創作企画「冥冥の澱」2
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翼が、21歳になった。事務所の二階に住むようになってから、久し振りに帰って来る。
仕事は、順調みたいや。なんや、いつも走り回っとる。
インターホンが鳴った。
ドアを開けると、翼がいる。俺より背が高くなってから、随分経つなぁ。靖及さんよりは、高くならへんかったけど。
「司! 靖及! ただいま!」
「お帰りやで」
「お帰り、翼」
家族で席について、茶をしばきながら、歓談する。
「ふたりとも、元気?」
「元気や」
「ああ」
「おれも元気!」
翼のとこには、色んな依頼が来るらしい。
“ねこがいなくなっちゃったの。さがしてください”
“任せて!”
“庭の木を切りたいんだけどね。私、もう年だから、難しくて”
“おれがやりますよ”
“彼は、いい人なんです。でも、たまに凄く怖くて……殴るんです……”
“DVですね。いい人である時が本質じゃないと思います。しかるべきところに繋ぎますよ”
“死にたいけど、自分では怖くて出来ません。死なせてください”
“本当に死にたいんですか? 本当は、解決したいんじゃないですか?”
ただ、真っ直ぐに進んでいく翼が、眩しい。
妻子に逃げられた家庭内暴力男が依頼してきたから、警察に突き出したこともある。捜してた人の死体と対面したこともある。
たくさんの人生に関わって、しんどいこともあるのに、翼は折れない。
高く飛び続ける翼の、止まり木になるように。この家はある。
「翼、疲れた時は、無理せんで家に来るんやで」
「俺たちは、ずっと味方だ」
「ありがとう」
きっと、多くの人が、困った時に“網代翼”の名前を思い出すようになるんやろな。
「司も靖及も、困った時には、いつでもおれを呼んでくれよな!」
◆◆◆
翼が帰った後、俺たちは、並んでソファーに座って話す。
「翼は、立派に育ったなぁ。とっくの昔に、親なんて超えてるやんなぁ」
「そうだな。翼は、夢を叶えた」
「そうやな。翼の考えるヒーローって、ああいう生き方のことなんやろな」
照り付ける日射しや、降り止まない雨の傘になったり、吹き荒れる風の盾になったり。
翼の両翼は、強くて、優しい。夜明けが来るまで、隣に立つ人間になった。
全身全霊を賭けて、真摯に“解決”への手助けをしてくれる。誰かの手を掴む。背中を押す。そういうヒーロー。
「まだまだ、先は長そうやな」
それでも。
「俺たちふたりは、翼を見守り続けよう」
「もちろんや」
幸せの青い鳥を逃がさない、どころやない。翼自身が、青い鳥みたいや。
きっと、いつまでもヒーローでいられる。翼は、木漏れ日を届けられる存在でいられる。
その翼を守るのが、俺と靖及さんの役目なんや。
この世界を、3人で、心のままに楽しんでいくで。
仕事は、順調みたいや。なんや、いつも走り回っとる。
インターホンが鳴った。
ドアを開けると、翼がいる。俺より背が高くなってから、随分経つなぁ。靖及さんよりは、高くならへんかったけど。
「司! 靖及! ただいま!」
「お帰りやで」
「お帰り、翼」
家族で席について、茶をしばきながら、歓談する。
「ふたりとも、元気?」
「元気や」
「ああ」
「おれも元気!」
翼のとこには、色んな依頼が来るらしい。
“ねこがいなくなっちゃったの。さがしてください”
“任せて!”
“庭の木を切りたいんだけどね。私、もう年だから、難しくて”
“おれがやりますよ”
“彼は、いい人なんです。でも、たまに凄く怖くて……殴るんです……”
“DVですね。いい人である時が本質じゃないと思います。しかるべきところに繋ぎますよ”
“死にたいけど、自分では怖くて出来ません。死なせてください”
“本当に死にたいんですか? 本当は、解決したいんじゃないですか?”
ただ、真っ直ぐに進んでいく翼が、眩しい。
妻子に逃げられた家庭内暴力男が依頼してきたから、警察に突き出したこともある。捜してた人の死体と対面したこともある。
たくさんの人生に関わって、しんどいこともあるのに、翼は折れない。
高く飛び続ける翼の、止まり木になるように。この家はある。
「翼、疲れた時は、無理せんで家に来るんやで」
「俺たちは、ずっと味方だ」
「ありがとう」
きっと、多くの人が、困った時に“網代翼”の名前を思い出すようになるんやろな。
「司も靖及も、困った時には、いつでもおれを呼んでくれよな!」
◆◆◆
翼が帰った後、俺たちは、並んでソファーに座って話す。
「翼は、立派に育ったなぁ。とっくの昔に、親なんて超えてるやんなぁ」
「そうだな。翼は、夢を叶えた」
「そうやな。翼の考えるヒーローって、ああいう生き方のことなんやろな」
照り付ける日射しや、降り止まない雨の傘になったり、吹き荒れる風の盾になったり。
翼の両翼は、強くて、優しい。夜明けが来るまで、隣に立つ人間になった。
全身全霊を賭けて、真摯に“解決”への手助けをしてくれる。誰かの手を掴む。背中を押す。そういうヒーロー。
「まだまだ、先は長そうやな」
それでも。
「俺たちふたりは、翼を見守り続けよう」
「もちろんや」
幸せの青い鳥を逃がさない、どころやない。翼自身が、青い鳥みたいや。
きっと、いつまでもヒーローでいられる。翼は、木漏れ日を届けられる存在でいられる。
その翼を守るのが、俺と靖及さんの役目なんや。
この世界を、3人で、心のままに楽しんでいくで。