創作企画「冥冥の澱」2
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氷を一欠片、握る。
「冷たい」
それが自分の感覚なんだって、ちゃんと認識するように、頑張った。
これは、僕の手。僕の触覚。僕の体。
教会で、祈る。
「どうか、早く治りますように」
これも、僕のこと。
“汝の欲するところを為せ”
僕のしたいこと。穣さんと、ずっと一緒にいること。
消えたりしたら、ダメ。だって、悲しませるから。
しばらくして。教会に穣さんがやって来た。
「六助くん、こんにちは」
「こんにちは」
好き。これは、僕の気持ち。しっかり握り締めて、放さないで。
「僕……今でも、穣さんのこと好きだから…………」
「うん。ありがとう」
両手を握ってくれた。
「あったかいね……」
◆◆◆
六助くんは、離人症になってから、“天真爛漫さ”みたいなものがなくなってしまった。
でも、いつかは取り戻せると信じてる。
「六助くん、テディベア、飾ってくれてるんだね」
「うん。あと、いつも一緒に眠ってるよ」
「そうなんだ。嬉しいよ」
「いつも穣さんといるみたいで、安心するの」
「よかった……」
六助くんは、嘘は言わない子だ。いつも素直で、優しい子。
そんな子が、どうして?
「穣さん?」
「大好きだよ」
抱き締めて、囁く。
「うん……僕も……」
六助くんが、僕を抱き締め返す。
何度も惨憺たる夢を見て、疲れちゃったんだよね?
「絶対に、大丈夫だから」
「……うん」
「いつでも呼んでね」
「ありがとう」
君が、少し笑った。
◆◆◆
アルバムをめくるように、過去を思い出す。あなたが、ヒーローみたいに、学校に来て、僕を助けてくれたこと。
あれは、僕の大切な記憶。
スクリーンなんて、壊して。壊して、“僕”を再構築して。
ひとつずつ、欠片を集めて、繋ぎ直す。割れた器を、金継ぎする。
大丈夫。元には戻らなくても、美しく直せるよ。
きっと穣さんは、「綺麗だね」って言ってくれる。
きっと僕は、元気になれる。
今は、学校も討伐も休んで、教会のお手伝いだけしてればいい。
風は、冷たい。日向は、暖かい。心臓は、脈打っている。
まずは、一呼吸。ゆっくりと循環を感じよう。
次に、深呼吸。血の巡り。生きてることを認識しよう。
大好きな人のことを、大好きでいられるように。
矢木六助は、僕。僕は生きていて、大切な両親がいて、大好きな友達がいて、愛してる人がいる。
僕の人生は、まだまだ続くんだから。お日様の下を歩いて行きたい。あなたと。
さあ、息をして。迷子になった自分を探して。自信を持って。
「冷たい」
それが自分の感覚なんだって、ちゃんと認識するように、頑張った。
これは、僕の手。僕の触覚。僕の体。
教会で、祈る。
「どうか、早く治りますように」
これも、僕のこと。
“汝の欲するところを為せ”
僕のしたいこと。穣さんと、ずっと一緒にいること。
消えたりしたら、ダメ。だって、悲しませるから。
しばらくして。教会に穣さんがやって来た。
「六助くん、こんにちは」
「こんにちは」
好き。これは、僕の気持ち。しっかり握り締めて、放さないで。
「僕……今でも、穣さんのこと好きだから…………」
「うん。ありがとう」
両手を握ってくれた。
「あったかいね……」
◆◆◆
六助くんは、離人症になってから、“天真爛漫さ”みたいなものがなくなってしまった。
でも、いつかは取り戻せると信じてる。
「六助くん、テディベア、飾ってくれてるんだね」
「うん。あと、いつも一緒に眠ってるよ」
「そうなんだ。嬉しいよ」
「いつも穣さんといるみたいで、安心するの」
「よかった……」
六助くんは、嘘は言わない子だ。いつも素直で、優しい子。
そんな子が、どうして?
「穣さん?」
「大好きだよ」
抱き締めて、囁く。
「うん……僕も……」
六助くんが、僕を抱き締め返す。
何度も惨憺たる夢を見て、疲れちゃったんだよね?
「絶対に、大丈夫だから」
「……うん」
「いつでも呼んでね」
「ありがとう」
君が、少し笑った。
◆◆◆
アルバムをめくるように、過去を思い出す。あなたが、ヒーローみたいに、学校に来て、僕を助けてくれたこと。
あれは、僕の大切な記憶。
スクリーンなんて、壊して。壊して、“僕”を再構築して。
ひとつずつ、欠片を集めて、繋ぎ直す。割れた器を、金継ぎする。
大丈夫。元には戻らなくても、美しく直せるよ。
きっと穣さんは、「綺麗だね」って言ってくれる。
きっと僕は、元気になれる。
今は、学校も討伐も休んで、教会のお手伝いだけしてればいい。
風は、冷たい。日向は、暖かい。心臓は、脈打っている。
まずは、一呼吸。ゆっくりと循環を感じよう。
次に、深呼吸。血の巡り。生きてることを認識しよう。
大好きな人のことを、大好きでいられるように。
矢木六助は、僕。僕は生きていて、大切な両親がいて、大好きな友達がいて、愛してる人がいる。
僕の人生は、まだまだ続くんだから。お日様の下を歩いて行きたい。あなたと。
さあ、息をして。迷子になった自分を探して。自信を持って。