うちよそ
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インターホンが鳴り、出てみると、灰崎ありすが玄関前にいるのがカメラで見えた。
ありすは、「泊めてくれ」とだけ言う。
連絡もなしに、いきなり来られて、それ。断ったら、どこへ行くのだろう? 他の人のところ?
それは、嫌だ。だって、彼女が危険な目に遭うかもしれない。
陶原創は、嫉妬心から目を逸らして、もっともらしい理由をつけた。
「今、開けます」
玄関まで行き、ドアを開く。そこには、やっぱり美しいありすがいて、胸が高鳴る。
「邪魔するぞ」
「はい……」
ずかずか奥まで入り、どかっとソファーに座るありす。
「はぁ。今日は、疲れた」と言いながら、勝手にテレビをつける。
「どうかしたんですか?」
「突っ立ってないで、座れ」
偉そうに言う。そして、ソファーの端に寄った。
「と、隣に……?」
「そうだが?」
「はい……」
恐る恐る、ありすの隣に座る創。
「話の続きだが、私は今日、働いたんだ」
「えっ!?」
「ファッション誌のモデルの仕事だ。金がなくなった時だけ、私は仕方なく、そういうことをする」
他には、絵のモデルやカットモデルなどをすることがある。いつも突然やって来て、「モデルになってやろう」と言うありすを、人々は受け入れてしまう。感謝する者までいた。
正体不明のモデル、「アリス」はネット上で密かに話題になっているが、SNSをひとつもやっていない彼女の情報は、何も出て来ない。
「だから、労れ」
「お疲れ様、です」
「ああ。そうだ、飯と風呂は済ませてあるから、気にしなくていいぞ」
「はい。じゃあ、俺は風呂に入るので、ゆっくりしててください」
「うん」
ありすは背もたれに身を預け、ぼんやりテレビを見ている。
創は、浴室へ向かった。ありすの生活を少し知ることが出来て嬉しく思いながら。
◆◆◆
風呂から出ると、ありすはソファーに横になり、眠っていた。
テレビはつけっぱなし。ソファーの前のローテーブルの上には、空のプリンの容器とスプーン。
え……?
「限定10食、毎日粘って昨日やっと手に入れた俺のプリンが!?」
「んー? ああ、冷蔵庫を開けたら、あったから、食べた」
あくびをしながら、ありすは答える。
「え……あ…………」
他人の家の冷蔵庫を勝手に開けるのは、非常識だし、あまつさえ中のものを食べるとは。
創は、ショックが強過ぎて、脳の処理が追い付かない。
「私のために、ご苦労だったな」
「うぅ……」
「泣くほど嬉しいか」
流石に、ありすも本気で嬉しがっているとは思っていないのだが、創に「ありすのためにプリンを手に入れた」と刷り込もうとしている。
「仕方ない奴だな」
ありすは、ゆっくりとソファーから起き上がり、創の側に来た。
そして、耳元で囁く。
「私のために、ありがとう、創」
「俺の名前…………」
初めて名前を呼ばれた。
「友人の名前くらい、覚えてる」
「友人……?」
「光栄だろう?」
ありすは、二度以上会った者は、友人というカテゴリーに入れることにしている。
針を刺されて、毒を入れられて、中身を作り変えられるかのように、「ありがとう、創」という台詞が、いつまでも響いた。
ありすは、「泊めてくれ」とだけ言う。
連絡もなしに、いきなり来られて、それ。断ったら、どこへ行くのだろう? 他の人のところ?
それは、嫌だ。だって、彼女が危険な目に遭うかもしれない。
陶原創は、嫉妬心から目を逸らして、もっともらしい理由をつけた。
「今、開けます」
玄関まで行き、ドアを開く。そこには、やっぱり美しいありすがいて、胸が高鳴る。
「邪魔するぞ」
「はい……」
ずかずか奥まで入り、どかっとソファーに座るありす。
「はぁ。今日は、疲れた」と言いながら、勝手にテレビをつける。
「どうかしたんですか?」
「突っ立ってないで、座れ」
偉そうに言う。そして、ソファーの端に寄った。
「と、隣に……?」
「そうだが?」
「はい……」
恐る恐る、ありすの隣に座る創。
「話の続きだが、私は今日、働いたんだ」
「えっ!?」
「ファッション誌のモデルの仕事だ。金がなくなった時だけ、私は仕方なく、そういうことをする」
他には、絵のモデルやカットモデルなどをすることがある。いつも突然やって来て、「モデルになってやろう」と言うありすを、人々は受け入れてしまう。感謝する者までいた。
正体不明のモデル、「アリス」はネット上で密かに話題になっているが、SNSをひとつもやっていない彼女の情報は、何も出て来ない。
「だから、労れ」
「お疲れ様、です」
「ああ。そうだ、飯と風呂は済ませてあるから、気にしなくていいぞ」
「はい。じゃあ、俺は風呂に入るので、ゆっくりしててください」
「うん」
ありすは背もたれに身を預け、ぼんやりテレビを見ている。
創は、浴室へ向かった。ありすの生活を少し知ることが出来て嬉しく思いながら。
◆◆◆
風呂から出ると、ありすはソファーに横になり、眠っていた。
テレビはつけっぱなし。ソファーの前のローテーブルの上には、空のプリンの容器とスプーン。
え……?
「限定10食、毎日粘って昨日やっと手に入れた俺のプリンが!?」
「んー? ああ、冷蔵庫を開けたら、あったから、食べた」
あくびをしながら、ありすは答える。
「え……あ…………」
他人の家の冷蔵庫を勝手に開けるのは、非常識だし、あまつさえ中のものを食べるとは。
創は、ショックが強過ぎて、脳の処理が追い付かない。
「私のために、ご苦労だったな」
「うぅ……」
「泣くほど嬉しいか」
流石に、ありすも本気で嬉しがっているとは思っていないのだが、創に「ありすのためにプリンを手に入れた」と刷り込もうとしている。
「仕方ない奴だな」
ありすは、ゆっくりとソファーから起き上がり、創の側に来た。
そして、耳元で囁く。
「私のために、ありがとう、創」
「俺の名前…………」
初めて名前を呼ばれた。
「友人の名前くらい、覚えてる」
「友人……?」
「光栄だろう?」
ありすは、二度以上会った者は、友人というカテゴリーに入れることにしている。
針を刺されて、毒を入れられて、中身を作り変えられるかのように、「ありがとう、創」という台詞が、いつまでも響いた。