創作企画「冥冥の澱」2
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「死んでしまえばいいよ」
久し振りに、面と向かって罵られて、最後にそう言われた。でも、平気だった。
まるで、客席に座って、映画を観てるみたいに。
世界が、色褪せていく。
あれ? おかしいな。
そう思う自分すら、他人事のようで。現実感がない。
いつもなら、放課後は穣さんのところへ行くのに。僕は、家に帰った。
ひとり、ベッドの上に座る。
穣さんのことを好きな気持ちが、僕のことじゃないように思えた。凄く、客観的。
矢木六助って、とっても汚らわしいのに、今更純愛ぶってて、バカみたい。
客席で、「矢木六助の人生」を眺める僕は、そう評価した。
世界から切り離されて、独りきり。客席に座り、独りでスクリーンを観てる。
この人、どうして生きてるんだろう? 早く消えちゃえばいいのに。
その後も、ずっとそうだった。ご飯を食べても、お風呂に入っても、ベッドに潜っても。矢木六助を、僕は観てるだけ。
朝起きても、やっぱり、そのまま。
鏡には、生気のない顔が映ってる。
矢木六助は、人形劇のマリオネットになった。
涙一粒も出ない。
◆◆◆
矢木六助が、穣さんのところへ行く。
「こんにちは」
発声しても、それはスピーカー越し。
「いらっしゃい、六助くん」
お家にお邪魔して、穣さんの話を聞き、たまに相槌を打つ。
矢木六助は、この人が好きみたいだけど、僕にはよく分からなくなっていた。
壊れている。僕は、矢木六助が動くのを見てるだけ。
「六助くん、どうかしたの? 表情が硬いみたいだけど」
「なんでもないよ」
自動的に返事をしてる。
ああ、そっか。僕は、とっくに死んでいたんだね。
矢木六助の死体が、いつも通りの日々を送るのを、僕は眺めることしか出来ない。
ねぇ、いつまで生きてる振りをするの? やめちゃいなよ。
みんなが、君の死を望んでいて、それが叶ったんだから。大人しくしてればいいのに。
早く墓穴を掘って、入りなよ。
そして、裁かれるべきだ。まあ、地獄行きだろうね。君は、悪魔だったんだから。
他人を振り回すの、楽しかった?
大勢の人から恨まれて、辛かった?
好きな人と結ばれて、嬉しかった?
全部、もうおしまいだよ。
その肉塊を、僕は目障りに感じ始めている。
でも、見ていることしか出来ないみたい。
あなたは、僕の中の空に輝くお日様だったはずなのに。
今の僕には、何もない。死体がいるだけ。
腐る前に、処分したいんだけど、何も出来ないから。見てるだけ。
矢木六助は、僕を残して、死んじゃった。
ノイズまみれの矢木六助の記憶を再生すると、穣さんばかりが映っている。
本当に、本当に大切なはずだったのにね。
久し振りに、面と向かって罵られて、最後にそう言われた。でも、平気だった。
まるで、客席に座って、映画を観てるみたいに。
世界が、色褪せていく。
あれ? おかしいな。
そう思う自分すら、他人事のようで。現実感がない。
いつもなら、放課後は穣さんのところへ行くのに。僕は、家に帰った。
ひとり、ベッドの上に座る。
穣さんのことを好きな気持ちが、僕のことじゃないように思えた。凄く、客観的。
矢木六助って、とっても汚らわしいのに、今更純愛ぶってて、バカみたい。
客席で、「矢木六助の人生」を眺める僕は、そう評価した。
世界から切り離されて、独りきり。客席に座り、独りでスクリーンを観てる。
この人、どうして生きてるんだろう? 早く消えちゃえばいいのに。
その後も、ずっとそうだった。ご飯を食べても、お風呂に入っても、ベッドに潜っても。矢木六助を、僕は観てるだけ。
朝起きても、やっぱり、そのまま。
鏡には、生気のない顔が映ってる。
矢木六助は、人形劇のマリオネットになった。
涙一粒も出ない。
◆◆◆
矢木六助が、穣さんのところへ行く。
「こんにちは」
発声しても、それはスピーカー越し。
「いらっしゃい、六助くん」
お家にお邪魔して、穣さんの話を聞き、たまに相槌を打つ。
矢木六助は、この人が好きみたいだけど、僕にはよく分からなくなっていた。
壊れている。僕は、矢木六助が動くのを見てるだけ。
「六助くん、どうかしたの? 表情が硬いみたいだけど」
「なんでもないよ」
自動的に返事をしてる。
ああ、そっか。僕は、とっくに死んでいたんだね。
矢木六助の死体が、いつも通りの日々を送るのを、僕は眺めることしか出来ない。
ねぇ、いつまで生きてる振りをするの? やめちゃいなよ。
みんなが、君の死を望んでいて、それが叶ったんだから。大人しくしてればいいのに。
早く墓穴を掘って、入りなよ。
そして、裁かれるべきだ。まあ、地獄行きだろうね。君は、悪魔だったんだから。
他人を振り回すの、楽しかった?
大勢の人から恨まれて、辛かった?
好きな人と結ばれて、嬉しかった?
全部、もうおしまいだよ。
その肉塊を、僕は目障りに感じ始めている。
でも、見ていることしか出来ないみたい。
あなたは、僕の中の空に輝くお日様だったはずなのに。
今の僕には、何もない。死体がいるだけ。
腐る前に、処分したいんだけど、何も出来ないから。見てるだけ。
矢木六助は、僕を残して、死んじゃった。
ノイズまみれの矢木六助の記憶を再生すると、穣さんばかりが映っている。
本当に、本当に大切なはずだったのにね。