊れてしまった化物は、自身を呪った。
「俺に近付くな! 人殺し!」
「燈哉……」
「お前なんか、嫌いだ……!」
「……ごめん」
もういらない。死んじまえ。
「喰らえ、天狐」
来目聖爾は、自身を殺した。
「はぁっ……はぁ…………」
ベッドの上で飛び起きる。体が嫌な汗で濡れていた。気持ち悪い。吐き気がする。
「燈哉…………」
赤城燈哉に嫌われたら。拒絶されたら。いらないと言われたら。
アイツを殺して、オレも死ぬはずだった。でも、夢の中では。ただ、自分だけを消していた。
自分はもう、燈哉を殺せないんだと悟る。
そのことは、聖爾にとっては衝撃だった。
まただ。中途半端に、人間に近付いている。
「…………」
どうすればいい? 殺しをやめる? 今更、そんなことが出来るのか?
無理。無理だ。
「オレのことを、全部受け入れてくれよぉ……」
聖爾は、物心ついてから初めて涙を流した。黒い布団が濡れて、黒を濃くする。
だけど、知っている。“普通の人間”は、“化物”なんか愛さない。
◆◆◆
依頼を済ませた後、聖爾は、組織の連絡係の男に言った。
「もうやめる」
「は? 何を?」
「殺し」
「ああ?」
途端に、ヘラヘラしていた男の纏う空気が変わる。車中が緊張に包まれた。
「聖爾くん、やめますって言われて、そうですかーなんてならないことくらい分かるよね?」
「……冗談だよ」
「なぁんだ! 冗談か!」と、男は笑う。空気が戻った。
「……まともに生きていけると思うなよ?」
「…………」
「でもね、俺なら、君のこと愛してあげるよ。人殺しの聖爾くん!」
「あんたは、いらねぇ」
それでも、赤城燈哉しかいらない。
「冷たいなー」
「帰る」
「はい、これ報酬。お疲れ様。またね」
「……ああ」
粗雑に札束の入った封筒を受け取り、車を出る。バイクに跨がり、家へと向かった。
帰宅すると、すぐにシャワーを浴びる。鏡に映る自分が、酷く汚れているような気がした。
「燈哉…………」
名前を呼んでも、当然返事はない。
浴室を出て、身支度を済ませてから、ベッドに腰かける。ローテーブルの上のスマホを取り、メッセージアプリを開いた。
『燈哉』
後に続ける文章は、思い付かない。
時刻は、深夜。燈哉は、たぶん寝ている。
既読がつかないままの画面を、じっと眺めた。
夢を見ている。
『コン!』
「天狐……」
『燈哉に捨てられたくないの?』
「嫌だ」
『話さなければいいのに』
「きっと、いつか耐えられなくなる」
『受け入れてくれるかもよ?』
「無理だろ…………」
壊れてしまった化物は、自身を呪った。