創作企画「冥冥の澱」2
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近く、狐ケ崎といふ土地より来し男が、我が支ふる藤原の家抱への陰陽師になりき。
男の名は、時光。軽薄なる笑みを浮かべつつ、ろくにもあらぬことばかり宣ふくらし者なり。我には、さ見えき。
あるじの通ひ路を、やむべしと言ひき。
せちなるすだきを欠席せよと言ひき。
侍女にいろふが幾度もありき。
時光は、大飯食らひに、働きに見合はぬ量を要求す。さるは、米をなり。絶えて、呆れ返る。
されど、ある日。
あるじ通ひつめたりし女が、毒婦なるが分かれり。あるじを亡き者とし、財を奪はむとせるなり。
件のすだきは、悪銭のやり取りの行はれしとし、出席する者は皆、裁かれき。
侍女のひとりは、時光に悪漢より守らせきと喜べり。
時光は、ろくでなしなり。されど、優秀なる占術者なることは、認むべし。無念なれど。
それに、あやつには、神狐憑けり。あれは、時光には大それた力と思へど、藤原の家の役に立たば、我は黙らむ。
時光は目障りなれど、それよりも心憂きは、雲居がきな臭きことなり。
我が読み通りならば、間諜潜めり。藤原を恨みる者の手先か。財を狙ふ痴れ者か。
やつばら炙りいだし、これを葬る。我は、藤原の家の女官にて、時光と組むことを術なしとせり。
時光は、例の軽薄なる笑みに承りき。これをよすがとするは、なかなか遺憾なり。
我と時光は、雲居の間者どもを神狐に伺ひき。
三人ありときたり。さるは、ひとりは衛士なりき。
衛るべき者の首を狙ふ卑劣漢。赦さばおかれぬ。
時光に告ぐと、楽しさうに笑ひき。
時光は、神狐に頼むと、それぞれ三人を一呑みす。後には、骸も残らず。
あな、天は何故、かかる男に強大なる力与へたまひきや。
かくて、何故、我は。あやつを好きてけりや。
散々、冷たくしこし我に偲ばるとも惑はするばかりならむと案、秘むることにせり。
されど、時光は性根が悪しければ、この想ひを神狐より伝へられ、素知らぬ顔に我に近付き来けむ。
そのために、我は、時光とめおとになりにけり。遺憾なり。
さても、まんまと時光の術中に嵌まりし我は、子をまうけき。我が子は、らうたし。
時光は、ある日言ひき。
我が死にし後、いみじきことになるやもしれねど、泣くことはあらぬ、と。
誰泣くものか。
時光は、我が生涯の敵なり。思ひたれど、そはそれなり。
あやつが死してなくは、狐ばかりならむ。
男の名は、時光。軽薄なる笑みを浮かべつつ、ろくにもあらぬことばかり宣ふくらし者なり。我には、さ見えき。
あるじの通ひ路を、やむべしと言ひき。
せちなるすだきを欠席せよと言ひき。
侍女にいろふが幾度もありき。
時光は、大飯食らひに、働きに見合はぬ量を要求す。さるは、米をなり。絶えて、呆れ返る。
されど、ある日。
あるじ通ひつめたりし女が、毒婦なるが分かれり。あるじを亡き者とし、財を奪はむとせるなり。
件のすだきは、悪銭のやり取りの行はれしとし、出席する者は皆、裁かれき。
侍女のひとりは、時光に悪漢より守らせきと喜べり。
時光は、ろくでなしなり。されど、優秀なる占術者なることは、認むべし。無念なれど。
それに、あやつには、神狐憑けり。あれは、時光には大それた力と思へど、藤原の家の役に立たば、我は黙らむ。
時光は目障りなれど、それよりも心憂きは、雲居がきな臭きことなり。
我が読み通りならば、間諜潜めり。藤原を恨みる者の手先か。財を狙ふ痴れ者か。
やつばら炙りいだし、これを葬る。我は、藤原の家の女官にて、時光と組むことを術なしとせり。
時光は、例の軽薄なる笑みに承りき。これをよすがとするは、なかなか遺憾なり。
我と時光は、雲居の間者どもを神狐に伺ひき。
三人ありときたり。さるは、ひとりは衛士なりき。
衛るべき者の首を狙ふ卑劣漢。赦さばおかれぬ。
時光に告ぐと、楽しさうに笑ひき。
時光は、神狐に頼むと、それぞれ三人を一呑みす。後には、骸も残らず。
あな、天は何故、かかる男に強大なる力与へたまひきや。
かくて、何故、我は。あやつを好きてけりや。
散々、冷たくしこし我に偲ばるとも惑はするばかりならむと案、秘むることにせり。
されど、時光は性根が悪しければ、この想ひを神狐より伝へられ、素知らぬ顔に我に近付き来けむ。
そのために、我は、時光とめおとになりにけり。遺憾なり。
さても、まんまと時光の術中に嵌まりし我は、子をまうけき。我が子は、らうたし。
時光は、ある日言ひき。
我が死にし後、いみじきことになるやもしれねど、泣くことはあらぬ、と。
誰泣くものか。
時光は、我が生涯の敵なり。思ひたれど、そはそれなり。
あやつが死してなくは、狐ばかりならむ。