創作企画「冥冥の澱」2
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デートというものをした方がいいのだろうかと考えた。
でも、どこに?
「燈哉、どこか行きたいとこあるか?」
「あー」
聖爾の質問に答えあぐねた。迂闊に海外を挙げれば、全額聖爾が出して旅行の手配をしそうだし、高級なホテルのランチなどでも、やっぱり全額出しそうだ。
「東京国立博物館、かな」
「連れてく」
決断が早過ぎる。まあ、観覧料は、大学生の自分は500円で、一般は1000円だから、大丈夫だろう。
そして、ふたりは日程を合わせ、東京国立博物館へ行くことにした。電車に乗り、最寄り駅で降りる。
聖爾は渋ったが、それぞれ入館料を払い、展示を見た。
聖爾には、正直、彫刻や絵画や古書のことはよく分からない。しかし、燈哉が興味深そうにしてる顔を見るのが楽しかった。
燈哉は、その時代の科学において傑作である品々を見て、色々と思うところがある。芸術的価値より、科学的価値。それが気になる。
展示を見ていくうちに、武器・武具のコーナーに来た。
それらは、聖爾も興味がある。特に、刀。
「燈哉。狐ヶ崎って刀、知ってるか?」
ここにはないが、思い出したので訊いてみる。
「いや、知らないな」
「鎌倉時代に作られた太刀で、国宝らしい」
「へぇ。聖爾、なんでその刀のこと知ってるんだ?」
「狐ヶ崎で検索したら、出て来た。オレの父親が、狐ヶ崎って苗字だから、気まぐれに調べたことがある」
「聖爾の、父親…………」
突然の家族の話に戸惑う。
ふたりには分からないことだが、太刀、狐ヶ崎と狐ヶ崎家は無関係である。たまたま、同じ土地を由来とする名前を冠しているだけ。
「会ってみたいか?」
「いいや。どうでもいいな」
「そうか」
本当に、心の底から、そう思っているのが分かった。
“狐の化物だから”
その言葉の意味が、少し理解出来た気がする。つまり、聖爾のルーツに、“狐”がある、ということ。では、“化物”とは? 知らないことは、知りたい。何より、恋人のことだから。
けれど、それを今訊くのは躊躇われた。
脳内で、いつか尋ねるリストに入れるだけに留める。
その後は、特に聖爾からの言及はなく、展示を見終えた。そして、お土産を売っているところへ行く。
「燈哉」
「欲しいものがあったら、自分で買うよ」
「でも」
「でも、じゃない」
「オレは、これがいいと思う」
聖爾が指差したのは、八橋蒔絵螺鈿硯箱モチーフの本革の手帳。ボールペン付き。お値段、19800円。
「オレが出す」
「いいって」
「なんで?」
また、例のしゅんとした様子の聖爾。
あー、もう。
「じゃあ、これがいい」
ボールペンを一本手に取る燈哉。富嶽三十六景、凱風快晴モチーフのもの。お値段、495円。
「それだけでいいのか?」
「これがいい」
聖爾は、燈哉の手からボールペンを受け取り、もう一本同じものを取って、レジへ向かう。
そして、ふたつの包みを持って戻って来た。
「ほら」
「ありがとう」
片方は、自分のものにするつもりでいる。お揃いのものが、なんとなく欲しくなったから。
でも、どこに?
「燈哉、どこか行きたいとこあるか?」
「あー」
聖爾の質問に答えあぐねた。迂闊に海外を挙げれば、全額聖爾が出して旅行の手配をしそうだし、高級なホテルのランチなどでも、やっぱり全額出しそうだ。
「東京国立博物館、かな」
「連れてく」
決断が早過ぎる。まあ、観覧料は、大学生の自分は500円で、一般は1000円だから、大丈夫だろう。
そして、ふたりは日程を合わせ、東京国立博物館へ行くことにした。電車に乗り、最寄り駅で降りる。
聖爾は渋ったが、それぞれ入館料を払い、展示を見た。
聖爾には、正直、彫刻や絵画や古書のことはよく分からない。しかし、燈哉が興味深そうにしてる顔を見るのが楽しかった。
燈哉は、その時代の科学において傑作である品々を見て、色々と思うところがある。芸術的価値より、科学的価値。それが気になる。
展示を見ていくうちに、武器・武具のコーナーに来た。
それらは、聖爾も興味がある。特に、刀。
「燈哉。狐ヶ崎って刀、知ってるか?」
ここにはないが、思い出したので訊いてみる。
「いや、知らないな」
「鎌倉時代に作られた太刀で、国宝らしい」
「へぇ。聖爾、なんでその刀のこと知ってるんだ?」
「狐ヶ崎で検索したら、出て来た。オレの父親が、狐ヶ崎って苗字だから、気まぐれに調べたことがある」
「聖爾の、父親…………」
突然の家族の話に戸惑う。
ふたりには分からないことだが、太刀、狐ヶ崎と狐ヶ崎家は無関係である。たまたま、同じ土地を由来とする名前を冠しているだけ。
「会ってみたいか?」
「いいや。どうでもいいな」
「そうか」
本当に、心の底から、そう思っているのが分かった。
“狐の化物だから”
その言葉の意味が、少し理解出来た気がする。つまり、聖爾のルーツに、“狐”がある、ということ。では、“化物”とは? 知らないことは、知りたい。何より、恋人のことだから。
けれど、それを今訊くのは躊躇われた。
脳内で、いつか尋ねるリストに入れるだけに留める。
その後は、特に聖爾からの言及はなく、展示を見終えた。そして、お土産を売っているところへ行く。
「燈哉」
「欲しいものがあったら、自分で買うよ」
「でも」
「でも、じゃない」
「オレは、これがいいと思う」
聖爾が指差したのは、八橋蒔絵螺鈿硯箱モチーフの本革の手帳。ボールペン付き。お値段、19800円。
「オレが出す」
「いいって」
「なんで?」
また、例のしゅんとした様子の聖爾。
あー、もう。
「じゃあ、これがいい」
ボールペンを一本手に取る燈哉。富嶽三十六景、凱風快晴モチーフのもの。お値段、495円。
「それだけでいいのか?」
「これがいい」
聖爾は、燈哉の手からボールペンを受け取り、もう一本同じものを取って、レジへ向かう。
そして、ふたつの包みを持って戻って来た。
「ほら」
「ありがとう」
片方は、自分のものにするつもりでいる。お揃いのものが、なんとなく欲しくなったから。