創作企画「冥冥の澱」2
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専門学校を卒業した後、おれは開業した。
事務所は、祖父が成人祝いの時にくれた土地に立てた、駅の近くのいい場所にある。
おれは、ひとりで事務作業もやったし、事務所のホームページも作った。あとは、依頼者が来れば、それで大丈夫。
もちろん、澱み討伐もしている。今のところ、大きな怪我もなく、失敗もしていない。
コーヒーを淹れて飲んでいると、事務所の電話が鳴った。
「はい、網代便利軒です」
『息子が行方不明なんですけど、まだ、その、2日なんですが……警察には、行けなくて……』
「なるほど。何故、警察には行けないんですか?」
『その、息子は、何か薬物をやっていて、違法かもしれなくて……』
「分かりました。事務所に来れますか? 来れないようなら、ホームページから、依頼者用のウェブ書面が送れますので、ご記入ください。あなたのお名前は?」
『斎藤です……はい……! そちらへ向かいます』
「息子さんが使用した薬物があれば、写真を撮ってください。お待ちしてます、斎藤さん」
電話が切れた後、しばし考える。
薬物。違法ドラッグか、危険ドラッグか。確実に、ヤクザ絡みであろうヘロインか。比較的安易に手に入る大麻・MDMAか。全く話が違ってくる。
一時間ほどして。斎藤さんがやって来た。おれが若いことに、少し不安を覚えた様子だったが、藁にもすがる思いで、詳しい話をしてくれる。
母親である斎藤さんが心配している息子は、17歳で、“悪い先輩”と付き合うようになってしまったこと。母子家庭で、親戚は遠方にしかおらず、息子の将来のために、学校も警察も頼れないこと。色々と話を聞いた。
「まず、伝えなくてはならないことがあります。息子さんが依存症になっているのなら、しかるべきところに行かなくてはなりません。隠すのは無理です」
「それじゃ困ります!」
「あくまで“先輩”が悪くて、息子さんは被害者、という可能性はありますが。薬物を使用してしまったことが事実なら、リハビリ施設の利用も視野に入れなくてはなりません」
彼が使用したのは、MDMA。一見、可愛いキャラもののラムネ菓子のようだ。相場は、一錠4000~5000円。身体依存はないが、精神依存はあるかもしれない。不純物が多く、最悪死に至る。アッパー系のドラッグなので、誰かを傷付ける恐れもある。
「おれに出来ることは、息子さんを見付けて、保護し、“先輩”たちを警察に突き出すことです。その際、息子さんも罪に問われるかもしれません」
「そんな…………」
「しかし、“先輩”に薬物の使用を強要されたのなら、故意でないと主張してください。また、薬物を使わなければ殺す、などの脅迫を受けていた場合は、“緊急避難”として罪に問われないこともあります」
「分かりました……息子を、捜してください……」
斎藤さんは、泣きながら言った。
「ご依頼、承りました」
◆◆◆
おれは、“先輩”をひとりひとり洗い出し、家を訪ねた。そして。
「斎藤くん、いる?」
「斎藤のダチ?」
「まあね」
「中にいるけど。お前、なに?」
「便利屋」
「は?」
「邪魔するよ」
無理矢理、家の中に入る。
「おい! なんだよ、お前!」
斎藤くんは、リビングの床に倒れていた。意識はない。おれは、スマホで救急車を呼ぶ。死体で見付からなくて、よかった。
「勝手なことしてんじゃねぇ!」
殴りかかってきた男の拳を掴み、捻る。
「斎藤くんは、望んで薬をやったのかな?」
「痛てぇ! 放せ!」
「質問に答えて」
「そうだよ!」
「本当に?」
「最初、は、お菓子だって、騙した……」
「そう」
パッと、手を放す。
まあ、少しはマシかな。あとは、斎藤くん次第だ。さあ、次は、あんたの番だよ。
事務所は、祖父が成人祝いの時にくれた土地に立てた、駅の近くのいい場所にある。
おれは、ひとりで事務作業もやったし、事務所のホームページも作った。あとは、依頼者が来れば、それで大丈夫。
もちろん、澱み討伐もしている。今のところ、大きな怪我もなく、失敗もしていない。
コーヒーを淹れて飲んでいると、事務所の電話が鳴った。
「はい、網代便利軒です」
『息子が行方不明なんですけど、まだ、その、2日なんですが……警察には、行けなくて……』
「なるほど。何故、警察には行けないんですか?」
『その、息子は、何か薬物をやっていて、違法かもしれなくて……』
「分かりました。事務所に来れますか? 来れないようなら、ホームページから、依頼者用のウェブ書面が送れますので、ご記入ください。あなたのお名前は?」
『斎藤です……はい……! そちらへ向かいます』
「息子さんが使用した薬物があれば、写真を撮ってください。お待ちしてます、斎藤さん」
電話が切れた後、しばし考える。
薬物。違法ドラッグか、危険ドラッグか。確実に、ヤクザ絡みであろうヘロインか。比較的安易に手に入る大麻・MDMAか。全く話が違ってくる。
一時間ほどして。斎藤さんがやって来た。おれが若いことに、少し不安を覚えた様子だったが、藁にもすがる思いで、詳しい話をしてくれる。
母親である斎藤さんが心配している息子は、17歳で、“悪い先輩”と付き合うようになってしまったこと。母子家庭で、親戚は遠方にしかおらず、息子の将来のために、学校も警察も頼れないこと。色々と話を聞いた。
「まず、伝えなくてはならないことがあります。息子さんが依存症になっているのなら、しかるべきところに行かなくてはなりません。隠すのは無理です」
「それじゃ困ります!」
「あくまで“先輩”が悪くて、息子さんは被害者、という可能性はありますが。薬物を使用してしまったことが事実なら、リハビリ施設の利用も視野に入れなくてはなりません」
彼が使用したのは、MDMA。一見、可愛いキャラもののラムネ菓子のようだ。相場は、一錠4000~5000円。身体依存はないが、精神依存はあるかもしれない。不純物が多く、最悪死に至る。アッパー系のドラッグなので、誰かを傷付ける恐れもある。
「おれに出来ることは、息子さんを見付けて、保護し、“先輩”たちを警察に突き出すことです。その際、息子さんも罪に問われるかもしれません」
「そんな…………」
「しかし、“先輩”に薬物の使用を強要されたのなら、故意でないと主張してください。また、薬物を使わなければ殺す、などの脅迫を受けていた場合は、“緊急避難”として罪に問われないこともあります」
「分かりました……息子を、捜してください……」
斎藤さんは、泣きながら言った。
「ご依頼、承りました」
◆◆◆
おれは、“先輩”をひとりひとり洗い出し、家を訪ねた。そして。
「斎藤くん、いる?」
「斎藤のダチ?」
「まあね」
「中にいるけど。お前、なに?」
「便利屋」
「は?」
「邪魔するよ」
無理矢理、家の中に入る。
「おい! なんだよ、お前!」
斎藤くんは、リビングの床に倒れていた。意識はない。おれは、スマホで救急車を呼ぶ。死体で見付からなくて、よかった。
「勝手なことしてんじゃねぇ!」
殴りかかってきた男の拳を掴み、捻る。
「斎藤くんは、望んで薬をやったのかな?」
「痛てぇ! 放せ!」
「質問に答えて」
「そうだよ!」
「本当に?」
「最初、は、お菓子だって、騙した……」
「そう」
パッと、手を放す。
まあ、少しはマシかな。あとは、斎藤くん次第だ。さあ、次は、あんたの番だよ。