創作企画「冥冥の澱」2
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バレンタインデーに、例のカップケーキの彼女から、本命チョコレートをもらった。
来目聖爾は、女にとって、大好きな人だった。
しかし、ホワイトデーを待たずに、彼から返事が来たのである。
「すんません。あんたの気持ちには答えられません。好きな奴がいるんで」
「そ、そっか。うん、分かった。返事、ありがとう」
休憩時間、バックヤードで泣いた。
聖爾くんのこと、本当に好きだったなぁ。
初めて会った時のことを思い出す。
“今日から、ここで、働かせてもらいます。来目聖爾です。よろしくお願いします、先輩”
一目惚れだった。
仕事はちゃんとしてくれるし、クレーマーから庇ってくれたし、私の手作りのお菓子を美味しいって言ってくれた、聖爾くん。
これからは、仕事仲間として、切り替えていかなくてはならない。
さようなら、私の恋。
もう、お菓子も渡せないね。
◆◆◆
聖爾には、5人のセフレがいる。女が3人。男がふたり。
その全員に、「狐ヶ崎」とだけ名乗り、セックスするのは、決まって相手の家。何も、本当の自分を明かしていない。
ひとりひとりに、電話をかける。
「もう、あんたのこと切るから。さよなら」
『そう。さよなら、狐ヶ崎くん』
『そっかぁ。結構楽しかったよ。じゃあね』
『ふーん。分かった。バイバイ』
『……あーうん。分かった。さよなら』
『嫌だ! 狐ヶ崎くんのこと好きだよ! 愛してるから、捨てないで…………』
「本命が出来た。だから、あんたとはもう寝ない。オレのことは忘れろ」
『思い出くらい、持たせてよ……』
「……勝手にしろ。さよなら」
全員と手を切った。
「はぁ……」
面倒事は、勘弁したい。だから、痕跡は残していない。ひとり、厄介そうなのがいるが、どうにも出来ないだろう。
もう、いらないから。オレも、テメェらにはいらない者だから。
さよなら。
◆◆◆
「聖爾くん、この後、食事でもどう?」
「あんたに下心がないなら、ご一緒しますよ」
来目聖爾は、男の恋心を見透かすように言った。
「あはは。俺が君のこと好きなの、バレてたんだ」
「まあ、なんとなく」
それもそうか。彼は、野生の獣みたいな男だから。勘がいい。
「それで? 俺のこと、どうする?」
「どうもしない。あんたは、一応上の人間だしな。ただ、オレは、あんたに手込めにはされねぇ。それだけです。ただの殺し屋と連絡係でいてくれよ」
ああ、そうか。君には、心があったんだね。心に決めた相手が出来たんだね。
「フラれちゃったぁ」
「…………」
「ま、君には敵わないしねぇ。どうやって殺してるか、俺は知らないけど。君が、銃を突き付けられたくらいじゃ怯まないのは知ってるし」
来目聖爾は、仕事の際に、必ずナイフを持っている。“呪術”が使えなくとも、人を殺せるように。手の内を易々と晒さないように。
聖爾くんに手を出す度胸があったら、とっくに出してるよ。
さよならはしないけど。この恋は、実らない。
来目聖爾は、女にとって、大好きな人だった。
しかし、ホワイトデーを待たずに、彼から返事が来たのである。
「すんません。あんたの気持ちには答えられません。好きな奴がいるんで」
「そ、そっか。うん、分かった。返事、ありがとう」
休憩時間、バックヤードで泣いた。
聖爾くんのこと、本当に好きだったなぁ。
初めて会った時のことを思い出す。
“今日から、ここで、働かせてもらいます。来目聖爾です。よろしくお願いします、先輩”
一目惚れだった。
仕事はちゃんとしてくれるし、クレーマーから庇ってくれたし、私の手作りのお菓子を美味しいって言ってくれた、聖爾くん。
これからは、仕事仲間として、切り替えていかなくてはならない。
さようなら、私の恋。
もう、お菓子も渡せないね。
◆◆◆
聖爾には、5人のセフレがいる。女が3人。男がふたり。
その全員に、「狐ヶ崎」とだけ名乗り、セックスするのは、決まって相手の家。何も、本当の自分を明かしていない。
ひとりひとりに、電話をかける。
「もう、あんたのこと切るから。さよなら」
『そう。さよなら、狐ヶ崎くん』
『そっかぁ。結構楽しかったよ。じゃあね』
『ふーん。分かった。バイバイ』
『……あーうん。分かった。さよなら』
『嫌だ! 狐ヶ崎くんのこと好きだよ! 愛してるから、捨てないで…………』
「本命が出来た。だから、あんたとはもう寝ない。オレのことは忘れろ」
『思い出くらい、持たせてよ……』
「……勝手にしろ。さよなら」
全員と手を切った。
「はぁ……」
面倒事は、勘弁したい。だから、痕跡は残していない。ひとり、厄介そうなのがいるが、どうにも出来ないだろう。
もう、いらないから。オレも、テメェらにはいらない者だから。
さよなら。
◆◆◆
「聖爾くん、この後、食事でもどう?」
「あんたに下心がないなら、ご一緒しますよ」
来目聖爾は、男の恋心を見透かすように言った。
「あはは。俺が君のこと好きなの、バレてたんだ」
「まあ、なんとなく」
それもそうか。彼は、野生の獣みたいな男だから。勘がいい。
「それで? 俺のこと、どうする?」
「どうもしない。あんたは、一応上の人間だしな。ただ、オレは、あんたに手込めにはされねぇ。それだけです。ただの殺し屋と連絡係でいてくれよ」
ああ、そうか。君には、心があったんだね。心に決めた相手が出来たんだね。
「フラれちゃったぁ」
「…………」
「ま、君には敵わないしねぇ。どうやって殺してるか、俺は知らないけど。君が、銃を突き付けられたくらいじゃ怯まないのは知ってるし」
来目聖爾は、仕事の際に、必ずナイフを持っている。“呪術”が使えなくとも、人を殺せるように。手の内を易々と晒さないように。
聖爾くんに手を出す度胸があったら、とっくに出してるよ。
さよならはしないけど。この恋は、実らない。