創作企画「冥冥の澱」2
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コンビニで、お菓子を手に取り、戻す振りをして、袖の中に入れる。退屈な日常を、ほんの少し塗り替えるためのスリル。その手段が、万引き。
「やめときなよ」
「え?」
声が降ってきた。見上げれば、俺の隣にいつの間にか、身長190センチくらいの男がいる。
「なんのことですかぁ?」
「袖に商品入ってるだろ?」
「……見てたのかよ」
舌打ちして、棚にお菓子を戻した。
「常習犯?」
「うぜぇんだけど」
「おれ、網代翼。あんたは?」
「は? 関係ないっしょ」
「ある。見過ごせない」
「なに? 警察?」
「便利屋」
便利屋? 半端な正義感掲げて説教すんなよ。
俺が店内を後にすると、便利屋もついて来た。
「なんなんだよ? そっちこそ、不審者じゃね? 通報しようかな」
「おれは、真実を話すよ」
「チッ。うざ……」
あれくらい見逃せよ。生きてるのは、退屈で、それだけでストレスなんだよ。
「やめなよ、万引きするの」
「じゃあ、このストレスをどうしたらいいんですかぁ? 死ねってのかよ」
「本を読むとか、ゲームするんじゃダメなのか?」
「どっちもダリィわ」
「じゃあ、映画だな。2時間座ってるだけで楽しいぞ」
「映画~?」
「あんたなら、クライムものがいいだろう。強盗から始まる面白い映画がある。スナッチっていう映画」
「知らねー」
「だから見るんだろ」
「興味ねー」
しつこいな、この男。
「ブルーレイ貸すよ」
「はぁ?」
「事務所兼自宅にあるから、寄ってきな」
「ヘンタイ?」
「いつでも通報出来るように、スマホ持ってろ」
俺が、どうしておとなしくついてかなきゃならないんだ? と、思ったけど。俺は、便利屋について行った。非日常だから。帰っても、誰もいないし。
「こっち」
「…………」
しばらくして、二階建ての事務所に着いた。二階に案内される。
中は、綺麗に整理整頓されていて、丁寧に暮らしている感じがした。
「何か飲む?」
「知らない人からもらいたくないんで」
「そう」
特に気分を害した様子はない。
「ちょっと待ってて」と言って、便利屋は別の部屋に行った。
便利屋。どう生きれば、そんな職業をやろうと思うんだろう? 絶対にメンドクセェじゃん。
でも、そういう、“普通”から外れた生き方は、正直羨ましい。
「お待たせ」
男は、すぐに戻ってきた。俺に、ブルーレイを差し出す。
「してはいけないことは、フィクションで解消するしかないんだよ」
「はぁ」
「見終わったら、また来なよ。別のを貸すから」
「そっすか」
受け取ってしまったブルーレイを鞄にしまう。
「ひとりで帰れるか?」
「家、遠くないんで」
「じゃあ、またな」
「借りパクするかもよ?」
「また買うよ」
「あっそ。じゃあ」
便利屋と別れて、帰宅する。誰もいない家。ひとりの晩飯。暇だから、ブルーレイを再生する。
ダイヤモンドの強奪から始まる物語。そして、カッコいいオープニング。魅力的なたくさんの登場人物。そんなのあり? と思うような馬鹿げた展開。終わりは、何故か爽やか。
「はは…………」
思わず、声が漏れた。
また、こういう“体験”がしたい。ブルーレイをケースに戻すと、説明書のあるところに、何かが挟まっていることに気付いた。
“網代便利軒 網代翼”
便利屋の名刺だ。明日の放課後、会いに行ってみようかな。
「やめときなよ」
「え?」
声が降ってきた。見上げれば、俺の隣にいつの間にか、身長190センチくらいの男がいる。
「なんのことですかぁ?」
「袖に商品入ってるだろ?」
「……見てたのかよ」
舌打ちして、棚にお菓子を戻した。
「常習犯?」
「うぜぇんだけど」
「おれ、網代翼。あんたは?」
「は? 関係ないっしょ」
「ある。見過ごせない」
「なに? 警察?」
「便利屋」
便利屋? 半端な正義感掲げて説教すんなよ。
俺が店内を後にすると、便利屋もついて来た。
「なんなんだよ? そっちこそ、不審者じゃね? 通報しようかな」
「おれは、真実を話すよ」
「チッ。うざ……」
あれくらい見逃せよ。生きてるのは、退屈で、それだけでストレスなんだよ。
「やめなよ、万引きするの」
「じゃあ、このストレスをどうしたらいいんですかぁ? 死ねってのかよ」
「本を読むとか、ゲームするんじゃダメなのか?」
「どっちもダリィわ」
「じゃあ、映画だな。2時間座ってるだけで楽しいぞ」
「映画~?」
「あんたなら、クライムものがいいだろう。強盗から始まる面白い映画がある。スナッチっていう映画」
「知らねー」
「だから見るんだろ」
「興味ねー」
しつこいな、この男。
「ブルーレイ貸すよ」
「はぁ?」
「事務所兼自宅にあるから、寄ってきな」
「ヘンタイ?」
「いつでも通報出来るように、スマホ持ってろ」
俺が、どうしておとなしくついてかなきゃならないんだ? と、思ったけど。俺は、便利屋について行った。非日常だから。帰っても、誰もいないし。
「こっち」
「…………」
しばらくして、二階建ての事務所に着いた。二階に案内される。
中は、綺麗に整理整頓されていて、丁寧に暮らしている感じがした。
「何か飲む?」
「知らない人からもらいたくないんで」
「そう」
特に気分を害した様子はない。
「ちょっと待ってて」と言って、便利屋は別の部屋に行った。
便利屋。どう生きれば、そんな職業をやろうと思うんだろう? 絶対にメンドクセェじゃん。
でも、そういう、“普通”から外れた生き方は、正直羨ましい。
「お待たせ」
男は、すぐに戻ってきた。俺に、ブルーレイを差し出す。
「してはいけないことは、フィクションで解消するしかないんだよ」
「はぁ」
「見終わったら、また来なよ。別のを貸すから」
「そっすか」
受け取ってしまったブルーレイを鞄にしまう。
「ひとりで帰れるか?」
「家、遠くないんで」
「じゃあ、またな」
「借りパクするかもよ?」
「また買うよ」
「あっそ。じゃあ」
便利屋と別れて、帰宅する。誰もいない家。ひとりの晩飯。暇だから、ブルーレイを再生する。
ダイヤモンドの強奪から始まる物語。そして、カッコいいオープニング。魅力的なたくさんの登場人物。そんなのあり? と思うような馬鹿げた展開。終わりは、何故か爽やか。
「はは…………」
思わず、声が漏れた。
また、こういう“体験”がしたい。ブルーレイをケースに戻すと、説明書のあるところに、何かが挟まっていることに気付いた。
“網代便利軒 網代翼”
便利屋の名刺だ。明日の放課後、会いに行ってみようかな。