創作企画「冥冥の澱」2
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まず、そんなことを訊かれたことに驚いた。
“突然で悪いんだけど、来目さんって今恋人いる?”
赤城燈哉から送られてきたショートメール。それへの返信に、少し悩んだ。
いたことありません、は余計だろう。
いません、だけは素っ気ないだろう。
“いません。赤城さんはいるんですか?”
結局、そんなメッセージを送った。
そういえば、恋人の有無を考えたことがなかったことに気付く。無関係なのが嫌だったのに。どんな関係を築けばいいのか分からなかったから。加害者と被害者。そんなものしか思い浮かばなかったから。
恋人。なりたいのか? よく分からない。
それが、どんなものか、知らない。
恋愛のことさえ、まだよく分からない。自分が“それ”をしていると、半信半疑。
この加害欲を、恋と呼んでいいのか? この支配欲を、愛と呼んでいいのか?
物心ついた時、自分には人が殺せると気付いた。そして、幼少期には、人殺しになった。
目障りな奴は、みんな消す。そういう化物。それが、来目聖爾。人間の振りをしている。
こんな人殺しが“好き”とか。おかしいだろ。
聖爾は、眉間に皺を寄せた。
偽物の人生を供にするのは、天狐だけでよかったはずなのに。
来目聖爾は、壊れてしまった。壊される前に、壊すべきだった。もう遅い。
深層意識では、赤城燈哉の、なんにでもなりたかった。
彼への気持ちに、はっきりとした名前を付けられずにいる。
ガリガリと、棒付き飴を噛んだ。林檎味。
彼に、恋人がいるかもしれないことについて、考える。
殺す。と、すぐに出てきた答え。
表の人間? 罪のない人間? 一般人?
そんなことは知らねぇ。殺す。
考えただけで、虫酸が走った。
誰にも奪られたくない。オレのものにならないなら、誰のものにもなるな。
そう思った。独占欲が、生まれたての心を染める。
欲。欲。欲。欲望まみれの心。化物の心は、やっぱり普通ではないのかもしれなかった。
見ろよ。オレを。テメェのせいで、名前すらない怪物が生まれたぞ。
その怪物は、日に日に大きくなっていく。
聖爾が制御出来なくなる前に、なんとかしなければならない。なんとかするには、赤城燈哉が必要だった。
「助けてくれ」の言葉さえ、聖爾には言えない。知らない呪文は、唱えられない。
「喰らえ、天狐」というものが、彼に分かる、自分のための唯一の呪文。そのたったひとつの祈りで叶えられない願いが出来てしまったことが、幸か不幸か、まだ結末は見えない。
オレだけ見てくれ。
その願いは、彼が初めて見る夢だった。
“突然で悪いんだけど、来目さんって今恋人いる?”
赤城燈哉から送られてきたショートメール。それへの返信に、少し悩んだ。
いたことありません、は余計だろう。
いません、だけは素っ気ないだろう。
“いません。赤城さんはいるんですか?”
結局、そんなメッセージを送った。
そういえば、恋人の有無を考えたことがなかったことに気付く。無関係なのが嫌だったのに。どんな関係を築けばいいのか分からなかったから。加害者と被害者。そんなものしか思い浮かばなかったから。
恋人。なりたいのか? よく分からない。
それが、どんなものか、知らない。
恋愛のことさえ、まだよく分からない。自分が“それ”をしていると、半信半疑。
この加害欲を、恋と呼んでいいのか? この支配欲を、愛と呼んでいいのか?
物心ついた時、自分には人が殺せると気付いた。そして、幼少期には、人殺しになった。
目障りな奴は、みんな消す。そういう化物。それが、来目聖爾。人間の振りをしている。
こんな人殺しが“好き”とか。おかしいだろ。
聖爾は、眉間に皺を寄せた。
偽物の人生を供にするのは、天狐だけでよかったはずなのに。
来目聖爾は、壊れてしまった。壊される前に、壊すべきだった。もう遅い。
深層意識では、赤城燈哉の、なんにでもなりたかった。
彼への気持ちに、はっきりとした名前を付けられずにいる。
ガリガリと、棒付き飴を噛んだ。林檎味。
彼に、恋人がいるかもしれないことについて、考える。
殺す。と、すぐに出てきた答え。
表の人間? 罪のない人間? 一般人?
そんなことは知らねぇ。殺す。
考えただけで、虫酸が走った。
誰にも奪られたくない。オレのものにならないなら、誰のものにもなるな。
そう思った。独占欲が、生まれたての心を染める。
欲。欲。欲。欲望まみれの心。化物の心は、やっぱり普通ではないのかもしれなかった。
見ろよ。オレを。テメェのせいで、名前すらない怪物が生まれたぞ。
その怪物は、日に日に大きくなっていく。
聖爾が制御出来なくなる前に、なんとかしなければならない。なんとかするには、赤城燈哉が必要だった。
「助けてくれ」の言葉さえ、聖爾には言えない。知らない呪文は、唱えられない。
「喰らえ、天狐」というものが、彼に分かる、自分のための唯一の呪文。そのたったひとつの祈りで叶えられない願いが出来てしまったことが、幸か不幸か、まだ結末は見えない。
オレだけ見てくれ。
その願いは、彼が初めて見る夢だった。