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憧れの人がいる。同じ、月光館学園高等部の3年生、桐条美鶴先輩。
桐条先輩は、成績優秀で、容姿端麗。お家は、あの桐条グループというお嬢様だ。
完璧なひと。
桐条先輩には、世界がどう見えているのだろう? きっと私より、鮮やかで、広大で、美しいのだろう。
私の友人たちは、「誰と付き合いたい」だの「親がウザい」だの「先生がムカつく」だの、くだらない話ばかりしていて、うんざりする。
しかし桐条先輩は、そういうくだらない世界とは縁がないのだろうな、と思う。
浮わついた噂も聞かないし。真田先輩との仲を邪推する声もあるけれど、私は、それは真実ではないと考えている。
だから、彼との噂を耳にした時も、私はそれを信じなかった。
私と同じクラスである2年F組、転校してきた彼と、先輩が付き合っているのではないか? という噂。放課後、デートしていたという噂。
私は、それを信じたくなかった。
けれど、私は見てしまったのだ。桐条先輩と、彼とが仲睦まじく並んで歩くところを。
並んで歩いているだけなら、別になんてことなかっただろう。でも、ふたりは手を繋いでいたのだ。それを目撃した私は、狼狽えた。
はっと気付いた時には、鞄を手から落としていて。唇をわななかせて、膝は震えていた。
あの桐条先輩が男女交際をしていること。人目を気にせずに、男と手を繋いでいること。瞳が輝き、頬を紅潮させ、声には甘いものが含まれていること。
そのどれもが信じられなくて、私は、その場で血が凍るような思いをした。
私が動けないでいるうちに、ふたりはどんどん小さくなっていく。「待って」と言うように、咄嗟に手を伸ばしたけれど、届くはずもない。
先輩が、遠退いていく。私の理想から、急速に遠退いていく。
だって、桐条先輩は男と付き合うことになんか興味がなくて、気高くて、美しいひとだったはずなのに!
私の大好きな桐条美鶴先輩は……私の尊敬する先輩は……あんなくだらないひとじゃないはずなのに……!
私は唇を痛いほど噛み締めて、涙を流した。
桐条先輩は、成績優秀で、容姿端麗。お家は、あの桐条グループというお嬢様だ。
完璧なひと。
桐条先輩には、世界がどう見えているのだろう? きっと私より、鮮やかで、広大で、美しいのだろう。
私の友人たちは、「誰と付き合いたい」だの「親がウザい」だの「先生がムカつく」だの、くだらない話ばかりしていて、うんざりする。
しかし桐条先輩は、そういうくだらない世界とは縁がないのだろうな、と思う。
浮わついた噂も聞かないし。真田先輩との仲を邪推する声もあるけれど、私は、それは真実ではないと考えている。
だから、彼との噂を耳にした時も、私はそれを信じなかった。
私と同じクラスである2年F組、転校してきた彼と、先輩が付き合っているのではないか? という噂。放課後、デートしていたという噂。
私は、それを信じたくなかった。
けれど、私は見てしまったのだ。桐条先輩と、彼とが仲睦まじく並んで歩くところを。
並んで歩いているだけなら、別になんてことなかっただろう。でも、ふたりは手を繋いでいたのだ。それを目撃した私は、狼狽えた。
はっと気付いた時には、鞄を手から落としていて。唇をわななかせて、膝は震えていた。
あの桐条先輩が男女交際をしていること。人目を気にせずに、男と手を繋いでいること。瞳が輝き、頬を紅潮させ、声には甘いものが含まれていること。
そのどれもが信じられなくて、私は、その場で血が凍るような思いをした。
私が動けないでいるうちに、ふたりはどんどん小さくなっていく。「待って」と言うように、咄嗟に手を伸ばしたけれど、届くはずもない。
先輩が、遠退いていく。私の理想から、急速に遠退いていく。
だって、桐条先輩は男と付き合うことになんか興味がなくて、気高くて、美しいひとだったはずなのに!
私の大好きな桐条美鶴先輩は……私の尊敬する先輩は……あんなくだらないひとじゃないはずなのに……!
私は唇を痛いほど噛み締めて、涙を流した。