創作企画「冥冥の澱」2
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大学構内で、最近耳にしたばかりの言葉が聴こえてきた。
「狐ヶ崎!」
「はい」
「認知科学のレポートのことで相談があるんだけどさぁ。いい?」
「はい。私でよければ」
狐ヶ崎と呼ばれたポニーテールの男は、狐顔で微笑んでいる。
赤城燈哉は、まさか、と思った。
こんなところに、来目聖爾の血縁者が? いや、単なる偶然か? でも、狐ヶ崎なんて名前は、そんなに出てくるものでもないはず。
つい、“狐ヶ崎”を追ってしまう。
彼らが座ったベンチの隣のベンチに座り、耳を澄ました。
「どう? 読んでみて」
「いいと思います。具体例もありますし、引用も効果的で」
「そっか! 安心した。次、哲学だろ? 一緒に出ようぜ」
「はい」
ふたりは、哲学科の教室へ向かって行く。
今ので分かったことは。
・おそらく19~22歳の狐ヶ崎という男が、同じ大学に在籍している
・狐ヶ崎は、認知科学のレポートを書いている
・狐ヶ崎は、哲学科の生徒のようだ
聖爾とは、全く似ていないが、だからといって血縁関係がないとは言い切れない。
しかし、聖爾は肉親に会いたいとは思っていないし、“狐の化物”については、まだ黙したままである。それを探って、どうする?
聖爾のことは、全部知りたい。でも、聖爾の気持ちは?
教えることを躊躇っているのだろうか。
聖爾の好きなものって?
“まだ秘密だ”
それは一体、いつなら話してくれる?
赤城燈哉は、メッセージアプリで、聖爾に今日会えるかどうか伺った。
『今日は予定なし』
『分かった』
『後で行く』
『待ってる』
◆◆◆
「聖爾」
「ん?」
「……なんでもない」
「…………」
いつものように聖爾の部屋で並んで座っているのだが、あの件について、何も切り出せずにいる。
「燈哉」
頬に手を添えられ、キスされた。
「んっ……」
思考が途切れて、“好き”しかなくなる。聖爾の舌に口内をねぶられ、気持ちいい。
「聖爾…………」
その後、燈哉は、聖爾に抱かれた。燈哉の頼みを素直に聞き、聖爾は見えないところにだけ噛み痕をつける。二の腕や、脇腹や、内腿に。
もう、聖爾が痛いくらい噛むことは、ほとんどない。
自分に懐いている獣のよう。
事後。燈哉は、再び考える。“狐の化物”と“狐ヶ崎”について。自分に腕と脚で抱き着き、眠っている恋人。すーすーと寝息を立て、穏やかな顔で寝ている聖爾。
訊いたら、教えてくれるのか?
答えが知りたい。
けれど、どうしよう?
聖爾が起きるまでに決めようと思う。
「狐ヶ崎!」
「はい」
「認知科学のレポートのことで相談があるんだけどさぁ。いい?」
「はい。私でよければ」
狐ヶ崎と呼ばれたポニーテールの男は、狐顔で微笑んでいる。
赤城燈哉は、まさか、と思った。
こんなところに、来目聖爾の血縁者が? いや、単なる偶然か? でも、狐ヶ崎なんて名前は、そんなに出てくるものでもないはず。
つい、“狐ヶ崎”を追ってしまう。
彼らが座ったベンチの隣のベンチに座り、耳を澄ました。
「どう? 読んでみて」
「いいと思います。具体例もありますし、引用も効果的で」
「そっか! 安心した。次、哲学だろ? 一緒に出ようぜ」
「はい」
ふたりは、哲学科の教室へ向かって行く。
今ので分かったことは。
・おそらく19~22歳の狐ヶ崎という男が、同じ大学に在籍している
・狐ヶ崎は、認知科学のレポートを書いている
・狐ヶ崎は、哲学科の生徒のようだ
聖爾とは、全く似ていないが、だからといって血縁関係がないとは言い切れない。
しかし、聖爾は肉親に会いたいとは思っていないし、“狐の化物”については、まだ黙したままである。それを探って、どうする?
聖爾のことは、全部知りたい。でも、聖爾の気持ちは?
教えることを躊躇っているのだろうか。
聖爾の好きなものって?
“まだ秘密だ”
それは一体、いつなら話してくれる?
赤城燈哉は、メッセージアプリで、聖爾に今日会えるかどうか伺った。
『今日は予定なし』
『分かった』
『後で行く』
『待ってる』
◆◆◆
「聖爾」
「ん?」
「……なんでもない」
「…………」
いつものように聖爾の部屋で並んで座っているのだが、あの件について、何も切り出せずにいる。
「燈哉」
頬に手を添えられ、キスされた。
「んっ……」
思考が途切れて、“好き”しかなくなる。聖爾の舌に口内をねぶられ、気持ちいい。
「聖爾…………」
その後、燈哉は、聖爾に抱かれた。燈哉の頼みを素直に聞き、聖爾は見えないところにだけ噛み痕をつける。二の腕や、脇腹や、内腿に。
もう、聖爾が痛いくらい噛むことは、ほとんどない。
自分に懐いている獣のよう。
事後。燈哉は、再び考える。“狐の化物”と“狐ヶ崎”について。自分に腕と脚で抱き着き、眠っている恋人。すーすーと寝息を立て、穏やかな顔で寝ている聖爾。
訊いたら、教えてくれるのか?
答えが知りたい。
けれど、どうしよう?
聖爾が起きるまでに決めようと思う。