創作企画「冥冥の澱」2
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召喚者よ。私に何を望む? 私は、お前を守護する天使でもなければ、願いを叶える上級の悪魔でもない。この私に、何を求める?
一夜の夢か?
そうか。面白い。お前の使い魔になってやってもいい。せいぜい、私を楽しませろ、魔術師。
神に背いてでも成し遂げたいという、お前の望み、叶えてみせるがいい。
◆◆◆
主と私は、祖国を捨てた。正確に言うと、異端審問にかけられそうになったから、逃げ出したのだが。
そして、海を渡り、極東の島国の教会に潜り込んだ。
キリスト教が私たちを蔑ろにするのなら、内部から変えてしまえばいい。
年月をかけて、主は、その教会の最高権力者になった。
元いた場所の教会では、除け者にされるような人々にも、主は誠心誠意尽くす。
ああ、だけど。人の寿命は、あまりにも短い。私の主である魔術師は、志半ばで死んだ。
「汝の欲するところを為せ」と、私に言い残して。
そう、この言葉こそが、魔術師の基本理念。定礎。根幹。
私は、契約者を失い、自由になった。
「私は、お前の遺志を継ごう」と告げながら、死んだ魔術師の手の甲にキスをする。これは、私からの敬愛の証である。
元主に成り代わり、私は教会を大きくし、信者を増やした。
この世に必要なのは、彼の者が遺した言葉のみ。何人にも必要なのは、意思すること。皆、思うままに生きろ。
それが、魔術師と私の願いであり、祝福。
生きる者全てに、それを与えよう。
私は、同性同士の愛を含めて、全ての愛を祝福した。あらゆる祭りが好きな、この国の民を愛した。占いに傾倒する者を、そのままでもよしとした。酒を好む者もよしとした。情欲を高める物の所持を含む、あらゆる娯楽を認めた。露出の高い衣服や華美な衣服も可とした。婚前交渉も離婚も避妊も人工授精も、してもよい。
一介の夢魔に過ぎない私を、ここまで人に肩入れさせたお前は、罪人として裁かれているのだろう。
魔術師よ。我が友、ヤゴシュよ。
今は、地獄界第八圏、悪の嚢であるマーレボルジェにいるのか?
第四の嚢は、魔術師が首を反対向きにねじ曲げられ、背中に涙を流すと聞いた。
いずれ、私はそこへ行く。お前を連れ出してやる。それまで、待っていろ。
お前の夢は、我らの夢は、叶ったぞ。同じ夢を見られたことを、誇りに思う。
矢木教会よ、千年続け。
子孫たちよ、この教会を守れ。しかし、必要でなくなったのなら、捨てろ。この世界が変わった時には、不要になっていることだろう。
願わくは、その時が早く訪れるように。
一夜の夢か?
そうか。面白い。お前の使い魔になってやってもいい。せいぜい、私を楽しませろ、魔術師。
神に背いてでも成し遂げたいという、お前の望み、叶えてみせるがいい。
◆◆◆
主と私は、祖国を捨てた。正確に言うと、異端審問にかけられそうになったから、逃げ出したのだが。
そして、海を渡り、極東の島国の教会に潜り込んだ。
キリスト教が私たちを蔑ろにするのなら、内部から変えてしまえばいい。
年月をかけて、主は、その教会の最高権力者になった。
元いた場所の教会では、除け者にされるような人々にも、主は誠心誠意尽くす。
ああ、だけど。人の寿命は、あまりにも短い。私の主である魔術師は、志半ばで死んだ。
「汝の欲するところを為せ」と、私に言い残して。
そう、この言葉こそが、魔術師の基本理念。定礎。根幹。
私は、契約者を失い、自由になった。
「私は、お前の遺志を継ごう」と告げながら、死んだ魔術師の手の甲にキスをする。これは、私からの敬愛の証である。
元主に成り代わり、私は教会を大きくし、信者を増やした。
この世に必要なのは、彼の者が遺した言葉のみ。何人にも必要なのは、意思すること。皆、思うままに生きろ。
それが、魔術師と私の願いであり、祝福。
生きる者全てに、それを与えよう。
私は、同性同士の愛を含めて、全ての愛を祝福した。あらゆる祭りが好きな、この国の民を愛した。占いに傾倒する者を、そのままでもよしとした。酒を好む者もよしとした。情欲を高める物の所持を含む、あらゆる娯楽を認めた。露出の高い衣服や華美な衣服も可とした。婚前交渉も離婚も避妊も人工授精も、してもよい。
一介の夢魔に過ぎない私を、ここまで人に肩入れさせたお前は、罪人として裁かれているのだろう。
魔術師よ。我が友、ヤゴシュよ。
今は、地獄界第八圏、悪の嚢であるマーレボルジェにいるのか?
第四の嚢は、魔術師が首を反対向きにねじ曲げられ、背中に涙を流すと聞いた。
いずれ、私はそこへ行く。お前を連れ出してやる。それまで、待っていろ。
お前の夢は、我らの夢は、叶ったぞ。同じ夢を見られたことを、誇りに思う。
矢木教会よ、千年続け。
子孫たちよ、この教会を守れ。しかし、必要でなくなったのなら、捨てろ。この世界が変わった時には、不要になっていることだろう。
願わくは、その時が早く訪れるように。