うちよそ
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約束。そう、約束をした。
そのはずなのに、灰崎ありすは、来なかった。
約束を、破られた。連絡もなし。
『ありすさん』
『どうかしたんですか?』
未読スルー。なんのための連絡手段なのか。
しかし、ありすがまともな社会人でないことくらい、陶原創にも分かっていた。
彼女のために、晩ごはんを用意して、自宅で待っていたのに。すっぽかされた。
その数時間後。
『急用が入った』と、簡素なメッセージが届いた。
『そうですか』
『あの』
『もっと早く教えてくれても』
当然の抗議。
『私は、いつも悪くないもん』
子供っぽい返事。ありすの薄皮が剥がれて、大人気のなさが全面に出た言葉。被害者ぶっている。
これを、ゆるすか、ゆるさないかで、今後の関係が変わってくる気がする。
結局のところ、創は、ありすをゆるした。
“私は、かわいそうなんだ”
自己憐憫に溢れた、かつての台詞。あれが具体的に何を指すのか、創には理解出来ていないが、ありすがそう言うのなら、そうなのだろうと考えている自分がいる。
実際は、イージーな人生を歩んでいるのだが。
懲りずに、また会う約束をしたところ、今度は遅刻もせずにやって来て。
「来てやったぞ。嬉しいか?」などと口にする。
「はい……」
そう言うしかなかった。
その後、ありすとホテルのビュッフェへ向かい、もりもりと昼ごはんとスイーツを食べる彼女を眺める。
「うん。美味いな。創も、もっと食え」
奢られる立場なのに、ありすは相変わらず偉そうだった。
その日は、髪をポニーテールにしていて、服装は、何故か黒色のカジュアルパンツスーツで。訊けば、モデルをしたその足で、ここに来たらしい。
なんでも、リクルート雑誌の表紙になるとか。ありすは、ほぼ働いていないのに。
ありすは、おかしいが、世界もおかしい。というか、ありすは、世界をおかしくする存在だ。
そういう星の元に生まれたのかもしれない。
灰崎ありすは、善人からほど遠い女だが、根っからの悪人でもない。そこが、彼女の性質の悪いところだった。
ロマンス詐欺のように、投資の話を持ちかけてきたりしないし、結婚詐欺のように、悪質な遺産の横取りなどはしない。
ただ、望みを伝えて、叶えてもらうのを待つだけ。我が儘な女王のように。
しかし、ある日突然音信不通になりそうな危うさがあるし、何より、ありすの生き方は、いつまでも出来るものなのだろうか?
いずれ、身を固めるつもりがあるのだろうか? どこかの誰かと結婚するのだろうか?
それを酷く嫌だと思う創は、ありすのいいカモだった。
今は、チェリーパイを、むしゃむしゃ食べているありす。人の気も知らないで。
ただ、ものを食べているだけなのに、絵画のようなワンシーンに見えるのが、やっぱり最悪だった。
そのはずなのに、灰崎ありすは、来なかった。
約束を、破られた。連絡もなし。
『ありすさん』
『どうかしたんですか?』
未読スルー。なんのための連絡手段なのか。
しかし、ありすがまともな社会人でないことくらい、陶原創にも分かっていた。
彼女のために、晩ごはんを用意して、自宅で待っていたのに。すっぽかされた。
その数時間後。
『急用が入った』と、簡素なメッセージが届いた。
『そうですか』
『あの』
『もっと早く教えてくれても』
当然の抗議。
『私は、いつも悪くないもん』
子供っぽい返事。ありすの薄皮が剥がれて、大人気のなさが全面に出た言葉。被害者ぶっている。
これを、ゆるすか、ゆるさないかで、今後の関係が変わってくる気がする。
結局のところ、創は、ありすをゆるした。
“私は、かわいそうなんだ”
自己憐憫に溢れた、かつての台詞。あれが具体的に何を指すのか、創には理解出来ていないが、ありすがそう言うのなら、そうなのだろうと考えている自分がいる。
実際は、イージーな人生を歩んでいるのだが。
懲りずに、また会う約束をしたところ、今度は遅刻もせずにやって来て。
「来てやったぞ。嬉しいか?」などと口にする。
「はい……」
そう言うしかなかった。
その後、ありすとホテルのビュッフェへ向かい、もりもりと昼ごはんとスイーツを食べる彼女を眺める。
「うん。美味いな。創も、もっと食え」
奢られる立場なのに、ありすは相変わらず偉そうだった。
その日は、髪をポニーテールにしていて、服装は、何故か黒色のカジュアルパンツスーツで。訊けば、モデルをしたその足で、ここに来たらしい。
なんでも、リクルート雑誌の表紙になるとか。ありすは、ほぼ働いていないのに。
ありすは、おかしいが、世界もおかしい。というか、ありすは、世界をおかしくする存在だ。
そういう星の元に生まれたのかもしれない。
灰崎ありすは、善人からほど遠い女だが、根っからの悪人でもない。そこが、彼女の性質の悪いところだった。
ロマンス詐欺のように、投資の話を持ちかけてきたりしないし、結婚詐欺のように、悪質な遺産の横取りなどはしない。
ただ、望みを伝えて、叶えてもらうのを待つだけ。我が儘な女王のように。
しかし、ある日突然音信不通になりそうな危うさがあるし、何より、ありすの生き方は、いつまでも出来るものなのだろうか?
いずれ、身を固めるつもりがあるのだろうか? どこかの誰かと結婚するのだろうか?
それを酷く嫌だと思う創は、ありすのいいカモだった。
今は、チェリーパイを、むしゃむしゃ食べているありす。人の気も知らないで。
ただ、ものを食べているだけなのに、絵画のようなワンシーンに見えるのが、やっぱり最悪だった。